136話 呪いを司る鳥
「んっ? 何が起きて」
先程の光はなくなり辺りは静まり返っている。空も暗いまま。俺が光の中に放り込まれたのか?
まぁ色々気になることはあるけど……魔物召喚の方はどうなったのか、それが気になりまだ少しチカチカする目を擦って前方を見た。
「……? 黒炎をまとった鳥?」
しかもそこそこに大きいな。これは不死鳥的なやつなのでは? けど真っ黒な炎だしやっぱこっちの世界は少しズレてるのか。
「貴方が私の主ですね」
喋った! 声的には男の人っぽいな。
「はい、俺があなたを召喚したノーチェ・ミルキーウェイです」
まずは自己紹介から……召喚ってんだから敵対はしてこないと思うけど。
「……ふむふむそゆことねおk。じゃあっと」
さっきまでの威厳ある雰囲気がもう霧散したんですけど!
そんなことを考えていると黒い炎がひとつにまとまりその中から体格の良い男が出てきた。
「あっちの姿もいいが、こっちの姿も嫌いじゃない……ってな。まぁ俺は呪神 カーティオ・ノゼルだよろしくな」
なんかとんでもないの召喚してしまったのでは?
「それにしても」
カーティオは俺の周りをぐるぐると歩き持ち上げて降ろしてを少し繰り返し腕やら足やらをまじまじと観察して離れて行った。
「……お前いい女だな!」
「おい、意味合いによってはこの場で召喚解除するぞ」
俺は刀を引き抜きカーティオの首に切っ先を突きつけた。
「あ〜! 待て待て! 違う! そういう意味じゃない! いや確かに女としての魅力はあるけどな、そういうのじゃ!」
よし殺そう。
「タイムタイム! 俺も久しぶりに呼び出されてテンション上がってたんだよ! それなのに主に首切られて召喚解除とか笑えねぇから! 頼むよ!」
「はぁ」
なんなんだろうこいつ、召喚された側ってもっと忠誠とかそういうのあるんじゃないの? ってそんなこと考えても意味無いか、とりあえず刀はしまってやろう。
「悪かったよ……俺が言ったいい女ってのは強いとか意思とかの話でな、とにかく変な意味はないんだ誤解しないでくれ」
「……あ〜もう、わかったよわかったからこの魔物召喚って言うのに着いて教えてくれ」
こいつに聞くのはなんか癪だけど呼び出された側のことだ何かは知ってるだろ。
「……主さ、魔物召喚について知らずに俺の事呼んだのか?」
「えっ? まぁそうだな」
俺がそういうとカーティオは顔に手を当てて大きめのため息をついた。
「な、なんだよ……なんか不味いことでもあったかよ?」
威厳は持ちつつ質問するって難しいなぁ〜。
「魔物召喚ってのは魔力によって呼べる種類が決まるんだ」
あっ……説明してくれるのね。
「まず基本誰でも呼べる下級魔物と中級魔物、次に召喚術をある程度極めて呼ぶことの出来る上級魔物。まぁこの辺はただの一般人でも呼べるくらいだな……上級は頑張ればって条件付きだけど」
ふむふむ……。てかあんなにチャラチャラしてたのに割と真面目に教えてくれてる。根はいい奴なのかな?
「こっから上のランクは魔力が多いかどうかが結構肝心だ。黒魔級は魔法の扱いに長けていて魔力の多い奴、そうだなエルフとか妖精なら呼べるかな」
種族によって魔力の差はあると思っていたが、その通りなんだな。
「そしてその上に英魔級、ここからは龍人の魔力が特別多い奴が呼べる感じだ。次が獄魔級、ここまで来れば12……いや魔王とか六王レベルだな。」
ようやくか……てことはカーティオは獄魔級ってことに。
「……最後にもうひとつ、世界でたった5匹しかいない伝説レベルの魔物、それが神魔級だ。こいつを呼べば単体で1国を滅ぼすこともできる」
そんな化け物がいるのか……セナとかゼロが呼んでそうだな。
「なるほど、ありがとう。今日は勉強になったよ。それじゃあ俺寝るからおやすみ〜」
「ん? そうかおやすみ〜」
俺は実験場を後にして自宅のベッドに――
「待て待て待て!」
「なんだよさっきから」
転移しようとしたのに止められてしまった。
「いやお前は俺の」
「あっ! 寝るところが無いな! うーんまぁ人型なら俺が布団作ってやるから住む家に関してはまた今度考えるとして」
「あ〜、布団なそりゃありがたいわ。やっぱり睡眠は大切だからなって違う! いやそれも大事なのはそうだけど違う! そこじゃない!」
「あっそうか〜! 布団の硬さとか気にしてる? それなら何個か作ってやるから好きなやつにさ」
「まじ? そりゃ助かるわ。俺も布団にはうるさくてな〜こう柔らか過ぎると眠れないし硬すぎると体が痛くなって……いや違う! 布団の話じゃねぇよ!」
「え? もしかして一緒に寝ないと眠れないみたいな――」
「睡眠から離れろ! どんだけ眠いんだお前!」
カーティオは肩を揺らしながら息を整えて改めて俺に質問した。
「俺に関して気になることはないのか?」
「……あっ! その炎どれくらい熱い――」
「ランクを気にしろ! ランクを! 自分がどれくらい強い魔物召喚したか気になるだろって!!」
全身で語り掛けてくる……こいつ面白いやつだな。
「……そうだなランクを聞いてなかったな」
「ふふっ! 良くぞ聞いてくれた! 俺のランクはそう! あの伝説級である神魔級! 呪いを司る神だ!」
……。
「なんか陰湿」
「なんでだ!」
呪いを司るとかものすごく悪い奴じゃん。俺知ってるし呪い使う敵キャラ。
「けどまぁ、良い奴なんだろ? お前」
こいつがどんな奴でも俺は……カーティオを呼び出した責任がある。もし悪い奴ってんなら責任持って倒すだけだ。
「……」
反応しないカーティオに向けて拳を突き出す。俺はそれ以上何もしない。タッチしろとも言わないし信じろとも言わない。ただ拳を向けるだけ。
「お前……変わってるよ」
少しだけ笑ったカーティオは俺の拳に同じように拳を合わせてきた。
「契約とかがあるなら成立ってとこかな?」
「何言ってる、気に食わなかったら会った瞬間にその首筋に噛み付いてるよ」
「そりゃ無理だ、その前にお前の首が飛んでるからな」
「くっくく」
「ははっ、はははは」
俺達は拳を合わせたまま笑いだした。
「これからよろしくな、ノーチェ・ミルキーウェイ」
「俺の方こそ役に立てよ、カーティオ・ノゼル」
一瞬カーティオが嬉しそうな顔をした気がするけどそのタイミングで月が雲に隠れてしまい良く見えなかった。
「それはそうとお前どうするんだ? このままこの国に住むなら新しく家を」
「いや、その必要はない。まずお前の家に住むしスペースがないならできるまでお前の中で待機してる」
待機? どういうことだ?
俺が不思議そうな顔をしているとカーティオが呆れた様子で話し出した。
「本当になんも知らねぇんだな。まぁ説明するよりやった方が早いだろ」
そういうとカーティオは俺の手を握りしめた。
「な!? 何すんだよ!」
「おっ、割とうぶだな」
この野郎! 俺が勢いよくカーティオのことを殴ろうとするとカーティオは目の前から一瞬で消え去った。
「!? 転移か?」
(違う、お前の中に入ったんだ)
(こいつ直接脳内に……!)
(少し嬉しそうじゃねぇか)
「てかこれ気持ち悪いな……まさか俺の頭の中で考えてること分かるとかじゃねぇだろうな」
(……)
あっ分かるんですね、とりあえずはよ出てきて貰っていいすか?
(わかったよ)
「ほれ、これでいいだろ?」
「今どっから出てきた?」
一瞬過ぎて気付かなかった。
「あんたの中からだよ。まぁそういうもんだと割り切ってくれ。それとあんたの心の声は聞こえるようにすれば聞こえるし聞こえないようにすれば聞こえないから安心しろ。」
「常に聞こえないように頼むわ!」
「そりゃ無理だな」
俺が転生者ってバレると色々厄介なんだよなぁ。
頭を抱えて考えているとカーティオが真剣な顔で話し出した。
「あんたが転生者なのは中に入る前から知ってたよ」
「なっ!?」
なんでだ! 一体どうして……怪しい素振りは――
「そんなに考え込むな」
「痛っ!?」
こいつチョップしやがった! 女の子に暴力はダメなんだぞ〜! ってそんなことより。
「なんで転生者ってわかったんだよ」
「……勘」
……。
「え?」
「勘」
……やっぱりこいつ召喚したの間違いだったかも。
「お前この事」
「言わねぇよ、それに……転生者ってことは結構苦労したろ?」
カーティオが俺の頭を撫でて優しく言った。
「は!? いや別にそんなこと!」
「嘘つくなよ。いきなりなんも知らねぇ場所飛ばされて不安にならねぇ奴はいねぇんだよ」
……なんだよこいつムカつく。
「とにかく、俺に隠し事はなしだ。てか出来ねぇしな。」
「腹立つ!」
「ははっ! まぁこれからは俺がお前を守ってやるから安心しろよご主人様」
やっぱり舐めてるだろこいつ!
「ご主人様はやめろ!」
「じゃあ……そうだなぁ。ミルキーでいいか?」
どこの飴だ!
「却下」
「えー、じゃあミッ」
「やめろ! それはダメだ!」
俺はとんでもないことを口走りそうになったカーティオの口を無理やり塞いだ。
「むぐ!? むむ! うぅ!」
「次ふざけたらまじぶん殴るからな!」
釘を刺してカーティオを解放する。
「へいへい。そんじゃミッちゃんにするわ」
「もうノーチェでいいからそれに」
「じゃあ改めて、このカーティオ・ノゼルはミッちゃんに全てを捧げると誓うぜ」
真面目な儀式なのかふざけた儀式なのかはっきりしろや!
カーティオ・ノゼルが従魔となりました。
新たな称号を会得しました。
称号、呪いに愛された者を会得しました。
強欲が解放されました。
新スキル貪慾王を会得しました。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】
天帝月夜蟒蛇Lv9
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv8、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8
《スキル》
貪慾王、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv6、火流魔法Lv1、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv8、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv1、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者
ケルロス・ミルキーウェイ
赫々白狼Lv9
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv3、精神異常耐性Lv2、状態異常無効Lv1、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
信頼する者、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv4、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥紅土竜Lv9
《耐性》
物理攻撃無効Lv5、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv3、魔法攻撃無効Lv2
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食