152話 空席
「……」
「早いな」
居るのはゼロとハクゼツか、てかゼロが居なかったことはないな……。なんで1番不愉快な奴が毎回居るんだろうか。
「そう殺気を放つなよ」
「ちっ」
こいつとは全く反りが合わない。というか得体の知れない感じが気持ち悪い。それに……。
「……」
と色々考えているうちにレリアがいつの間にか席に着いていた。
「相変わらず静かだな」
ハクゼツも少し驚いたのかレリアを見て感心している様子だ。
「おっは〜!」
「今夜だけど」
「さっき起きたから僕からしたら朝なんだよ」
龍ってのは生きる上でも自由極めてんだなぁ。
「レリアとハクゼツもおはよ〜!」
「あぁ」
「……」
「ノーチェもおはよ〜」
セナがニコニコしながら握手を求めてきた。まぁ断る理由も無いので軽く握手を交わしてあげた。
「おぉ〜! やっぱりノーチェは優しいんだね!!」
爽やかに微笑んたセナはそのまま走って自分の席に向かっていった。
「全員集まったし……今回の要件を話そう」
ゼロがそういうと全員の前に机が現れた。
机出てきただけでなんにも変化ないっすけど。ってツッコミは胸の中に閉まっといて。ゼロが話し出すのを待とうか。
「時間をかけるのは面倒だから単刀直入に言おう、新しい愛す者を決めた。今日はそいつを連れてきてるので」
「多数決だなぁ〜!」
「まぁ……そうなるな」
俺の時と同じ……ではないか、俺の時は何人か来てなかったもんな。
「それじゃあ入ってきてもらおうか」
ゼロがそう言うとちょうどリーベさんの席の後方から妖精が現れた。
ルルよりも小さいな。性別は女っぽいけど……セナの件があるから見た目で判断するのは早すぎるか。
「妖精! ハレン・バーバット! 世界を愛す者として参上!」
……これまたキャラ濃いの来たなぁ〜。
「少し癖はあるが強さは保証する」
癖があるのは認めてるのかい。
てかこの状態で多数決取られてもこの子がなんなのかどんな力を持ってるのか、性格すら知らないっての。
「ゼロの提案を疑う訳では無いがノーチェの時以上に情報が少ないな」
ナイス! さすがハクゼツぶっ飛んでる他の魔王とは違うわ
「確かにな、まぁその辺は今親睦を深めてくれるといい」
ゼロにしては随分と甘い物言いだ、大体魔王は仲良しクラブじゃないんだろ? 親睦を深めろなんて言い方も引っかかる。
「そう睨むなよノーチェ、まぁ親睦を深めろってのはものの喩えだ。別に仲良くする必要性はない。ただ相手を知るのに話し合いでもどうだ? ってことだよ」
ご丁寧にどうも。
「逆に聞くがどこまで説明してるんだ」
俺から質問が飛んでくるのは想定外だったのか一瞬ゼロが驚いた様子を見せたが直ぐに返事を返した。
「何も言ってない、リーベに連れてこられた最初のお前と全く同じ状態だ」
てことは管理者の説明もなしか。
「ハレンはどんな世界が好きなんだ?」
またセナが面白がって遊びに言ったな。
「どんな世界? うーんひたすらに楽しい世界!」
妖精らしい世界っちゃ世界だな。
「あとは辛いことも悲しいことも怖いこともない幸せしかない世界かな!」
前言撤回、こいつも大きめの闇抱えた子だわ。
「まぁゼロが認めたなら俺はそれでいい」
「……」
こいつら2人はそれしか言えんのか。
「まぁ僕もいいかなぁ」
ニコニコしながらこっち見んなゼロ。
「好きにしろ」
「じゃあ愛す者はハレン・バーバットに決定だ」
今反対したところでマイナスイメージを植え付けるだけだし周りのみんなが大丈夫ってんなら大丈夫なんだろう、知らんけど。それに何かあればゼロにしっかり責任を取ってもらうか。
「それじゃあ解散……といきたいんだけど」
ゼロと視線が合う、直感的に感じたが少しだけ怒っているようだ。
「最近管理者としての自覚が薄い行動をしている奴がいる」
あ〜……これは釘刺されてますね。いやはや管理者としての自覚〜とか言われても何するのかもよくわかってないし何をしちゃいけない〜とかも知らないしどうしようもないよね。
「しっかり自覚を持って動いてくれ、以上解散」
終わり方は適当なのね……。
面倒な会議が終わりとっととその場から消えようとした時ゼロが手で少し残るように合図した。
俺は面倒だなと思いつつ釘も刺されたばっかりなんで大人しく全員が居なくなるのを待つことにした。
「で? 何の用だ?」
このくらい威圧にもならないだろうがリーベさんの件があるしな下手に出るのは俺のプライドとか諸々が許せない。
「随分と好き勝手やってるな」
ゼロの言葉がそのまま威圧となって俺の脳へ直接的な恐怖を植え付ける。しかし俺も魔王だ、この程度で怯んでいられる椅子に座っている自覚は無い。
「魔王になった時やっていいこと、やったらダメなことをいちいち聞いた覚えは無いからな」
「なんの力もなかった蛇が言うようになったな」
「その蛇に力と地位を与えたのはお前だよ」
ピリピリとした空気が俺達の間に漂う。
「まぁ……明確に何がダメだったかを教えてくれれば対処のしようもある問題があるなら教えてくれ」
このまま睨み合ってても埒が明かないとりあえずゼロの言い分だけでも聞いといてやるか。
「……まぁ早い話六王と関わりすぎだ」
「それは公に関わりすぎってことか?」
俺の一言に一瞬だが反応したな。ゼロも六王の誰かと関わりはあるはずだ。関わり自体がダメなら管理者としてのという点でゼロもアウトになってしまう。
「その辺は好きに解釈しろ」
やはりな、それに俺は魔王になる前から六王と関わりあったしそんな奴を魔王に入れる時点で管理者として六王に関わってはいけないなんてルールは存在しないはずだからな。
「あとひとつ気になってたんだが……管理者ってのはまずなんだ? なってみて思ったが特別なことをしている様子もないし俺もしてないからな」
「……まぁお前になら言ってもいいだろう」
そう言うとゼロが立ち上がり俺の正面に立った。
「……」
何故立ったんだろうか? 首痛いからさっさと座って欲しいのだが。
「管理者に意味は無い」
「は?」
「管理者に意味は無い、管理者だからこれをするあれをすると言った規定は無い」
どうしようすげえ真剣な感じだからとんでもない秘密とか出てくると思ったのになんもなかったんだけど。
「じゃあこの六魔王ってのはなんの意味があんだよ」
「……管理者が散らばるのがまずいんだ」
「?」
何言ってんだお前ってツッコミたくなるのを抑えてゼロの話を黙って聞く。
「管理者は七獄スキルと違い世界で六人しかその称号を持てない」
確かに同じ七獄スキルを持っているやつは知ってるけど管理者の称号を持ってるやつは六魔王以外は誰も知らないな。
「俺がやっているのは管理者を持っている奴らを目の届く距離に置くだけだ、まぁ管理者を会得するような奴は基本化け物ばかりだから世界平和の為になってると言えばなってるがな」
「管理者を放っておくとどうなるんだ?」
「手が付けられなくなる以外はなんとも」
未知数か……ゼロも分からないってことは何かあったのは知ってるけどその場にはいなかったってことか。
「まぁいいさ、あんたにも立場があるんだろ……公に六王と関わるのは考えてやる。だがまぁそうだな、リーベさんの時にあったことを許したわけじゃないからな」
言いたかったことは言った、それにもうここにいる必要も無い。
「帰るぞ2人とも」
「ん」
「わかった」
2人の手を握り急いでは無いけどとっとと帰りたかったので早めに転移を開始した。
「お疲れ様2人とも」
「俺達はただ立ってただけだよ」
「お疲れ様はノーチェだね」
確かに……今回は少しだけ疲れた。
その後はケルロスの作ったご飯を3人でゆっくりと食べて忙しく面倒な1日に幕を閉じた。