114話 泥酔
……なんかいきなり目を輝かせてたな。
「終わった〜?」
奥の部屋から声が聞こえる。
「終わったよ〜」
返事をするとケルロスとクイックが扉を開けて中に入って来た。
「お疲れ様。それで? 上手く行きそうなの?」
「うん。悪い人じゃ無さそうだし」
それを聞いた2人は特段何も言わずに頷いてくれた。
「てかよく最初怒らなかったね……相手」
「まぁ悪いことしたのはあっちだから気を使ったんだろ」
「悪かったよ寝坊して」
そう……俺は大切な会談なのに寝坊をかまして適当な服で来てしまったのだ。まぁ2人は気を使って普段着で来てくれたからこれがこの国の正装に……見えるわけないか。
「まぁその辺は相手が寛容だったとか?」
「結論として上手くいったからいいでしょ。……それにしても学校を建てるとはね」
感心した様子でシャンデラ国の情報が書かれた紙を眺める2人。
「若い力を育てないとね。将来は俺の後を任せられる人も作らないとだし」
それを聞いた2人が固まる。
「そ、それは……どういう意味で?」
クイックが紙を見たまま質問する。
「え? いやまぁ生物だからね……寿命はあるし、後継者は作るべきじゃない?」
「……ちなみにその……相手とかは?」
ケルロスが訳の分からない質問をする。
「相手? ……何の話してるの?」
肩を落とす2人……まじで何言ってるんだか。
「まぁいいや。というかせっかく塔の最上階来たんだし美味しいもの食べて帰ろうよ!」
「いいよ」
「最近働き詰めだったしたまには息抜きしないとなぁ」
固まった体を伸ばしながらリラックスモードに移行する2人。プールの警備員やったり外交したり周辺の魔物狩ったり……いつも部屋で書類仕事してる俺と比べれば2人は働きすぎくらいだ。今度マッサージでもしてやろうかな。
そんなことを考えながら部屋出て1つ下の鉄板焼き専門店へと入って行った。
「個室なんだな」
「普通のお客さんもいるからね」
俺とケルロスはともかく国の顔役であるクイックは直ぐバレちゃうからね。
「それにしてもここ高くないのか? ノーチェが奢るとか言ってたけど」
「高そうに見えるけどそこまで高くはないよ。それこそ普通の仕事してる人でもちょっと節約して貯金増やせば行けるくらいのものさ」
貧富の差ができるような国作りはしないように心がけている。だから俺の給料とかは一般の人とあんまり変わらない。まぁ隊長とかになると命の危険も変わってくるから少し多めに出したりはしてるけど貧富の差が大きく現れるか? と聞かれればその辺は大丈夫だ。
まぁ……家の維持費とか食費はテグとかが払ってくれてるから普通に生きてるだけならお金使わないんで貯金し放題なんだけどね。
今度テグになにか買ってあげよう。
「おまたせ致しました」
自動人形。
この塔は様々な人が働いているが人手の足りないところは自動人形が補っている。
まぁそれもだんだん減りつつあるけどね。
「ご主人様の為に……最高の状態で料理を提供させて頂きます」
「お……おう。ありがとう」
なんか……俺が関わると自動人形のみんなやる気出す具合が変わらん?
「あれ? 2人ともそれ何?」
「ん? お酒だよ」
……え?
「ふ、2人とも飲める歳なの!?」
「飲める歳? ……まぁよくわかんないけど飲めはするよ」
マジか……2人とも家じゃそれっぽいの全く飲んでなかったから気付かなかった。
「というかノーチェは飲んだことないの?」
「え? ……あっうんないね」
こっちの世界じゃ生後2年か3年くらい……いやもう少しか? まぁとにかく20年はまだまだ先だし……てか産まれる前成人ならあれだけど高校生だったしな。
「……飲んでみる?」
「えっ……」
ここは異世界……飲んでも問題は無いはず。そして何より疲れている2人を労おうとしたのは俺だ……ここで飲まないと2人も気を使ってしまうかもしれない。
「じゃ……じゃあ少しだけ」
ここは異世界のご都合主義……状態異常無効で酔わないみたいな設定があるはず。
「えへへへへへ〜」
「まさかここまで弱いとはな」
「ノーチェ!? ちょっ! 水! 水お願い!」
いや……まさかこの1杯で酔っ払うとは。
お酒飲んだことないノーチェでも軽く飲めるように結構薄いの頼んだんだけど。
「2人とも最近冷たいぞ〜……俺はいつも1人で書類仕事やってるのに2人は全然家に居ないじゃんか〜」
ノーチェは絡むタイプか……。
エレナのやつは泣き出すから……まぁこっちの方がまだ。
「昔はもっと一緒に居たのにさぁ〜! ほら2人とも俺を構え〜1人にすんな〜」
ケルロスの膝の上でバタバタと暴れるノーチェ……。正直少しだけ……いやだいぶ羨ましい。
「寂しかったんだな、ほら」
ケルロスがノーチェの頭を優しく撫でる。
「お〜……よろしい。ご褒美に俺も撫でてあげよう」
「なっ!」
驚き席を立った俺を笑うようにケルロスは満足そうな顔をする。
「ん〜……クイックも俺を構えよ〜……」
「いや! 俺はいつもノーチェのこと」
そこまで言うとノーチェがケルロスの膝から降りて俺のすぐ近くで立ち止まった。
ち……近い! 顔が……息が掛かる。てかいい匂いする。
「……照れてるなぁ〜! あっははははは!」
「それはずるいだろ!」
「ほらノーチェ……そんなに近付いたらクイックが困っちゃうよ」
お前はしれっとノーチェを独占しようとすんな!
「……ん〜。そんなことないぞ。だってクイックはこんなことよりもっとすごいことしたもんな〜」
その言葉に部屋の空気が凍る。
「ほう……何をしたか聞かせてもらおうか」
あっ……ケルロスがマジだ。
「いや……あっ! ノーチェ、そろそろ」
俺の抵抗は虚しくノーチェの口は閉じなかった。
「前な〜デートした時……最後にキスされたんだ〜!」
「「……」」
沈黙が走る……いやノーチェは呑気に笑ってるけど。
「……なるほどね」
「けどほら! ケルロスが勝手に居なくなったのも悪いし! 俺はそんな……ね!」
特段言い訳が思いつかない。でもやったことに後悔はしていない。
「まぁ……そういうことならいいよ」
ケルロスが怒ってる気配はない。ただ手でノーチェのことを呼んでいる。
「ん? ……どしっ!?」
「なっ!? ケルロス!?」
「ん〜!? ん〜!! んんっ!!」
「こんなもんか」
満足そうに微笑むケルロス……ノーチェは酔っていたのもあり伸びてしまった。
「おま!」
「お前もやったんだろ? これでフェアだ」
だからって……俺の目の前でやることないだろ。
「まぁ……この様子じゃノーチェもおぼえてないだろうし」
「そういう問題じゃ」
「……気に入ったものに印付けとくのは当たり前だろ」
野性だ……見た目すごいインテリなのにめちゃくちゃ野性的なこと言ってる。
「まぁ……伸びたノーチェをここままにしとくのもあれだな」
「はぁ……今日はこの辺しとこう。支払い頼めるか?」
「はい。それで……私は奥にいて正解でしたか?」
「あっ……うん」
気の使える自動人形だな。
その後は伸びきったノーチェを背負いながら家まで帰った。
途中目を覚ましたノーチェが顔を真っ赤にしながら転移で先に家に行ってしまって、デートの時何があったか根掘り葉掘り聞かれとっても大変だったのはよく覚えている。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】
天帝月夜蟒蛇Lv3
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv9、精神異常無効Lv8、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8
《スキル》
支配者、知り尽くす者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv8、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv5、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv8、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破壊魔法Lv8、幻影魔法Lv9、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《???》
強欲、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
ケルロス・ミルキーウェイ
赫々白狼Lv9
《耐性》
痛覚無効Lv6、状態異常耐性Lv9、物理攻撃無効Lv3、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
信頼する者、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv4、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv6、光魔法Lv10、神聖魔法Lv8
《???》
嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥紅土竜Lv8
《耐性》
物理攻撃無効Lv5、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv1、魔法攻撃無効Lv2
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv3、風斬魔法Lv8、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10
《???》
暴食