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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
狂愛編
133/261

132話 荒らされた国

「ここが銀月帝国か?」

「はい!」

龍の背には初めて乗ったけどエレナと違って広いし落ちる心配少なくて割と安心感あったな。

「念の為確認だけど……ここであってる?」

俺は後ろにいるドルに質問した。

「はい、場所的には合っているのですが」

廃墟……下には50匹程の龍が何かをしている。奥の方ではダンジョンの物資を集めるため人の姿になった龍も確認できる。そして……。

「あの偉そうなのがお前の王か?」

「そうでございます! オレオン国184代目国王! コゼット・ナップバーン様です!」

原初の王と比べてだいぶ若いな。

「……それでだが、この国を廃墟に変えたのはお前達か?」

「そ、それは……」

龍が汗をかきながら下を向く。

「正直に答えろ、今ここで嘘をつけばお前の未来はないと思え」

その言葉を聞き龍の背筋がピクリ動いた。

「我々が……やりました」

「リーベ様の国が……」

ドルとヴェルはショックが大きいか。

俺は別の龍に乗っていたガスに声を掛けた。

「仕方ない、ガス! ドルとヴェルを少し離れた所で守っておけ!」

「はっ!」

さらに後ろでビクビクと怯えている龍に話しかける。

「お前はガス、ドル、ヴェルを国の外へ運ぶんだ! 3人の身に何かあればお前を焼いて食うからな!」

「ひぃぃぃ!」

怯える龍の背にドルとヴェルを抱えたガスが飛び乗ってそのまま遠くへ離れていった。

「私はどーするんすか〜?」

「フローリアは俺の護衛だ。何かあった時は頼むぞ」

チャラチャラとした返事を待っていた俺だがフローリアは何も言わずに黙っている。

「ん? どうしたフローリア」

「あっ! い、いえ! なんて言うかノーチェ様の護衛って響きがなんか良くて」

フローリアは顔を赤くしながら頭をかいて恥ずかしそうに目を逸らした。

あれ? なんか可愛いなおい!

フローリアの可愛さに癒されていると俺の乗っていた龍が降下を始めた。

「どうしたんだ?」

「す、すみません! 我々龍は上の者には逆らえない決まりがありまして……降りろという命令を」

……それが本当か嘘かは知らないけどまぁ降下地点はコゼットとか言うやつの所だしいっか。フローリアも一緒に降りてるしな。



バサッバサッ

「待ち伏せか」

「まぁ勝手に降りた時点でわかってましたけどね〜」

案の定俺達が降りた場所には複数の龍が座っておりその奥にはオレオン国の国王、コゼット・ナップバーンが獣の肉を喰らいながら見下すような態度で居座っていた。

「貴様らが無礼にも俺達の国に侵入した愚かな獣達か」

まぁまぁ随分な物言いで。

「その通り……まぁここはお前達の国じゃないけどな」

「……そうか、貴様らこの国の生き残りだな。たった2人で龍に支配されたこの国を取り戻しに来たのか!」

コゼットがそう叫ぶと周りにいた龍たちが笑いだした。

「愚かな!」

「あぁ! これだから獣は」

「殺してしまいましょう!」

「2人で何が出来るというのか!」

フローリアの拳に力が入っているのを確認してそっと肩を叩く。

「ノーチェ様?」

「こいつらは俺の獲物だ」

そう言って俺はコゼットのすぐ近くまで歩いていった。

「しかし俺は嬉しいぞ! この国の生き残りがわざわざ出向いてくれて。銀月帝国の盟主であったリーベ・エタンセルはこの俺が倒したという功績を流す上で国が無くなった本当の理由を知っている元住人は皆殺しにせねばならんかったからなぁ!」

コゼットが血なまぐさい口を近付けて吠える。

「残念だったなぁ! お前達が決死の思いで取り返そうとしたこの国は! 龍であるこの俺がもう既に――」

「黙れよトカゲ」

空気が凍る、皮膚を焼くような圧が龍達を襲う。

「貴様……一体」

「お前、誰の了承を得て銀月帝国を自分の領土にしたんだよ」

「えっ……?」

俺の言葉が理解出来ないのだろうか……獣は低脳だとか何とか散々バカにしておいてお前らトカゲも変わんねぇじゃねえかよ。

「だからな、魔王であるこの俺が受け取った土地を誰の許可を受けて侵攻してんだって聞いてんだよ」

生臭い息を俺に何度も吹きかけて汚い汗が地面を濡らす。

「喋らねぇならその臭ぇ口は要らねぇか?」

「……」

「何とか言えよ! トカゲ!」

俺が叫ぶとコゼットは顔を上げて手に持っていた獣の死体を放り投げた。

「……!? まさかお前は!」

コゼットから見て1番近くにいた龍が反応した。

「新たな魔王、反逆の刃! ノーチェ・ミルキーウェイ」

名前を聞いてビビったのかさっきまで堂々としていた龍は翼をたたみ、腰を折って全力で目を逸らしている。

「リーベさんとの決闘に勝ち銀月帝国は俺のものとなった、なったはずなんだが」

俺は振り返り廃墟となった街を見渡す。

「これはどういうことだろうか」

コゼットの体に触れようとした時……そいつは空から現れた。

「そうか、リーベは倒されたか」

聞き覚えのある声……こいつは。

「久しぶりだなクレアシオン」

「こんな老いぼれのことを覚えてくれておるとは嬉しい限りじゃのぉ」

原初の王、クレアシオン・アレス。騒ぎを聞きつけて飛んできたのか。

俺はフローリアに魔力を込めるよう合図した。

「そう、魔力を荒立てないでくれ。私は敵対する為にここまで飛んだ訳では無いからのぉ」

クレアシオンはそう言って後ろにいたコゼットに話しかけた。

「いくら知らなかったとはいえ、魔王領に手を出したのだ。それ相応の償いはさせるべきであろう?」

クレアシオンの手に魔力が集まっている。斬撃か?

「お、お待ちくださいクレアシオン様! 我が王は国にいる民のことを思いこのような行動を!」

俺の近くにいた龍が立ち上がり声を上げた瞬間……その首は地面にボトリと転がった。

「誰の許可を得て意見しておる、お前らの処遇はもう決まっておるわ」

それを見て絶望する者、涙する者、頭を抱える者、それぞれが様々な反応をするなかコゼットだけはクレアシオンのことを見つめていた。

「……確かに、魔王領へ侵略したのは俺達だ。だが銀月帝国へ攻め入る際ルーグント帝国の承認は受けていた!それにも関わらず自分達は無関係を演じ……俺達に罪を被せて断罪するのはいかがなものかと――」

ザシュッ!!

「お前は喋りすぎたな……ッ!?」

「気になる話じゃねぇかよ、俺にも聞かせてくれよコゼット」

クレアシオンが放った斬撃は俺の刀によって軽く受け止められていた。

「お主」

「銀月帝国に攻めたのはこいつらだ、だがそこに許可を出したのがお前達の国なら話は変わってくる。そうだろ? 六王、クレアシオン・アレス!」

コゼットは本当に俺がこの国を管理していると知らなかった。だが、六王ともなればこの国を管理しているのがリーベから俺と知っていてもおかしくは無い。それにリーベが倒されたかと発言した際こいつは既にそれを知っていると心理掌握で確認した。自分の手下を銀月帝国に向かわせ資源確保、その後俺にバレたらトカゲの尻尾切りでコゼットを殺すつもりだったと考えるのが妥当だろうな。

「はっはっは……小さく愚かな蛇が随分と大きく賢くなったものだ」

「ははは、あんたは長い時間生き過ぎて脳が壊れてきてるんじゃないか?」

「「はははははははは!」」

俺とクレアシオンの笑い声が響く、その声を聞いた龍たちは恐れおののき顔を下げている、フローリアもさっきから全く動けない様子だ。

「そういうことなら仕方あるまい、こやつらの処分はノーチェ殿に任せよう」

呼び捨てに殿が付いたよ。

「……そうさせてもらうよ」

クレアシオンは少し不機嫌になりながら飛び去って行った。

「さて、詳しい話を聞かせてもらおうかコゼット」

俺はコゼットを助けた訳じゃない。しっかりと事情を話して貰おう――

「ノーチェ殿!」

コゼットが龍の姿で俺の事を掴もうとする。

「バカ! そのデカさで近寄るな! びっくりするし押し潰れるわ!」

それともあれか?隙を見て倒そうとしたのか?全く悪意とかないから気付かなかったぞ!こいつもセナと同じで殺すことに躊躇い無いタイプの……俺が色々考えていると小さな何かが抱きついてきた。

「ありがとうノーチェ殿!」

「???」

何この子……どこから出てきた? てか俺と同じくらい、いやちょっと小さいか? ってそんなことより今はコゼットと話を〜? おー? おっ?

さっきまでいたでかい龍が居ない、そして俺に抱きつく小さな男の子。……。なるほど、理解した。

「お前がコゼットか」

「はい!」

俺と同じくらいの男の子は笑顔で元気よく返事をしてくれた。

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