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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
耽溺編
148/261

147話 ノーチェ

何かが変わった。こいつの中で何か大きな変化が起きた。今はこの場から離れるのが懸命だ、そろそろ他の仲間も敵を倒して合流する頃だと。

「ノーチェ様(主様)(お嬢)!!」

「統一感は出して!」

「すみません、ですがほら」

ボトッ……ボトボト。

「任務はしっかり済ませたので」

なっ!?

「お、お前ら! どうやって!!」

俺が聞くと龍人が呆れた様子で返事をした。

「どうやっても何もこれだけですけど、ただ首を切って殺した。それ以上もそれ以下もありません」

ま、まずい。もし仮に俺がこいつに勝てたとしてもここから逃げ切れる可能性は低い。魔王単体ならまだしも俺が選んだ仲間を殺すようなやつが3人もいるのに……。

「なんか色々考えてる様子だねぇ」

ッ!!??

「お前いつの間に!?」

さっきまで下にいた魔王が俺の背後に!?

「まぁわかるよ、考えてること。どうやってここから逃げるか考えてるんでしょ?」

「……。」

「じゃあそうだな、シャルのことを倒せたら俺達は君を見逃してあげるよ」

「え……?」

俺は思ってもない最高の条件を聞き驚きの声をあげた。

「本当だよ。もしシャルに勝てたら俺達は絶対に手を出さない。」

魔王の言うことを聞くのは尺だけどここで俺が負ければ世界を正すことができなくなってしまう。

「乗ってやるぜその提案!」

そしてこいつを倒していつかお前をも倒してやる!

俺は意志を固め右手に魔力を込める。

大技で一気に決める。この魔法は龍ですら一撃で消し去る雷魔法だ! これでお前のことを骨も残らないほど――

ブシュッ!

「へ?」

何が起こっ……。

ボトッ



「ありがとう、あなたのおかげで私はもっと強くなれた」



ピピッ

「ん、ルリアの森も片付いたっぽいな」

戦いも終わりシャルに声を掛けようと振り向いた時

「これでは役に立たなかったか」

ッ!?

「シャル逃げろ!!」

俺の叫び声と同時にいきなり現れたクレアシオンはシャルの肩から腹へと斜めに刀を下ろしていった。

この距離じゃ間に合わない! 魔法発動にももう少し時間が!

バサッ!!

「はぁ……はぁ。ギリギリね」

斬られそうになったシャルを抱きかかえエレナが言った。

「よくやったエレナ」

クイックがエレナを褒めたのと同時にケルロスがクレアシオンに向かって全力の蹴りを入れた。

「あいつは誰だ!?」

あの姿で見たことは無いのか。

「久しぶりの戦闘とはいえ……こう簡単に攻撃を食らってしまうとは思わなかった」

土煙の中から余裕そうな態度でクレアシオンが現れる。

ガチャ! ガチャガチャガチャ!!

「動かないでください」

さすがはテグ手際がいいな。

そんなことを考えながら俺はクレアシオンの元へ近付いた。

「……何の用だ」

「この死体を回収しに来たのさ、ついでに現勇者を殺せればと思ったんだか……そう上手くいかないのが世界らしい」

いつの間に死体を回収しだんだ……さっきケルロスに蹴られて地面に落下した時か? でも近くには六将の3人が居たはずだぞ。

横目で六将がいた方を見るが死体だけがその場からなくなっている。どうやら3人も驚きを隠せない様子だ。

「悪いけどこのまますんなり返す訳には行かない」

刀に手を置き何時でも戦えるよう準備する、ケルロスとクイックは誰かわかってこそ居ないものの俺が戦闘態勢に入るとそれぞれの武器を取り出して俺の両隣で身構えてくれている。

「この兵力、そして個人の強さ。何よりもノーチェ・ミルキーウェイを相手にするのは少しだけ面倒だな……ここは1つ」

クレアシオンがニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべると懐からグロテスクな色をした結晶? を取り出した。

「お前を壊してから去るとしよう!」

空高くあげた結晶を地面に叩きつけると目が開けられない程の光が俺達を包み込んだ。

「なんだ!?」

「目潰しだよ! ノーチェ大丈夫!?」

「俺はいいからみんなを対比させ――ッ!?」

俺の意識はそこで途絶えてしまった。



「なんだったんだあの光は」

さっきの奴は……もう居ないか。

俺はまだ少し眩む目で当たりを確認する。

「クイック……大丈夫か?」

「大丈夫、それよりもノーチェは?」

「そこにいるよ」

ノーチェもさっきから動いてない、まだ目が痛むのだろうか? 他のみんなは被害がない自動人形達が確認してくれているし現状把握とフィー達に連絡しないと。

「とりあえず国に戻って情報をまとめよう」

「そうだね、ルル・メリルの異変も気になるし詳しく話を聞かないと」

……。

そろそろ動いても良いはずのノーチェがさっきからピクリとも動かない。クイックも違和感を感じたのかゆっくりとノーチェに近づいて行く。

「1度国に戻るよノーチェ」

クイックがそう言ってノーチェの肩を叩こうとした時だった。

「なっ!?」

シュッ!

ザザザッ!!

「危ねぇ」

ノーチェがいきなりクイックに向けて刀を振るった? まだ目が見えてないのか? いやそれにしては正確な太刀筋だった、こんな悪ふざけするようなやつじゃないし……何よりあの速度と威力、俺がクイックを引っ張ってなかったら今頃。

「ノー……チェ?」

クイックはあまりにもいきなりのことで頭が追いついてないみたいだな。

「ノーチェどうした? 何があった!?」

「……」

ダメだ……話せる状況じゃない。でもなんだ? 催眠? それとも操作か? いやしかし魔王であるノーチェを操れるなんて同じ魔王くらいだろ、六王の可能性もあるけど近くに敵の反応は無い。何よりあの結晶の光でこうなったならあれは魔王ですら洗脳させることができる代物なのかよ!?

バコンッ!!

「考える暇もくれねぇのか!」

仕方ない……こうなればテグとサクの所に解析を頼んで解除方法を見つけてもらうしかねぇ!

「クイック手伝え! ノーチェを抑えるのは俺1人じゃ無理だ!」

「えっ……あっ! わかった!」

さすがに判断が早いな。とはいえ俺とクイックでどれくらい持つか……エレナにも手伝って貰いたいがシャルを助ける時刀で切られてるのは気付いてる。あの怪我じゃ黒翼ならではの俊敏な動きは期待できない。六将に手伝って貰いたいってのもあるけどコンビネーションは鍛えてないからな……そのへんもしっかりやっとくんだった。

「でもこれなんで!!」

「わからない! 今テグに調べて貰ってるから今は何とか凌ぐしかない!」

……何してんだよノーチェ! 早く正気に戻れよ!



ここ……は?

ピチャ……ピチャ……ピチャ

暗い、でも少しだけ明るい。地面も床も見えないけど俺が行きたい場所はわかる。

ピチャ……ピチャ……ピチャ

歩く度に生暖かい何かが足裏にへばりつく、でもなんだろうか嫌な感じはしない。

ピチャ……ピチャ……ピチャ

あっ明るい場所だ……あそこが俺の行きたかった。

ピチャ、ピチャ、ピチャ、ピチャ

行きたかった……場所。

「そんな場所ないでしょ?」

「え?」

後ろから聞こえた声に驚き振り返るそして……俺は自分が歩いてきた所を見て絶句した。

「世界を導いた者」

「世界を裁いた者」

「世界を愛した者」

「世界を治した者」

「世界を憎んだ者」

「世界を……壊した者」

「全てあなたが作ったんでしょ?」

「……え?」

様々な声が入れ替わり入り交じり飛び惑い俺の頭を犯していく。

「世界を支える12柱?」

「所詮は夢物語でしょ?」

「世界を守る六神?」

「結局壊してしまったでしょ?」

「やめて……やめて」

何に対してやめて欲しいのか……そんなことも分からないまま俺は膝をおり座り込み頭を抱える。

「欲望と己の為に貴方を裏切った者達、それを粛清しようとした真の王達」

「でも負けちゃった、終わっちゃった、死んじゃった」

「違う……違う違う違う! 私が甘かったから! まだ平気だなんて思ってたから!」

俺が悪いんだ……俺が悪いんだ。

「負けちゃって……憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで憎んで」

もう……やめ――

「あなたは世界を壊す怪物に……成り果てた」

「あぁ……あぁ! ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

行き場のない感情が制御出来ずに溢れ出す、どこに行っても血の海しかない空間をひたすらに駆け巡る。何度転んでも何度ぶつかっても何かから逃げるようにひたすらに走り出す。

「地は腐り呪い落ち」

「雷は大地を裂き破裂し」

「水は毒を流し」

「炎は影を作り出し」

「風は病をばらまいて」

「木は全てを破壊した」

世界は今日も……美しい。

「世界は今日も醜いでしょ?」

「はぁ……はぁ……はぁ」

ズルッ!!

痛い、苦しい、辛い、泣きたい、叫びたい、全部無くしてしまいたい。

「また逃げるの? 世界をめちゃくちゃにして全部なかったことにして逃げたのに……また逃げるんだ?」

五月蝿い! 五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!

「もう失いたくない……もう悲しみたくない……もう憎みたくないんだ!!」



「はぁ……はぁ」

「まずいな」

魔法を使ってこないのがまだ救いだ。でも俺たちの攻撃は通じていない、というかノーチェを拘束する魔法なんてあっても俺達が使えるレベルのものじゃないだろう。

「……ケルロス、ノーチェの髪が」

「わかってる」

戦ってる途中から気付いていたが髪が白くなっていってる。そして瞳の色も片方だけだが赤く染まってる

「洗脳とかの類じゃないなこれは」

体の変化……そしてノーチェから溢れている知らない魔力あれはノーチェの見た目をした別の何かだ。

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