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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
聖王国編
107/261

106話 暴力的な会議

「やめてぇ!」

「殺さないで!!」

「あぁ……あぁ!」

命乞いをする奴……赤子を抱え泣き叫ぶ奴……死体を抱きしめただ泣き崩れる奴。

何故こいつらは泣いているのだろうか……何故こいつらは被害者のように振る舞うのか……。

俺には理解できなかった。

俺から全てを奪ったのはお前たちのはずなのに。



「ノーチェ……? ノーチェ! ……ノーチェ!!」

「はっ!? な……何!? どうしたの?」

「具合悪そうだったから……大丈夫?」

不安そうに俺を見つめるシャル……自分の体を確認すると嫌にベタベタする汗をかいて呼吸も荒い。

前にもこんなことが……。

「……大丈夫。ちょっと寝苦しかっただけさ」

「そっか……あっそれとねそろそろ着くらしいよ!」

いよいよ着くか……ゼールリアン聖王国。と意気込んで居るが……どうしよう。どうやってゴーンの遺体を回収しようか。

「ノーチェ……どこに止めるんだ?」

うぅーん……うぅーん。

「ノーチェ?」

仕方ない。あれをやるか。



「馬車を道の端に隠してどこ行くのかと思ったら……」

「なんだかワクワクします!」

「たまにはね」

俺達は今……隠密と隠蔽をフル活用して王城に忍び込んでいます。

「まぁこういう時はとりあえず1番偉いやつに会うのが手っ取り早いのさ」

要するに……正式な手続きとか踏んでないし敵対してる国が正面から入るのもやばいんで裏からってことです。

どの道聞きたい情報も多かったし脅すか洗脳するか……やることは非合法だからどうしようもない。



移動中

「前回の戦闘……大丈夫だったのか?」

「それは……戦いの最中? 戦いの終わり?」

「両方さ」

……。

「戦いという意味合いじゃギリギリだったな。シャルとケルロスが来なければ死んでたかも」

「そっか」

「戦いの終わりに関してはもう平気」

クイックはもうそれ以上何も聞いてくることはなかった。



「さて……そろそろだね」

「……2人はゴーンの遺体を探してくれないか? ここは俺一人でいくよ」

「……わかった」

さすがクイック……俺が何をしようとしてるのかわかってる。シャルには見せたくない光景だしな。



俺は話し声の聞こえる部屋の前に立って深呼吸をする。

緊張感はない……ただ上手くいかなかった時のことを考えると少しだるいから。

ガチャ。

「誰だ!」

中は大きな机に偉そうな貴族たちが立ちながら話し合いをしている。武装した兵士も5人ほど。

「侵入者を排除しろ!」

おいおい……こっちの話も聞かずに早速排除かよ。

俺に向かって槍を構える兵士達。

「手を後ろに向けろ……死ぬのが嫌なら跪け!」

ザシュ!

「は?」

兵士達の膝から下は俺の刀によって無くなっていた。

「あああぁぁぁぁ!」

「なんだこれはぁぁぁ!」

国を守る兵士なんだろ? 足切られた位で泣き叫ぶなよ。

「話し合いをしたいのだが……これじゃあうるさくてできないよな?」

俺は兵士達を指さして貴族たちに問う……しかし悲しいことに返事は無い。

……。

「じゃあ静かにさせるぞ」

グシャッ

泣き叫ぶ5人の兵士の首を全て刈り取りその死体を踏みつけて机に向かう。

「俺の名前はノーチェ・ミルキーウェイ。フィデース信栄帝国の盟主で……魔王だ」

その言葉を聞いた貴族たちの動揺が見て取れる。

バサバサ!

机にある書類を適当に退けて俺は座り込む。

「お前達の王は死んだ。兵士達も全員だ」

「ば! 馬鹿な! 13万人の兵士達だぞ! 理の王だぞ! こんな短い時間でそんな!」

少し偉そうな貴族が俺を指さし声を荒らげる。

「俺がここにいるってのが何よりの証拠だろ?」

「貴様の目的はなんだ……」

おっ……こっちの貴族は話が分かりそうだ。

「俺の目的? そうだな……一国の王を殺しておいて黙っておくのもあれだなって思って報告に……後は」

部屋の空気が変わる……謎の威圧で貴族達は汗が吹き出る。

「俺の国に攻め込んできたお前達への忠告だ。今回は兵士と王の命で許してやる……だがもし! ゼールリアン聖王国の者が攻め込んで来たら……この国は地図から消す」

……ちょっとやりすぎたかな。あっちのおっさんとか少し漏らしてるし。

「……わかり……ました。もう二度と貴方の国に兵を送らないと誓いましょう」

やっぱりこのメガネ君は優秀かも。

「……うん。それならいいよ」

俺は威圧を解いて机から降りた。

「あっ! そうだそうだ……気になってたことがあるんだ」

話が終わり安心していた貴族達がビクリと跳ねる。

「俺の国で作っていた銃なんだけど……人間の国で独占とかしてる?」

……。

静まり返る会議室……今こいつらは言葉を選んでいる。なんて答えれば怒りを買わずに済むだろうか? と……しかし俺としては正直な所を聞きたいんだ。

「嘘は言わなくていい……これは確認だ」

俺がそういうとメガネの男が口を開いた。

「銃に関しては……コード商会の上層部に話をつけて人間の国で独占しておりました……。恐らくフィデース信栄帝国と交渉を行っている商人は知らないと思われます」

そうか……やっぱりアランは知らなかったか。

「ん。わかったありがとう。今回の件で銃の輸出は辞めようと考えてるからよろしく」

「な!? それでは我が国の戦力が!」

奥にいた太っている貴族が喚き散らかす。

「バカやめろ!」

「そうだ! 次の王様は君がやったら?」

俺はメガネ君を指さしてにっこりと微笑む。

バンッ!

「黙って聞いていれば偉そうに! 魔王だなんだと名声に乗せられて偉そうにしている若者ではないか!」

「もう喋るな!」

メガネが慌てて止めるが愚か者は口を閉じない。

「大体! 王が本当に死んだかも定かでは無い! そんな状況で貴様なんぞに指図される筋合いは!」

スパッ

「えっ……」

ボトッ

俺を指していた指は腕と共に地面に落下した。

「あぁぁぁぁ! ……!? …….!!!??」

うるさい叫び声あげるのはわかってたから口は取らせて貰ったよ。

「……なんで俺がここまで舐められてるのか知らないけど、俺は魔王だぞ? その意味がわかってないのか? ……そして魔王と呼ばれる者の所有物に手を出しておいて国は滅亡させないでやると言ってるんだ……感謝こそされど怒鳴られる筋合いはない」

口が無くなり恨むよに俺を見つめる貴族に近付く。

「お前のような奴が国を腐らせるんだろうな。ということで腐る原因はさっさと殺すのが1番だ」

グシャッ!

あっ……血飛沫が……。汚いなぁ。

俺は手に着いた血をハンカチで拭い死体に放り投げた。

「さて……残りの話は明日以降に外交を任されてる俺の部下が詳しくしてくれるだろう。そうだ! 兵士の遺体はこっちで預かってる……回収したければ来るといい」

「それじゃあ俺はこの辺で……失礼するよ」

「消え……た?」



氷の結晶を辺りにばら撒き消えたように見せたのは正解だったな……いやぁ1度やってみたかったんだよね。どうやって消えた!? みたいなやつ。

「それで? ゴーンは見つかったかい?」

「……あぁ」

シャルが居ない……先に馬車へ戻したのか。

「……その顔だとあんまりいい状態だったとは言えないな」

クイックが静かに頷く。

「ゴーンの遺体は丁重に扱え……そしてシャルはしばらく休ませてやるんだ」

「わかった」



次の日

「人間の国で発行された新聞……まぁ及第点ってところか」

ゼールリアン聖王国が派遣した13万人の兵士は反逆の刃ノーチェ・ミルキーウェイによって殲滅……理の王バージェス・ロンドは戦死した。尚行方不明になっている勇者に着いてだが……それも同様に戦死したと思われている。

セナやゼロの反応を見る限り勇者が生きていると分かれば殺しにくる可能性も高い。こうやって戦死ってことにしておけば……2人から質問攻めはされるだろうけどシャルに危害が加えられることはない。

「……はぁ」

色々あった……。六王と戦ったり貴族達と話をしたり……ちょっとだけ疲れてしまった。

少しだけ……少しだけ……。



コンコン……コンコン

「あれ?」

返事がないな。

「ノーチェ?」

「開ければ?」

「そうだな」

ガチャ

「あ〜……」

ノーチェは机に突っ伏して眠っていた。

「ヨダレまで垂らして……こういうところは昔から変わんないんだから」

「……あぁ」

戦いでは結構無理をさせたしな……。

「今日の仕事はキャンセルしとこう」

「そうだね」

俺とクイックはノーチェに毛布を被せることにした。

「いつもいつも……負担ばっかりかけて悪いな」

前の戦いでも俺が少し遅れていたらと考えると恐ろしいな。

「……。1人で抱え込む癖は治る気配ないね」

「全くだ」

でもそれくらい俺たちのことを。

「いつもありがとうノーチェ」

優しく頭を撫でる。ノーチェの髪がパサりと揺れた。

たまにはいいよな……こうやってゆっくりするのだって。

「おやすみなさいノーチェ」

俺達は机にあった書類を回収してノーチェの部屋を後にした。

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