157話 飾るもの
「結構栄えてるんだな」
「そうね、私も昨日見た時はびっくりしたわ」
こっちに来て1番栄えていると言っても過言では無いと思えるほどに綺麗で立派な街並みをしている。まぁそれでもうちの国の方が上だけどね! まぁそういうことはあえて言わずに。
「何あれ!」
元気よくそう言って出店に走っていフィーそれを追いかけてシャルも出店の方へと走って行ってしまった。
「あっ! 全く少し目を離すとこれなんだから! ちょっとここで待っててノーチェ!」
返事をする間もなくエレナは2人を追って居なくなってしまった。
「1人になっちゃった」
まぁここに居てって言われたし大人しくここで3人が帰ってくるのを待つことにするか。
適当な柱に体重を掛けて3人のことを待っていると体の右側に何かがぶつかったような衝撃を覚えた。
「ん?」
「わっ!」
ぶつかってきたのは小さな女の子でその腕の中にはたくさんの可愛い人形が抱きかかえられていた。
「あっごめんね」
俺は弾けてしまった人形を拾い上げ女の子に差し出す。女の子は勢いよく頭を下げて人形を受け取り走ってその場から居なくなってしまった。
「なんだろうあの子」
あんなにたくさんの人形を持ってどこに行くのか、どうしてあんなに慌てているのか、色々気になることはあったがこれで追ってしまえばみんなから離れちゃうしそっちの方が面倒なので今は待機しとこう。
「おまたせ〜」
ちょうど来たみたいだし。
「見てみてノーチェ!」
シャルが綺麗なアクセサリーを片手に俺に走ってくる。奥のふたりはお会計をしているようだ。
そうそのせいで気付かなかったのだ、2人はお会計をしていたから、俺は人混みでちょうど死角になっていたから。シャルは綺麗なアクセサリーを俺に見せる為慌てていたから。
「きゃっ」
「あぁ!? おいてめぇ一体何してくれてんだ」
ぶつかったのか……いやあの顔狙ってたな、そして後ろにいるヒョロいのもグルか。
「あ〜あ〜こりゃ慰謝料貰わねぇとなぁ」
異変に気付いた2人がシャルに駆け寄ろうとするが俺は手で止まるように指示した。
こういう輩は何言っても仕方ないからな。
俺は空気を察してその場から急いで逃げようとしている男が咥えているタバコを人の目では追えない速度で盗み指で弾いた。
パチッ! と当たり屋の額でタバコが跳ねる。その瞬間大きな体躯を反らせながら「うぅ!」と悲鳴をあげて当たり屋がタバコのカスが入らないように目を塞いだ。目を閉じた一瞬の隙を見逃さず当たり屋とシャルの間に入り込み反らせている体の腹部に手を置き、力を入れてバランスを崩してやる。後ろにいたヒョロがりは脂の乗ったデブが覆いかぶさったことで身動きが取れなくなっていた。この間わずか1秒か2秒である。
あとはシャルを抱えてこの場から離れるだけだ。
「捕まってろよ」
俺はシャルをお姫様抱っこしてその場から一瞬で離脱した。
「ふぅ……ギリギリ目で追えてたから良かったけど普通の人なら見失ってるからねあれ」
裏路地で騒ぎの行く末を見ていると後ろからエレナが声をかけてきた。まぁいなくなる瞬間目があったのは確認していたので問題ないと思ってたけど結構ギリギリだったみたい。
「ごめんごめん、それよりも……」
シャルの買ったアクセサリーはぶつかった衝撃で壊れちゃった。まぁ錬成で直してもいいんだけどそれは果たしてシャルが欲しかったアクセサリーと同じってことになるのだろうか?
「……ノーチェに渡そうと思ったの」
「……え?」
「すごく綺麗な白色でね、ノーチェの髪と合うかなって思ったんだ」
シャルが握ってるものをよく見てみるとアクセサリーではなく髪飾りだった。そうか……これを俺に。
「……そうかぁ〜ありがとう」
粉々になった髪飾りをシャルの手から優しく取り上げ、それを両手で隠す。
「ノーチェ?」
「ほら、こんなに綺麗な髪飾り初めて見たよ」
元通り……では無いと思う、遠目から見たのを何となくで直してるから。でもシャルがせっかく俺の為に買ってくれたものを壊れたから捨てるっていうのはしたくないんだ。
「……ふふ、こんな形じゃなかったよ」
泣きそうだったシャルも笑みを浮かべて違うところを指摘してくる。
ハプニングはあったもののその後は街をゆっくりと周り楽しい時間を過ごすことが出来た。ちなみに髪飾りはシャルの助言もあって限りなく最初の形に近付けることが出来たらしい。まぁけどシャル曰く
「一緒に作れたからこっちの方が嬉しいかな」
だそうです。すっかり大人になって成長が嬉しい限りだよ。
と良い雰囲気でパーティーに行こうと思っていたんですよ。
「いやほんと、いい雰囲気だったよ」
「何〜? 今だって別に悪い雰囲気では無いでしょ?」
「忘れてたよ、パーティーの衣装もエレナが決めていたことを」
着たくなかった……これは嫌だったのに。
「似合ってるわよそのドレス」
「うぅ」
確かにフリフリとかじゃないし結構お淑やかな感じのドレス。それに上着も羽織ってるからそこまでドレス感ないけど……ドレスなんだよなぁ。まずスカートの時点で抵抗あるのにこの肩に食い込む紐の感じとかすごく違和感。上着なかったら恥ずかしくてみんなの前に立てない。
「てか今回は真っ黒だねみんな」
馬車から出る時は全体的に明るい色だったが今回の服は暗い感じだ。シャルは赤と黒のドレス、フィーは全く同じ服だけど色が緑と紺だ。エレナは少し胸が強調された……てかそれキツくないのかなって思うくらい強調された真っ黒のドレスを着ている。もちろん俺も黒いドレスに上着です。
「はぁ……真っ白の髪のせいで黒が映えない」
「いやいや、むしろものすごくいい感じよ」
お世辞かどうかはわからないけどそう言って貰えると助かるよ。
「というかノーチェは男物の服を着すぎ、もう少し女物にも慣れないと」
……確かにエレナの言う通り、俺の部屋着や普段着は男物っぽいのが多い。てかまずスカートなんて履かないしワンピースとかも着ない。いつもの格好はフード付きのパーカーに長ズボンだ。小学生でフードに目覚めたガキみたいな格好だけど顔を隠すのにも使えるし何かと便利なのだ。だからまぁ……女物に慣れる必要はない! 多分きっと問題ない!
「あっ」
顔を隠すで思い出した。フィデース信栄帝国から客が来てるって時点で魔王が来てるってバレてるだろうけど念の為に……リーベさんから貰った仮面を付けてと。
「これで準備できた」
「全く意味ないと思うけどそれ」
それに関しては俺も同意見、でもまぁ見られる恥ずかしさは減るしこっちの方が魔王感あって良くない?
「ノーチェが何となくくだらないこと考えてるのはよくわかったわ」
「あははは」
さすがはエレナ長い付き合いだし俺のこともよくわかってる。
「それじゃあ会場へ向かおうか」
俺はそう言って机に置いてある刀を腰に着け上着の内側に隠してある拳銃を一瞬手で触り確認した。
「行くぞ〜」
「はーい」
「走らないの〜」
クイックとバールは俺達よりも少しだけ早く行っている。何か話すことでもあるのだろうか?
俺はそんな疑問を抱えながら静まり返った王城の廊下を歩きにくいドレス姿でゆっくりと進んで行った。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】
天月姫Lv2
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv9、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8
《スキル》
導く者、貪慾王、高慢王、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv6、火流魔法Lv1、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv8、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv1、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者
ケルロス・ミルキーウェイ
星帝白狼Lv2
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv3、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv3、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄、研究部屋、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv6、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
強欲、嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥帝土竜Lv2
《耐性》
物理攻撃無効Lv5、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv5、魔法攻撃無効Lv5
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食