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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
狂愛編
117/261

116話 王都殺人事件

「はぁ……はぁ……はぁ」

街を霧が包む。太陽の光もまだ現れない……深い深い闇の中。

「なんだお前は!?」

「……」

真っ黒なマントを身につけたそいつは左手にナイフを持ち男を追い詰める。

「何が目的だ! 金か!? 金が欲しいのか!? 私が与えられるものならなんでもやろう! だから命は!」

「……」

闇は男の首を切り裂き地面に赤い命をばら蒔いた。



「聖王国で連続殺人事件?」

昼食を済ませ食後の紅茶タイムを楽しんでいるとクイックの口から思いもよらぬ言葉が出てきた。

「あぁ……それも貴族ばかりが狙われるらしい」

ははは……まぁ王も消え治安の悪化が影響してるんだろうなぁ。

「新しい王はどんな反応を?」

「捜索はしてるらしいけど手がかりは一切無し。わかってることは真夜中で霧が多い日に人が殺されてるってこと」

「貴族に何かしら恨みがあるとかじゃないのか?」

扉の方から声が聞こえる。

「ケルロスか」

お菓子を作ってくれたのか……。

「ほら」

「ありがと」

「最近菓子作りよくしてるよな」

クイックが皿にあるクッキーを1枚頬張りながら答える。

「まぁな……」

「ノーチェの喜ぶ顔が見たいからだろ?」

「うるせぇ」

ケルロスの耳元でクイックが何か言ってる……作り方でも教えてもらいたいのかな?

「それで話を戻すんだが……その連続殺人事件の解決にフィデース信栄帝国の力を借りたいって連絡が来たんだ」

「……? 国家の中での殺人事件だろ? いくらなんでもこっちに助けを求めるのは違くないか?」

「俺もそう思ったんだが……正式な書状を持ってこられたら話さないわけにいかないからな」

うーん……何か裏がありそうだな、まぁ普通に考えるならこっちを巻き込んで何かしら企んでるとか。

「まぁ……無理に承諾することもないだろ。それに今はシャンデラ国との外交で忙しい時期だ」

ケルロスの言う通り……こっちもこっちで問題は山積みだ……正直そっちの国で起きてる事件は自分でなんとかして欲しい。

「どうする?」

「うーん……」

ここで突っ撥ねるってのもなぁ……変な噂流されるのも嫌だし。

「……わかった俺が行ってくるよ」

「何もノーチェが直接行くことないんじゃない?」

クイックの言う通りなんだけど……。

「まぁ……サクッと解決してくるから。それに……最近書類も減ってるしシャンデラ国の管理は主にケルロスとクイックでやってるだろ?俺がちょっといなくても平気だよ」

「……まぁノーチェも休みが欲しいか」

ん〜……?

「そういうことなら仕方ないな」

「待て待て待て! 俺は真面目に」

そこまで言うと2人が俺の肩を優しく叩く。

なんだよその目!

「お、お前ら!」

2人は何も言わずにそのまま部屋から出て行ってしまった。

「真面目に考えた結果だってのー!」

俺の叫び声は虚しく部屋に響くだけだった。




翌日

「あ……あの」

「ん?」

「私で……良かったんでしょうか?」

今俺たちは聖王国に向けて車を走らせている。

「いや……こっちこそ巻き込んで悪かった」

「い、いえ!」

「ドールもありがとね」

後ろの席でジュースを飲んでいるドールをバックミラーで確認する。

「あっ! いえ! ケルロスさんにも頼まれたので!」

慌てて飲み物を置き背筋をピンッとする。

真面目なんだな。

「しかし……本当に良かったのでしょうか。主に運転をさせるというのは」

「2人とも出来ないものは仕方ないよ」

まぁ……俺も数週間前に1人で運転できるようになったばっかりだけど。

「とはいえ……このような用件で国に助けを求めるとは……少し考えが甘いというか、逆になにか裏があるのではないかと感じてしまいますね」

ドールが渡した書類を眺めながら言った。

「俺もそう思う。だからこそ俺が行くんだ。何があるかをこの目で見極めるために」

ケルロスとクイックのやつは書類をサボりたいだけだと思ってるけど!

「お力になれるよう全力で頑張ります」

「わ、私も! 頑張ります!」

「うん、よろしく頼むよ」

何も無い大地を車が駆ける……少し絵面があれかもだけどそこは異世界パワーでなんとか……ね。



「着いたぁ」

「凄いです……馬を使うより遥かに早く着いてます」

まぁ……こっちは300kmまで出せるからなぁ。……さすがに出さないけど。

「まずは……どうしようか」

こういう時は真正面から行っていいんだよな? ルリアの森でもコロリアン妖精圏でも門から入ったし。

「近くの兵士に話を聞いてみますか?」

「それだ」

さすがはケルロスの部下……頭が回る。



数分後

「着いてきて欲しいとの事です」

見ていた感じ変な動きは無い。……普通に案内してくれると思って間違いないだろう。

「それじゃあ行こうか」

その後兵士が持ってきてくれた馬車に乗り王城へと向かって行った。



「広いです」

「確かに……ですが主の家ほどではないですね」

「いや……部屋の広さは勝ってても家自体の大きさは雲泥の差だから」

俺達が招かれた部屋は色々な宝石、骨董品などが並べられていた。他にもお菓子や飲み物が置いてありこれから会談すると言うよりもお客様をもてなす気満々みたいな感じだ。

ガチャッ。

「……! お待たせ致しました」

「いえ……こちらこそ急な訪問申し訳ありません」

俺を見て一瞬驚いたな……やはり一国の王自ら出向いてくるとは思ってなかったか。

「この度はわざわざノーチェ・ミルキーウェイ様に御足労頂き感謝の極みにございます」

「そんなにかしこまらないでください。前回……会議中にしたことは戦争中だったからやったこと、今は和平関係を結び土地をもらい互いを守ると条約を交わしています」

それに……毎回そんな態度されると俺も疲れるし。

「……そういうことでしたら失礼します」

頭に乗せた王冠を置き椅子に座り込む。

「王となり会ったのは初めてですね。私はハウル・オーレン。ハウルとお呼びください」

「……わかった。これから宜しく、ハウルさん」

少し軽いかもしれないが……この人は真面目そうだし堅苦しく話してると永遠と仲良くできない気がするし。

「はい。こちらこそよろしくお願い致します。ノーチェ様」

うーん……道のりは長そう。



「それで? 連続殺人事件ということだけど……。国に助けを呼ぶほどの事なのかな?」

少し意地悪な質問だと思うがずっと聞きたいことだったので仕方ない。それに加えてなにか裏があると勘ぐり続けるのも精神的に疲れる。

「はい……実は命を奪われた貴族達には共通点があるのです」

「それはどんな?」

ハウルが目を逸らし気まずそうに答えた。

「……被害者は……全てフィデース信栄帝国との和平関係をよく思っていない貴族達です」

……俺を呼んだ理由がようやく見えた。

「わかった、今回の件全力で手をかそう」

俺達の国が関わってるとか思われるのは癪だし何より俺がこの犯人を捕まえることで国内での評価が変われば大きな一歩になるはずだ。

「ありがとうございます」

ハウルが深く頭を下げて今日の話し合いは終わりになった。



「悪いなサク」

「い、いえ」

サクは不可視化を使い見えない状態になってもらっていた。和平中とはいえ俺たちのことをよく思っていない奴らも少なくないはず。

俺が動けば警戒される可能性も高い。そこでサクに色々な探索を頼むことにした。バールでも良かったんだが……今は違う仕事を任せてるからな。

「まずは王城にある連続殺人事件についての書類を集めてくれ。あとは……使用人とかの話も時折耳を傾けといてくれ。俺達は殺人現場などに向かう」

「はい」

俺は扉を開き外に出る。それと同時に不可視化を使ったサクが王城を駆け抜けた。

「如何されましたか?」

やはり……警備は居たか。……俺を守る警備なのか俺を止めるための警備なのか……。

「事件があった場所に行きたいのだが……案内を頼めるか?」

警備の2人は警戒しているようだが……こっちに罪を被せられる可能性もある。のんびりはしてられない。

「出来ません。王の命令なしでは……」

「出来ない? ……お前は和平中である王に向かい国を歩くことすら許さないのか?」

嫌な言い方をしてるのは百も承知……だが俺にも守りたいものがある悪く思わないでくれ。

「……しかしここから!」

「はいはい〜そんなに声荒げないの〜」

軽いノリで話す男……槍を肩に乗せてふらふらと歩いている。

「隊長……また飲んでいるのですか?」

「あ〜……まぁそうだなぁ」

こいつ……強いな。前の戦いには居なかったが……そうだなぁ、エリーナのところにいる副隊長位はあるか。

「それで? この方がノーチェ様かい?」

「……はい。俺がノーチェ・ミルキーウェイです」

俺は名前を伝え手を差し出した。

「おっと……一国の王に握手求められたら断れねぇな。俺はベリル・セルロン、まぁ王城の守護を任されてるってのが肩書きかな」

鍛えられた手……こんな態度だが努力家なのかもしれない。

「話は聞いてたぜ〜……ノーチェ様は外に出たいんだよな?」

ベリルの態度が気に食わないのかドールが前に出たが俺はそれを止めた。

「あぁ。連続殺人事件の被害があった場所に少し行きたいんだ」

「……なるほどねぇ」

ベリルは兵士の耳元で何かを伝え肩を強く叩いた。

少し抵抗があったようだが上手く言いくるめたな。

「じゃあ行きましょうか」

言葉遣いはある程度丁寧になったが態度はあんまり変わってないな。

まぁ別にかしこまられても面倒だしこのくらいの方が助かるわ。

俺はそんなことを思いながら王城から出て行った。

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