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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
狂愛編
120/261

119話 廻る時計

「はぁ……はぁ……ノーチェさん! ドールさん! 少し……休憩を……!」

サクは限界か……仕方ない。

俺はサクの後ろ側に回り込みお姫様抱っこで走り出した。

「なっ……何を!?」

「このまま教会に向かう! 休んでる暇はない!」

俺のミスだ……最初から強引に調べるべきだった。

「ノーチェ様! 前方に敵です!」

「ちっ!」

あの量は抑えきれない……仕方ない! 住民は巻き込みたくなかったが!

「アイス……」

手を前に出して魔法を放とうとした瞬間

「スリープ!!」

物陰から大きな帽子を被った少女が現れた。

「トレイシー!?」

「こっちです!」

罠か? ……いや心理掌握には引っかかってない。でもさっきの心理掌握では洗脳状態かどうかまでは分からなかったし。

「あなたの正体ならわかってる! 私は味方だから信じて!」

……。

「ノーチェ様!?」

「多分大丈夫だ! 行くぞドール」

少し不安そうなドールだが俺の目を見て信じてくれたらしい。

バタンッ!

「はぁ……はぁ」

「無理させたなドール」

「い、いえ……私はノーチェ様の配下ですから」

息整えてからでいいぞ〜。

「……それで? トレイシーさん。俺の正体を知ってるってどういうことかな」

助けてくれたことは感謝しないとダメだ……でも俺が仲間を殺したと思われているなら面倒なことになる。

「……貴方はタラレントで死んだ仲間の遺体を吸収しましたよね」

吸収……ってのは違うけどまぁそうだな。

俺は黙って頷いた。

「やっぱり。私、昔から相手の魔力が色でわかるんです」

なるほど……じゃあ隠蔽とか使って隠れてても意味なかったって訳ね。

「それで……その時の復讐を?」

俺は刀に手を添える。

「……いえ、私は感謝してるんです。もし貴方があの人を吸収してなければ私もあのまま死んでましたから」

涙……まだ心の傷は癒えてない……か。

「助けてくれてありがとう。でも君も逃げた方がいい」

「ううん……私もあなた達について行きます」

「危ないぞ」

トレイシーは杖を強く握り強い目で俺を見る。

「もう……もう! 仲間を失いたくないんです!」

仲間……。

「じゃあ仕方ないなぁ!」

「ドール! トレイシーを抱きかかえろ!」

「いいですが何を!?」

「取っておきさ!」



「うそ……」

「これ……死にません?」

「大丈夫さ、しっかり操作する」

俺達4人は今氷の上に立っている。まぁ何をするかと聞かれたらこの氷を伸ばしていき教会にこのまま突撃する。簡単だろ?

「行くぜ!」

「あぁもう! 覚悟決めましたよ!」

「しっかり掴まってくださいね」

「はい!」

「アイス・ロード!」

大気中に存在する物質を凍らせて道を作る……そうすることで魔力消費をギリギリまで減らすことができるって訳さ!



あれが……教会か?

「見えてきました!」

「このままぶつかるから捕まってろよ!」

「え!? このまま!?」

「そうだ!」

サクの大きな悲鳴は置いといて俺達は教会に到達した。



「よし、成功!」

「失敗ですよ!」

瓦礫の中からサクが勢いよく出てくる。

「元気じゃん」

「おかしいな! ノーチェさんが酷いこと言う!」

「中は静かですね」

ドールはもう辺りの探索か……ケルロスの部隊にいるだけあるわ。

「この辺りに敵の気配はありません」

「ふむ……教会には敵が居ない……か」

教会が犯人かどうかは置いといてこの事件に関わってるのは間違いなさそうだ。

「これからどうするの?」

トレイシーが外の様子を見ながら聞いてきた

「……とりあえずここの探索だな」

敵が居ないなら好都合だ。今のうちに色々調べてみよう。



「なんも見つかんねぇ!」

えぇ……教会関係なかった? 嘘やん、めちゃくちゃ教会になんかあると思ってたのに!

「うーん……何もありませんね〜」

探索に疲れたサクが適当な椅子に座りんだ……その時だった。

ゴトッ

「ひゃつ!?」

サクの椅子の裏にある床が開いたのだ。

「……」

「隠し扉ですね」

「見つかりましたか」

「よ、よくやったぞサク」

見つかった驚きよりも何かあったことに対する安堵の方が大きかったなんて口が裂けても言えない。

「中は……見えませんね」

「ライト。……これで進んでいきましょう」

お〜さすが魔法使い。

「じゃあドールとトレイシーが前を真ん中にサクを入れて後ろは俺が警戒する」

「かしこまりました」

「はい」


「はーい」

サク眠そうだね。

コツコツコツコツコツ

「少しジメジメしていますね」

「あぁ……水滴が落ちる音も聞こえる」

今のところ扉も何も無い……ただただ暗い道が続いてる。

「……?」

ドールが立ち止まり自分の手を見て首を傾げる。

「? どうしたんだ?」

「いえ……なんでもありません」

? 水滴でも落ちたのかな。

……。

長い、さすがに長すぎる。タラレントでケルロス背負って移動した時でさえここまで長くなかったはずだ。

「妙ですね……これだけの長さだと既に聖王国の外にいるはずです」

「……これ以上探索しても無駄かもな、転移で1度教会に戻ろう」

3人を近くに寄せて転移をする。……しかし。

「ん?」

「どうしましたか?」

「いや……おかしいな」

転移が出来ない……。魔力切れ? いやいや、そんなことは無い自分の魔力量は1番よくわかってる。

「何かが妙だ」

そんな違和感に気付いた時……。

「なんだ……やけに喉が渇く」

「私も……肌が痒くなってきました」

「……爪がだいぶ伸びてる。これは?」

全員が違和感を覚え始めた時ドールが口を開いた。

「まさか……と思いましたがどうやら私の考えはあっていたようです」

「……なにかわかったのか?」

「はい……この通路の中は外の世界よりも一日の時間が短いんです。恐らく既に3日は経っているかと」

「3日!?」

サクが驚きの声をあげた。

「なんでそんなことわかるの?」

トレイシーが質問する。

「獣人は陽の光で時間を確認します。そして陽の光がない時は周りの空気、温度、湿度などを使いある程度の時間を調べます。その際ここの空気や温度は変化するのが早いんです。外にいる時よりも確実に」

……獣人ってそうなんだ!

俺獣人だと思われるのにそんなこと初めて知ったけど。

「わかった。とりあえず引き返そう。喉の乾きや肌の乾燥は俺の水泡魔法でどうとでもなる」

「そうですね……逆に3日程度で引き返すことができたのはラッキーだったと言えます」

トレイシーさんポジティブだねぇ。

タッタッタッタッタッタッ

「結構歩きましたからね……戻るのも一苦労です」

「仕方ないさ」

俺とドールはそれぞれサクとトレイシーを背負って走っている。

2人とも魔法に特化してるから基礎的な体力は少ないんだ。

それに3日間歩きっぱなしみたいなものだし限界も来てたんだろう。

「ここの1番怖いところは時間が過ぎていると気付かない限り自分の体に起こっている異常にも気付けない所です」

「確かに……ドールに言われるまで誰も違和感を感じてなかったもんな」

「恐らくですが死ぬ時ですら何が起こっているのか分からないというトラップなのでしょう」

やべぇなそりゃ。本当にドールが居てくれて助かった。

「戻ったら敵が待ち構えてるなんてことも有り得る。油断するなよ!」

「はい!」

俺達は光が見える方へ走り続けるのだった。

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