134話 懐かしきダンジョン
プリオル連隊の銀月大隊は解散、牙獣大隊に入っていた銀月帝国の住民もほとんどが元の土地へ帰って行った。とはいえ数が多ければ変わり者も多いということらしくこのまま牙獣大隊に居るという者も少なくはなかった。プリオル連隊の人数が減ってしまうのは結構な痛手ではあるが……リーベさんの部下、そしてリーベさんを殺した俺に信頼と忠誠を寄せてくれたドルだからこそこの決断は間違っていないと胸を張って言える。
……どうでしょうリーベさん、貴方への恩は返せましたか?
とまぁ空を見ながら考えていると騒がしいファンが扉を壊す勢いで飛び込んできた。
「ノーチェ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うんうん、ノーチェ様だよ。だから扉はもっと静かに開こうね」
はい! と元気な声で返事をしたのはまぁ俺の予想通りトロリアットだった。
「で? どうしたのかな」
「あっ! そうでした! ノーチェ様がお困りとの事でしたので会いに来ました!」
会いに来たって……何を聞いて来たのかものすごく気になる。
「どうやら軍隊の人員不足に悩んでいらっしゃるそうで!」
「お断りします」
「……え?」
「お断りします」
トロリアットが不思議そうな顔をして首を傾げる。
いやいや、トロリアットの部隊って多分ダンジョンに住む怪物やら化け物やらのちょー恐ろしい奴らでしょ? もうそんなの魔王の軍団じゃん! だいたい今の時点ですら鋭い牙と爪を持つ人型、黒い翼を持つ鳥、黒い肌のエルフ、めちゃくちゃでかい鬼、自動で動く機械、1つ目で透明化するモンスター、これに蜘蛛とか吸血鬼とか投入したら異世界でよくある魔王軍の完成なんだわ! それこそ第2の勇者とか現れそうじゃん!
「ですがノーチェ様……もう既にフィー様の許可は取っておりまして」
フィー……。
「わかった、わかったからさ部隊に入れようとしてる子達を見せてくれるかな?」
それを聞いたトロリアットの顔がものすごく明るくなった。
あ〜……やな予感するわぁ。
「ようこそノーチェ様!」
ゼーレスクダンジョンが魔改造されてるんすけど。これちゃんとドワーフ達に許可取ったのか? いや流石にその辺はクイックが上手くやってるか。
「あと気になるのは」
例の王座が改造され魔王の城みたいになってるのは置いといてその周りにで立っている女性達……入った瞬間から気付いていたが全員強いな。一人一人が上級ダンジョン……いやここの元主は最上級ダンジョンだったからそのレベルの強さを持っている。トロリアットの強さも六将の中ではずば抜けてたしな。
「まぁいいや、それで? プリオル連隊に入れるのは何人なの?」
「全員です」
「えっ――」
「全員です」
ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
どうしようこの子バカになった2人と同じくらい暴走するんだけど。
「……ノーチェ様は私がお嫌いですか?」
「えっ?」
いつも……と言ってもまだあって数日だがそれでも今まで見た事ない様子で落ち込んでいる。
「いや! 嫌いな訳じゃ」
「なら……どうして頼って下さらないのですか? 私の軍は不満でしょうか? 私の仲間は頼りになりませんか? 私は……ご迷惑でしたか?」
……。
そこまで言うとトロリアットは顔を上げて無理やりな笑顔で話し出した。
「私はノーチェ様に命を救われました。ですから恩返しがしたいだけなのです。なのでもし存在が不愉快と言うならば私を殺してください……こんな私でもダンジョンで主をしています。殺せば経験値や新しいスキルが――」
俺はトロリアットのことを力を込めて抱きしめた。
「ノーチェ……様?」
「……俺は上に立つものとしてまだまだ未熟だ。こうやって新しく着いてきた仲間を傷付けてしまう」
「そんなことは!」
少し離れて首を横に振る。
「トロリアット・ヴァレンティア、君は俺の大切な仲間だ。それはこれまでも……これからも変わらない。……ありがとう、俺の為に力を貸してくれて」
「そのような……そのようなお言葉を……私は」
トロリアットが膝を折り涙を流す……それと同時に。
導く者が発動しました。
ゼーレスクダンジョン、タラレントダンジョンは導く者により管理されます。
ゼーレスクダンジョン管理者 トロリアット・ヴァレンティア
タラレントダンジョン管理者 シュティア・ティンガルのLvが上がりました。
トロリアット・ヴァレンティアが吸血姫から夜帝吸血姫へ進化しました。
シュティア・ティンガルがカオス・スパイダーから女羅蜘蛛へ進化しました。
タラレントダンジョンが中級ダンジョンから上級ダンジョンへ進化しました。
タラレントダンジョンが上級ダンジョンになったためゼーレスクダンジョンと合併可能です。
ダンジョン管理者となった為魔物召喚が2回可能です。
……。
ツッコミどころ満載すぎてもう何から捌けばいいのやら。
「ノーチェ様……これは?」
もう進化が終わったのか、どれどれトロリアットの変わった所は背が少し伸びて、羽の模様も変わったかな。あとは髪が黒から赤に変化してる。
「進化だね、原因は多分俺だ。どうやらタラレントとゼーレスクを統括するダンジョン管理者になっちゃったみたいだ」
やれやれと言った様子でトロリアットに話すとトロリアットは涙を流しながら俺に飛びついてきた。
「わっ!?」
え? なになに!? あっ……もしかして私のダンジョンなのにとかそういう……
「これで! 本当にノーチェ様の……本当の意味でノーチェ様の部下になれたのですね!」
「へっ?」
なっさけない声を出して驚いているとトロリアットが離れて楽しげなステップを踏みながら話し出した。
「私が管理するゼーレスクとタラレントの統括でしたら私の管理者、主ということ! あぁ……世界が私はノーチェ様の元に居ていいと認めてくださったということですね!」
あ〜……あれはダメだ、しばらくトリップさせとこう。
今気になるのはダンジョン合併と魔物召喚についてだ。まぁダンジョン合併はなんとなく分かる。タラレントがゼーレスクにくっつくってことだろうし。
じゃあ魔物召喚ってのはなんだ? 異世界でよくある魔獣とかそういうのが出てくる的な? 一時的なものかどうかも気になるしなぁ。まぁ2回あるって言うくらいだから1回使ってもいいんだけどさ。
「あっ……そうだ」
気になることが出来た俺はトリップ中のトロリアットに声を掛けた。
「さっきさ、タラレントを管理しているシュティア? って子が進化したって出たんだけどカオス・スパイダーってことは俺が倒した母蜘蛛と同じってことだよね」
口元から垂れているヨダレを拭いてトロリアットが答える。
「その通りです。あの子も進化しましたか……まぁ優秀な信者なので問題ないです」
俺母の仇だと思うんですけど。
「……そんなに気になるならとっとと合併しちゃいましょう! そうすればシュティアちゃんとも会えますよ!」
「えっ!? それはまだ早いんじゃ」
「合併!」
この子誰か止めてぇぇぇぇ!
ダンジョンがグラグラと揺れ始める。
「トロリアットは合併した事あるの?」
「え? ダンジョン合併なんて聞いたこともありませんよ!」
良く聞いたこともないことしようと思ったな!君あれだろ! 外食中に気になる名前の料理あったら後先考えず頼むタイプだろ!
そんなくだらないことを考えているとダンジョンが1度ドカンッ!と大きく揺れてその後は何事も無かったかのように動かなくなった。
「終わった?」
「そう……みたいですね」
はぁ〜、これどうやってドワーフ達に話そう。てかどうやってケルロスとクイックに伝えよう。
ダンジョン合併に関する言い訳とトロリアット進化に関しての言い訳を考えていると後方からカサカサと虫が歩いた時に出す特徴的な音が聞こえた。
「?」
俺はそれが気になって振り返ると高さ3mにはなるだろうかエーゼルよりも高い下半身蜘蛛、上半身女性のでかい奴が立っていた。
「あっ! シュティアちゃん!」
「どうもトロリアット様、そして私の新しい主……ノーチェ・ミルキーウェイ様」
シュティアは体を低くして俺の目線に高さを合わせて挨拶した。
普段ならわざわざありがとうとか、気が使える良い子だなぁって思うんだけど……そんなことより。
「服! 服着て服!!」
上半身裸はやめてぇぇぇぇぇ!!
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】
天帝月夜蟒蛇Lv9
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv8、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8
《スキル》
支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv6、火流魔法Lv1、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv8、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv1、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
ケルロス・ミルキーウェイ
赫々白狼Lv9
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv3、精神異常耐性Lv2、状態異常無効Lv1、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
信頼する者、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv4、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥紅土竜Lv9
《耐性》
物理攻撃無効Lv5、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv3、魔法攻撃無効Lv2
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食