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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
聖王国編
109/261

108話 原初の王

コード商会との話し合いから数日……。

「ねぇケルロス……ねぇクイック」

俺と全く目を合わそうとしない2人……。

「ねぇ……これはさどういうこと?」

俺は目の前で広がる光景を見ながら質問する。

「……俺さコード商会の為に土地を作ってあげてってお願いしただけだよ? 誰も国の土地を広げろなんて言ってないよ?」

フィデース信栄帝国はゼールリアン聖王国に所属していたサーレス領を丸々併合。その代わりにゼールリアン聖王国と同盟を結び人の国を守ることになった……。

いや……ゼールリアン聖王国との同盟に関してはいいよ。俺も許可出したから。

「いや……あっちが受け取ってくれっていうから」

「それで? 全部ドン! って? 貰っちゃったの?」

「はい」

……。

まぁ二人を責めても何も変わんないか。

「ほら……2人ともそんなに落ち込まないで。領地が広がるのは悪いことじゃないさ……」

「ノーチェ……」

「とりあえず2人は拡大した領地の活用方法と防衛を任せるから」

「「あっ……はい」」

2人とも忙しくなるだろうけど……これくらいは色々勝手にやった罰ということでね。



増えた土地の管理は2人に任せて俺は自室でシャルとお茶をしていた。

「ノーチェ〜……2人はどこ?」

「あ〜……お仕事中かな」

「ノーチェはしないの?」

「俺は……」

……。なんかなんもしないってのも申し訳ない気がしてきた。

「いやまぁ……ちょっとね」

「……まぁいいや! 3人とも忙しいと私がすること無くなっちゃうし!」

可愛いなぁシャルは。

俺がほのぼのとした気持ちに浸っていると窓から大きな音を立てて何かが侵入してきた。

ガチャン!

「シャル! 後ろに」

「うん!」

「はぁ〜……失敗失敗。本当はもう少し前に止まるつもりだったのに」

煙の中からは大きな翼としっぽを持つ女の子が立っていた。

「あれ!? 部屋の中!? ……嘘、私もしかしてやっちゃった!?」

バタバタと慌てた様子を見せる少女。煙も晴れてしっかりと姿が見え始める。

煙で見えてた影から龍人なのはわかってたけど。

真っ白な髪の毛……目は金色……なんというか女の子版ケルロスみたいだ。

「えっと……えぇと! ごめんなさい!」

龍人は俺達のことを確認すると深く頭を下げた。

……どうやら敵対するつもりはないようだ。

「大丈夫だよ。君こそ怪我は?」

「あっ……えっと」

龍人は翼やしっぽ……腕や足を確認して。

「大丈夫です!」と元気いっぱいに答えた。

「それで……何しに来たのかな?」

「えっ!? あっ……そうでした!」

龍人の少女は胸元から書状を取り出して俺に渡してきた。

……デカイな。

ってそんなことより。



原初の王 クレアシオン・アレス


理の王 バージェス・ロンドの後釜にシャル・アイレを指名する。



これだけの文章を送るためにと色々ツッコミどころはあるが……。

「何故シャルのことを知っている」

「?」

ダメだ……この子はただの使者でほかは何も知らない様子だな。

「原初の王の手紙は受け取った。それで色々話したいことがある。 」

「そう言われると思いました! 転移の準備は出来てますので!」

随分と用意周到だな……何かの罠か? いや仮に罠だとしてもシャルが生きているとバレている以上会わなければ何も変わらないか……。

「バール」

「はっ」

「シャルをケルロスとクイックの元に向かわせろ。そして国の警戒レベルも最大まであげとけ」

「主殿の護衛は」

「俺は1人でいい」

それを聞いたバールが強めの反論をする。

「それは……承諾致しかねます……」

「俺で勝てない相手なら誰も相手にならないさ」

「そうだとしても……主殿が……逃げる時間稼ぎ……くらいなら」

バールの意思は硬いらしいが……俺としても仲間を危険な場所に連れていくのは嫌なんだ。

「大将! 私が着いてくぜ」

どこで話を聞いていたのかイヴィルが部屋に入ってきた。

「……バールだからダメという訳じゃないんだ」

「そんなことはわかってる……それでも私はケルロスとクイックの兄貴に頼まれてるんだ」

いつから兄貴になったのだろうか。

「……はぁ」

バールならまだしもイヴィルに関しては本当に言うこと聞いてくれないしな。

何より俺に関して頼まれてるってことは無茶しそうになったら止めろってことだろ? それを出来なかったイヴィルが後々2人に怒られるのは目に見えてる。

「わかった……許可する。バールはシャルを連れて行ってくれ」

「かしこまりました」

「準備は出来ましたか?」

「待たせて悪かったな」

転移の準備をして笑顔で待ち続ける龍人に礼を言う。

「いえ! あっ……私が家を壊したことは内緒でお願いします! また怒られちゃう。修理代に関しては私が出しますから!」

「大丈夫大丈夫」

少しだけ緊張もほぐれたし。

「じゃあよろしく頼むよ」

俺は龍人の少女が作った転移の中へと入っていった。




広い天井……空にあった都市を思い出すな。

「デレス! ただいま戻りました!」

この子はデレスって言うのか。そして奥に見える三体の龍……。

生きてる龍は初めて見るが……三体並ぶとすごいなこの迫力。

「おかえりなさいデレス。疲れただろ? 奥で休んでなさい」

俺から見て左に居る龍が優しい口調で話しかけた。

「はーい」

デレスは元気よく挨拶をしてその場からいなくなってしまった。

「さて……お主の言いたいことは何となくわかる。シャルという少女が生きてるのをなぜ知っているかであろう」

真ん中に居る1番大きい龍が口を開いた。

「……その前にあなたが原初の王ですか?」

「あぁ……そうだな。言い忘れていた……私が原初の王クレアシオン・アレスだ」

なんだか……想像してた人物? 龍物? とは違うな。

「俺はノーチェ・ミルキーウェイだ」

「うむ……それで話を戻すが……シャル・アイレの生存を知っている者は六王全員だ」

どこから漏れた……。怪しいのは……コロリアン妖精圏か。

「恐らく……お主の考えている者は裏切っておらん。何せシャル・アイレの生存を最初に知ったのは我らだからのぉ」

それはそれで大問題なんですけど。

「シャル・アイレの生存を知った方法はこの石じゃ」

クレアシオンの手には小さな石が乗っている。

「これは?」

「この石はシャル・アイレの持つグロウ・セレナを作る際に削られた魔石じゃ」

魔石……。

「この石はグロウ・セレナの状況によって色が変わる。持ち主がいなければただの石……持ち主が現れその者を認めるまでは赤黒く……。持ち主を認めた時はその主の色に変わる」

なるほど……色の変化でシャルの生存を知ったのか。

「謎は解けました。そしてシャルを六王にする申し出ですが……俺がそれを許すと思いますか?」

「お主は魔王であろう……六王の取り決めに口を挟むのか?」

原初の王と俺の間で殺気が交わる。その空気を感じ取った両脇にいる龍は爪を立て隣にいるイヴィルは刀に手を添える。

「……はっはっはっ」

緊張した空間にクレアシオンの笑い声が響く。

「いや……こうなるのはわかっていた。じゃが……シャル・アイレが生きているのは魔王も知っておるぞ」

「どういうことですか?」

こいつがバラしたのか?

「まぁ……知っておるのはゼロと……あぁ狐っ娘も知っておるか」

何故その2人!?

「……」

「色々不思議に思っているのじゃろ」

「えぇ」

バレた理由に関しても不思議だけど……2人が一切俺に接触してこないのも謎だ。

「まぁ……シャル・アイレの生存が魔王にもバレているのは私にもよく分からん」

「あなたはバラしていないと?」

原初の王はほかの魔法全員と関わりがあると聞いた……情報をリークしていても不思議は無い。

「あぁ……絶対にバラしておらん」

俺を見つめる目は真剣さを物語っている。

「わかりました。ですが……他の魔王にシャルの生存がバレればどうなるか分からないあなたではないでしょう」

「もちろん……。じゃが……どうしてもシャル・アイレを理の王にしなくてはならないのじゃ」

「どうしてですか!」

俺は初めて声を荒らげる。

「お主じゃよ」

「……俺?」

クレアシオンは俺を指して話し出した。

「魔王……反逆の刃ノーチェ・ミルキーウェイは魔王の中でも穏健派……いや限りなく友好的な人物であると我々は踏んでおる」

「……よく言う。俺は六王の1人……理の王バージェス・ロンドを殺した奴だぞ」

「あれはバージェスが仕掛けてきた戦争じゃ……」

この龍……色々知ってるな。何よりあの目……何を考えてるのか全くわからん不気味な目をしてる。

「魔王とは強大で我々には理解出来る存在では無い。しかしお主という対話のできる魔王が誕生した」

「それは褒めてるのか?」

「もちろん。そして六王は全員ノーチェ・ミルキーウェイと同盟を結ぼうとしている」

「……そんなことをすれば」

「あぁお主の魔王としての面子は潰れるじゃろうな」

……何を考えてる。何を狙ってる。

「じゃがお主はこの提案を飲み込むしかない」

龍人の圧が上がる。

「シャルの生存を……セナに教えればどうなるか。わからん訳もなかろう」

それが狙いか……。俺を六王陣営に組み込み魔王の中で裏切り者を作り出す。上手い具合に情報を抜きながら魔王を倒しちまおうってか?

「どの道シャルが六王になればバレるだろ?」

「状況が違う。六王になる前のシャルに後ろ盾はお主とルリアの森……コロリアン妖精圏しかおらん。その程度であの怪物を止められるわけがなかろう。しかし六王となったシャルにはそのほか全ての国がシャルの為に戦うこととなる。そのような大戦になれば……ゼロが止めるじゃろうなぁ」

シャルの生存を知られた時点でこっちの負け……か。

俺が仕方なく龍人の提案を受け入れようとした時だった。

「あらあら……老人はずる賢くていけないのぉ」

美しい毛並みを揺らして俺の前に立つ女性。

「リーベさん!?」

「ノーチェが老いぼれに虐められると聞いてのぉ……飛んできたのじゃ」

優しく微笑み俺の顔をなぞるリーベさん。しかしその顔は少しだけ怒っている気がした。

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