14話 龍の骨
中速移動で巣の中を駆け巡る、中は水浸しで蜘蛛も何匹か死んでいる。
ゆっくりはしていられない、母蜘蛛がいつ来てもおかしくない。
それにまだ生き残りがいる可能性も高い。
さっきから探索スキルを全力で使っているせいで魔法力の消費かやばい。
連戦もあってそろそろ切れる。
あと少しのはずなんだ。
しばらくすると少し開けた場所に出た。
ここは? ……卵が何個かある。子育て部屋みたいなものか?
それならケルロスは餌として生かされてる可能性が高いかも。
「ケルロス〜……ケルロス〜!」
血眼になってケルロスを探していると小さく声が聞こえた。
微かだが確かにノーチェと呼んでいる。
「ケルロス! どこだ! どこにいる!」
消え入りそうな声だが聞こえる。ここか? こっちか?
俺は死体が積み重なった気持ちの悪い塊をどかして探し回る。
死体を崩す度にグチャグチャと嫌な音がなり酷い臭いが鼻を襲う。
身体中がドロドロになり泣きたくなったその時、気持ち悪い死体の山から白いモコモコが見えた。
ケルロスだ間違いない!
俺は急いで周りの死体をどかして奥に見えたケルロスを噛んで引っ張り上げた。
「ケルロス!」
「ノー……チェ」
毒状態が付与されてるのか……。
幸いケルロスには毒耐性が付いてるおかげで死にはしなかったみたいだが。
「ノー」
「今はいいから静かに」
これ以上無理はさせられない。危険ではあるが土石魔法でさらに下に向かって掘り進めるしかない。開けた穴はすぐに塞ぎ下に掘り進めていけばどこに行ったかも分からないだろう。
早くケルロスを回復させなければ。
そう考えしばらく下に向かって掘り進めた。
ボコッ!
バコンッ!
「いってて」
下に降り進めていたは謎の空洞に辿り着いた。
落下した時ケルロスを特価の判断で上にしたけど大丈夫だよな。
そして俺は辺りを見渡した。
見た感じ綺麗な石が大量にあるな、魔物の気配は全くないから今のところ安全か。
「ありがたい……」
とりあえずはここで平気だろう。
俺は急いでケルロスに回復魔法をかけた。
ケルロスの体力はMAXまで回復したが毒が抜けていない。
解毒系の魔法は持ってないからな……どうする。
だいたい解毒魔法なんてどうやって会得するんだ、いやそれ以前にそんなもの存在するのか?
……馬鹿か俺! 今そんなこと考えてなんになる!
とにかくケルロスを治す方法を……。
「ノーチェ……」
「ケルロス! 大丈夫か?」
ケルロスは辛そうな様子で話しかける。
「ごめん……油断してて、後ろから」
「それはいい! 今は治す方法を」
「大丈夫……もう十分楽しかったから」
ケルロスは何かを悟ったように語り出した。
「ノーチェと会えてよかったよ」
「ケルロス! 諦めるな! 大丈夫だ絶対に何とかしてみせる」
おい! 謎の声なんでもいいから今すぐケルロスを助ける方法を教えろ!
ここまで来て! あんなに辛い思いをして! 死ぬ気で戦って! これで終わりはあんまりだろうが!
……。
分解スキルが使用可能です。
……分解スキル?
毒だけを分解できるって言いたいのか?
いや悩んでる暇は無い、これでダメなら……もう。
「分解!」
毒だけを分解するんだ……。
無駄に神経を使う……ケルロスの体内にある毒だけを分解する……他の臓器を傷付けられない。
分解のLvが低いからかすごい疲れる。
魔法力消費も半端ないあと30秒も使ってたら無くなる。
それまでに何とか全部……。
……
「はぁ」
俺は少し大きめのため息をついて……眠りについた。
……、……、……
何か……生暖かいものが俺の顔を触っている。
……ん? 触ってる? なんかザラザラした何かが顔を這い回っている。
俺は不思議に思い目を開けた。
「ノーチェ! ノーチェ!」
どうやらケルロスが俺の顔を舐めていたようだ。
「あっ! ノーチェ大丈夫か!?」
「あぁ……大丈夫少し意識が飛んでただけだよ」
ケルロスはすごく心配していたんだろういつも元気なしっぽが垂れて耳も畳んでいる。
それに何より顔が悲しさを物語っている。
「ノーチェ、僕が馬鹿したせいで」
そうか……ケルロスは自分のせいでこうなったと思ってるのか。
「大丈夫だよ、俺が助けたくて助けたんだから」
この言葉に嘘は無い、本当だ。
俺はケルロスと一緒にいるのが心地よくて楽しいから。
それを聞いたけケルロスは嬉しそうにしっぽを振っていた。
「まぁとりあえず移動しようか」
ここにいても食べ物はないし、正直お腹減った。
けどなぁ周りはなんか輝く石ばかり。
てかこの石はなんなんだ?
鑑定
魔結晶
魔封晶
魔源晶
魔真晶
魔動晶
……まぁ要するに魔法力の塊ってことか?
じゃあ何か? 意識を飛ばしてまで分解スキルを使うこともなかったってことか?
……キレそう。
「ノーチェ?」
「あぁなんでもないよ」
……けどこの鉱石たち使えるかも。
欲する者
欲する者がLv3になりました。
近場の鉱石全部渡してこの程度か。
まぁいいや移動しながら回収して食べ物探しだ。
もう3日? いつも薄暗くて時間感覚が無くなってる、とにかく結構な時間はたってるはずだ……なのに。
「……食べ物がまじでねぇ」
ここは一体なんなんだ?
鉱石は大量にあるが食い物が全くない。
正直蛇だからか腹は減るが死にそうな程じゃない。
問題があるとすれば
「ケルロス大丈夫か?」
「は、はい」
ケルロスに関しては限界がだいぶ近い。
飲み物は俺の水流魔法で何とかなってるが、食べるものだけはどうしようもない。
鉱石は回収してもしてもまだまだあるし、欲する者はLv8まで上がり、探索スキルもLv9になっている。
ついでにケルロスに使った分解スキルの影響か分解スキルもLv2になっている。
とメリットは多いものの。
まぁ正直今はLvよりも食べるものが欲しい、ケルロスがほんとに死んじまう。
そんなことを考えている時だった。
鉱石では無い違う光が見えたのだ。
「あれは……なんだ?」
明るい光が差し込んでいる。
「ケルロスあそこに何かあるかもしれない。
俺は希望をそれに託して限界が近そうなケルロスを背中に乗せて移動した。
「うっ」
鉱石で明るかったとはいえ洞窟の中、暗さになれていた目が急な光を受けて驚いている。
ここは……。
明るいのは上に白く光る鉱石が大量に埋められているからだったそしてその下には大きな湖がある。
しかし俺の目に映ったのはそんなものではなかった。
何より驚いたのはある生物の死骸だった。
骨だけとなった姿でも確かな神々しさを放っている。
「龍……」
異世界と言えばだが、最初に会う龍が骨になった龍とは思わなかった。
骨の状態でもわかる……あの蜘蛛なんて小さいと思えるほどに大きな翼、堂々とした体、そして強さを表すように鋭い顔をしている。
これが龍か……。
龍に魅了されていた俺はケルロスの声で現実に戻された。
「ノーチェ!」
「あっ! ごめん何?」
「ここは何?」
ケルロスは不思議そうに、けれど力なく聞いてきた。
「分からない、けどなんだか心地よい空気な気がする」
そうだ、ここの空気は澄んでいるのか分からないがとても体が軽くなった感じがする。
「ここで少し休もうか」
「そうだね……歩き続けても何も見つからないし」
限界が近いはずのケルロスもここで休むことに同意してくれた。
最悪ここにケルロスを置いて俺が食べ物を探しに行くのも手か。
「とりあえず水辺に行こうか」
ケルロスは静かに首を縦に振った。
水辺まで降りて気付いたがここには木も生えており、なんだか分からない果実もあった。
……いや怪しい。
見た目はりんご? 色は種類によってバラバラだ。
鑑定しても??? だったし。
状態異常無効Lv10持ってるし俺なら食べられるか?
いやけど即死系だと分からない。
それにあの龍も鑑定してみたが
----------------龍の死体
なんかやばそう。
まぁ死体って書いてあるしここで動くことは無いだろうけど。
とりあえずあの果実は……怖いなぁ、しかしここ以外で食べられるものが見つかるとも限らない……か。
「ノーチェ、その果実危ないやつですか?」
ケルロスが背中から声をかけてきた。
「あっいや……」
「大丈夫です。どうせ食べないと死んじゃいますし、ここで死んでもノーチェを怒ったりしません」
そういうとケルロスは背中から飛んで木に生えた果実を取っていった。
「ケルロス!」
俺はケルロスをキツめの口調で呼んだ。
「もう足手まといも嫌ですし、それに食べれたらラッキーじゃないですか」
ケルロスは俺の静止を聞かずに青っぽいリンゴを一齧りした。
よりによって青かよ……と思ったのは置いといて俺はケルロスのそばに向かった。
「ケルロス! いつも冷静なのに何してんだよ!」
俺はケルロスに近づき不安そうに覗き込んだ。
「……」
ケルロスは黙りこくっている。
「ケ、」
俺がそう声をかけようとした時
「これ美味しいですよ」
ケルロスが満面の笑みでそう伝えてきた。
……俺は安堵と不安、怒りなど様々な感情が混じってなんとも言えない反応をしていた。
結局俺も食べて鑑定を再度したところ、魔力の実と言われる食べ物で魔法力が一定数回復してお腹にもたまる食べ物ってことが判明した。
ケルロスにはしっぽで1発ビンタかましといた。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
ポイズンハイスネークLv6
耐性
物理攻撃耐性Lv4、精神異常耐性Lv1、状態異常無効Lv10
スキル
総合把握Lv2、錬金術(毒特化)Lv6、心理把握Lv1、鑑定Lv9、拘束Lv8、中型輸送Lv6、思考Lv3、集中Lv4、隠密Lv5、探索Lv9、回避Lv2、中速移動Lv5、探索阻害Lv4、悪食Lv2、分解Lv2、融合Lv1
魔法
回復魔法Lv7、幻影魔法Lv3、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv7、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv1、土石魔法Lv6、土流魔法Lv3、闇魔法Lv4
???
計算Lv3、欲する者Lv8、???
ケルロス・ミルキーウェイ
ホワイトドックLv5
耐性
痛覚耐性Lv3、毒耐性Lv5
スキル
隠蔽Lv5、分身Lv7、探索Lv4、鑑定Lv3、強化Lv1、咆哮Lv1、斬撃Lv1
魔法
風新魔法Lv2、光魔法Lv2