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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
狂愛編
130/261

129話 前進と後退

6つの席にそれぞれの王が座っている。しかしある1つの席だけは空白のまま。

「今回の話し合いはこのくらいにしておこうか」

筋骨隆々のドワーフがタバコをふかしながら言った。

「そうじゃのぉ、それではこの報せは誰に運ばせるかのぉ」

人の姿でありながら明らかに異様な圧を感じさせる者。

「それでは私が向かいましょう」

小さな妖精が机の上にある紙を取り自分の机へ戻る。

「話は終わりか? それじゃあ俺は帰って寝るぞ」

あくびをしながら立派なたて髪を揺らして面倒くさそうに体を伸ばす獣人。

「俺も国でやることがあるから失礼します」

そう言ってエルフは光が差し込む空間へ消えていった。

「全く、少しは協力的になってくれんかのぉ」

「こんな面倒な会議に出てやってるだけ感謝して欲しいがな!」

獣人はそう言って笑いながら光の中へ入っていった。

他の3人もそれぞれ自分の国へ帰っていった。



「シャンデラ国の王が理の王として推薦された?」

妖精の国の主、ルル・メリルが急に来たと思ったらとんでもない話題をぶっ込んできた。

「そそ! 名前は……えーっと」

「シャネル王だったかと」

「それそれ!」

大丈夫かこの人。

「今からシャンデラ国に向かうんだけどさ暇だったからこっちにも寄ったんだよね〜」

本当に自由だな六王!

「てかさぁ……ノーチェはシャンデラ国と和平関係結んでるんだよねぇ」

「いやまぁ、そうですけど」

もしシャネルが六王になったら俺は3人の敵対勢力と和平結んでる事になるのかぁ。……やばいことしてるのでは俺?

「……まぁそう考え込むな。世界ノーチェが思っているより複雑だ。敵になるも味方になるもその時の運次第だよ」

随分とまぁ軽い言い草。

「さて、そろそろ向かうとするかぁ〜」

出された紅茶を一気飲みして飛び上がるルル。俺は窓を開けてルルの出口を用意した。

「それじゃあまた今度来るからな〜」

「今度はもっといいお茶用意するので来る日を伝えてください!」

俺がそう言うとルルはニコりと笑って飛び立っていった。

「ありゃ次もアポ無しだな」

そう呟き窓を閉めると天井からバールが降ってきた。

「何かあった?」

「はい」

バールは机の上に1枚の紙を置いた。

「? 西方面に生息していた動物達が一気に減少した?」

「はい、ここ数日で……先月確認された動物の……半分は減少しています」

明らかにおかしいペースだな、まぁ別に畜産は成功してるし野生の動物がいくら減ろうと関係ないっちゃないけど。

「原因としては……ガレオン獣王国の……狩りが挙げられています」

あ〜獣の国だから畜産とかしないのかな? ……いやまぁ俺も獣だからなんとも言えないけど。

「直接的な害はないし、放ってほいていいんじゃないか?」

「確かに……その通りですが、一つだけ……問題が」

「問題?」

俺が質問するとバールは更にはもう1枚紙を置いた。

「ガレオン獣王国の兵士がこの場所に基地を建設したねぇ」

なるほど、バールが危惧しているのはこっちか。ガレオン獣王国とフィデース信栄帝国の距離はそこまで遠くない。それに加えて間にあるのは広い草原だ。まぁ少し北に目を向ければルリアの森があるけど基地が建築されたのはルリアの森方面……通常これを見て思うのは俺の国を叩く際同盟関係のルリアの森が変な動きをしないか監視する為だろうな。

「獣王国に潜入している奴から連絡は?」

「今のところ……変わったことは……無いそうです」

マジで動物狩るために建設したのか?まぁ少し警戒を強めつつ様子見するか。

「このことはプリオル連隊とケルロス、クイックにも伝えてくれ。警備体制を若干強くするのと西の草原に偵察部隊を送るようにも連絡を頼む」

「かしこまりました」

バールはそう言って霧のごとく消えていった。

あれは……なにかの特殊スキルとかなのかな?そんな疑問を抱えつつ俺はルルが使っていたカップを片付けた。

コンコン

? 今日は来客が多いなぁ。

「どうぞ〜」

俺はケルロスかクイックが来たと思っていたのだが、扉を開いたのは思いもよらぬ人物だった。

「失礼致します」

「ドル? なんの用かな」

俺は片付けようとしていた椅子を元に戻してドルを手招きした。

「本日は和服なのですね」

特段意識してなかったんだけど……ドルが来るなら着替えたのになぁ。

「ごめん、ちょっと着替えてくるよ」

「いえ、大丈夫です」

気を使わせてしまったかなぁ。

「それよりもその服」

さすがリーベさんの部下、よくわかってるわ。

「うん、多分君の想像通り。これはリーベさんから頂いた物だよ」

嘘ついても仕方ないし、何よりドルが気付いてるからな。

「リーベさんから頂いた物は他にもあるんだ。けど俺が持つより君が持つ方がいいかも――」

「いえ、それはリーベ様がノーチェ様にお渡しした物。私が受け取る訳にはまいりません」

ドルはそう言って席についた。

「紅茶で大丈夫かな?」

「はい」

俺は奥の棚にあった紅茶を取り出しお湯の準備を始めた。

「いつもノーチェ様が準備しているのですか?」

「ん? まぁそうだね。けどいつも怒られるんだよねぇ〜下に見られるから準備は部下にやらせろって」


「リーベ様! おやめ下さい!」

「嫌じゃ〜これはワシがやるのじゃ」

「そのような事は私にお任せ下さい!」

「嫌と言ったら嫌じゃ〜お主はそこで座っとれ〜」


「……ル? ……ドル?」

「あっ! はい、いかが致しましたか?」

「いや、ボーっとしてたから大丈夫かなって」

紅茶本当は嫌だったかな?

「……御安心ください。問題ありません」

「それは良かった」

そう言いながら紅茶を入れてドルの前に優しく置いた。

「熱いから気を付けてね」

「ノーチェ様は飲まないのですか?」

「あ〜、俺はさっき飲んじゃったからさ」

2杯目はさすがにもういいかなぁって。

「それでは頂きます」

俺はドルの反応を眺めていたが……少し微妙な顔をしている。

「ちょっと美味しくないかな?」

その言葉に驚いたのかドルは慌てて首を振った。

「そんなに慌てなくていいよ。ほらこのミルクと砂糖を使えば飲みやすくなるよ」

ドルの目の前にミルクと砂糖を差し出す。

「あ、ありがとうございます」

ドルはミルクを少し入れて砂糖を3粒投入した。

「それで……ここに来た理由を聞かせて貰ってもいいかな?」

コトッ

カップをそっと置き崩れた髪を直したドルは俺の目をまっすぐ見て答えた。

「我々、銀月帝国の獣人3万人のうち1万7000人をノーチェ様の軍隊であるプリオル連隊に加入させて頂きたいとお願いをしに参りました」

全く思ってもなかった提案。軍備強化になるから人員が増えるのはいいことだ……いい事なんだが。

「ノーチェ様が悩まれるのも分かります」

俺が口を開く前にドルが発言した。

「我々銀月帝国の住民は元々リーベ様の配下です。一時的ではありますが敵対していたということもあり信頼出来ないのも無理はないと思います。ですが、我々は寛容はお心と……リーベ様の友人であるノーチェ様に尽くしたいと心から考えており!」

ドルがそこまで言うと俺は立ち上がりドルに近寄った。

「わかった、プリオル連隊には俺から話をしておくよ。でも軍隊の総隊長は俺じゃないからどうなるか保証は出来ないけど……それでも大丈夫?」

「はい!」

力強い返事だ。まぁ謀反を起こすならそれまで、俺の力がなかったってだけの話さ。

「それでは、私は失礼します!」

勢いよく立ち上がり扉を開けようとした時俺はドルに声をかけた。

「まぁ少し待ってよ、この後俺は暇だからさ。俺の知らない……リーベさんの話を聞かせてくれないかな?」

それを聞いたドルは一瞬驚いた素振りを見せたが直ぐに笑って。

「喜んで」

そう一言伝えもう一度部屋の中へ入っていった。

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