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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
聖王国編
103/261

102話 魔王対理の王

一人……また一人……。魔王領で市民を殺した時にも思ったが生き物を殺しても何も感じない。昔は生き残るため……いや今も生き残る為ではあるけどこんな何も感じないで敵を殺すことは出来なかったはずだ……何より相手は人間、今は違うが昔は同じ存在だった。殺される時の叫び声や泣き声……命乞いを聞いても全く動じない。今の俺は本当に……人間? なんだろうか?



「被害は?」

「目立った被害はございません。百鬼大隊は回復も終わり前線に向かっています」

数は多かったけど一人一人の練度は低いな……これじゃあ特段問題もなく……。

「お前が指揮官か……」

後ろ!?

ガシャン!

渾身の一撃……油断はしていない。探知系のスキルも使って索敵もしてた……。なのにこの距離で声をかけられるまで……しかも。

「こんなものか」

私の攻撃を片手で……。

「フィーさん!」

メドランガが巨大ハンマーを振り下ろす……しかしそのハンマーは謎の男が使っていない腕を軽く当てただけで崩れていった。

「馬鹿な……」

メドランガが壊れたハンマーを眺めているとその腹部に強い衝撃が走った。

「メドランガ!」

「よくも仲間を!」

1度距離を取らないと……。

バン!

これで……。

「あ?」

嘘……腹部への蹴り……しかも弱点をしっかりと狙ったはずなのに。

短剣は諦めた方がいい……今はこいつから。

「がっ……!?」



ドコンッ!

「なんの音だ?」

暗くてよく見えないけど土煙が舞ってる……。敵の攻撃か?

あっちはフィーが向かった方向だな……。



牙獣大隊が居たと思われる場所に着いた俺の目に写った光景はあまりにも酷い状況であった。

「何……が? 起こった」

獣達が血を流し倒れている……内臓が飛び出して潰されている。生き残っている者もいるが……ほとんどが。

その時だった……足元に赤い液体が流れていることに気がついた。

その液体の出処を探すためゆっくりとビチャ……ビチャと音を立てながら歩いていく。

「……フィー」

少しネバネバとした赤い液体を流し倒れ込む猫の獣人……パッと見ただけでも腕がなくなって耳もちぎれている……身体中の骨が折れているのか関節がありえない方向に向いている。

俺はフィーの生死を確かめるため首元に手を当てた。

「微かだけど脈はある」

一瞬の安堵……しかしそんな安心よりもこの惨劇を引き起こした奴への怒りが俺の心を染め上げる。

「回復……」

……これで命は繋がるはずだ。それよりも次は。

ガシャン!

「……見切ったか」

「……お前がやったのか?」

「? なんの事だ?」

顔は見えないが聞こえた声は笑っているような気がした。

「お前が……フィーを傷付けたのかって聞いてんだよ!」

力を込めて刀を振るう……相手の剣は弾かれて空を向いた。

「怖い目だな……これだけ殺気を向けられては名乗らなくても分かる。お前がノーチェ・ミルキーウェイだな」

一瞬で俺を見抜く観察眼……フィーを倒した実力。

「理の王か」

「……そうさ。俺は理の王……バージェス・ロンドだ」

弾いた剣を強く持ちバージェスが次の攻撃を放つ。



ガシャン……ガチャん! ……ギリギリ。

刃が激しく交わる音……火花が二人の周りを照らし出す。

「悪くない筋だが……甘いな」

ガシッ!

「どこが甘いって?」

バージェスの放った蹴りは俺の腕によって防がれていた。

「ちっ」

攻撃が通じなかったのがそれほどに悔しいのかバージェスの剣に力が入る。



力は強いが動きは雑だ……これなら。

「ここだ!」

「ぐっ……」

入った!

俺の蹴りはバージェスの腹部に直撃した。

昔の俺ならこんな蹴りなんてことない威力だけど今は違う……魔王になって……進化を繰り返し……強くなった俺の蹴りはショットガンのそれと同等だ。

「ぐ……ぅぅ」

「よく耐えたな……でも内臓は潰れて意識を保つのも辛いだろ」

腹を押えて呻き声をあげるバージェス……。

理の王と呼ばれるくらいだ……それにフィーを追い詰めた相手……この程度ではないと思うが。

バシュ!

俺の予測は当たっていた……しかしその予測を遥かに上回る速度での攻撃に俺の回避は一撃だけ攻撃を許してしまった。

視界が……。

右目をやられた……。

そう理解した瞬間回復を唱えるが呼吸すらさせて貰えないうちに次の攻撃が繰り出された。

さっき違う……速度も威力も。

バージェスの攻撃は先程の雑な動きから一転……洗練された美しい剣筋へと変わっていた。

「力を隠してたのか?」

「……この力を解放したのはお前で3人目だ」

そりゃどうもと強気に答えたいがそんな余裕はない……剣筋や速度が変わったのは厄介だけどそんなことよりも右目を持っていかれたのがでかい……。

右から来る攻撃に対して反応出来ない……いやギリギリで回避はしてるけど攻撃に移れない。

「こんなものか!」

恐らく俺とこいつの今の強さは互角……右目を持ってかれてるから俺は少しだけ下か。

このまま持久戦に持っていかれると厄介だな。

「ダークネス・ロンドン!」

広範囲の攻撃魔法で一気に蹴りをつける。

毒を纏った無数の刃を喰らえ!

パキパキ……パキパキパキパキパキパキ!

うっそ……全部切りやがった。

「こんな小細工で俺は殺せないぞ!」

全力だっての!

結局さっきと同じ状態になっちまった……。

ずっと武器を合わせてても埒が明かない……と言って魔法を使っても生半可な魔法じゃ時間稼ぎにすらならない。

研究部屋(マイワールド)とかのスキルはフィーを回復する時に魔力を使いすぎたからまだ使えない。

魔力消費の少ない混沌監獄(ユニオンプリズン)でこいつを閉じ込めたくても周りにいる仲間を巻き込む可能性がある。

時間が経過するほど相手に有利だ……。

「仕方ない……奥の手出すか」

体への負担が大きいからあんまりやりたくなかったんだけど。

極限漲溢(ルプトゥラ)!」

使用魔力を極限まで高める……そしてその魔力を体内で循環させて……。

「何をしている」

痺れを切らしたバージェスが突っ込んでくる。でもそんな速度じゃ押し負けるぜ!

「うっらぁ!!」

攻撃を仕掛けたバージェスは土煙を上げながらはるか後方へと飛ばされていた。

「はぁ……はぁ」

体内で循環させた魔力を足と腕に集めて一気に放出する……そうすることで一時的に圧倒的なパワーを生み出す。これなら魔力を使いすぎずそれでもって長い時間戦いを続けられる。

「とはいえ」

左足と右腕の筋肉が悲鳴を上げている……全てでは無いが筋組織がブチブチと音を立ててちぎれている。

俺がもっと強ければこんなことしなくてもいいんだけどな。

「さすがに強いな……正直舐めてたよ」

あの攻撃食らってまだ喋れんのかよ。

「そのまま慢心してていいんだぜ?」

「はは……俺だってそこまで馬鹿じゃないさ」

油断しなくなるってのは面倒だな……もっと早く蹴りをつけたかったんだけど無理そうだ。

「土流八戒!」

不意打ちを狙ったんだけど……上手くいかないな。

「烈風!」

風斬魔法か……威力も高いな。

「ほら! ほら! 避けてるばかりじゃ戦いは終わらないぞ!」

「そんなことわかってるさ」

「水龍!」

物量で押し切る……それに斬撃で崩れても。

1発……2発……3発……4発……5発!

「流れ雪!」

「水を凍らせたのか!」

今更遅い!

「このまま潰されろ!」

大量の氷……それに圧倒的なサイズ。これをぶつければさすがに無傷では居られないはずだ。

バコンッ! ミシミシ……ミシミシミシミシ。

崩れた氷が舞って幻想的だ……ってそんなこと考えてる余裕ねぇっての。

見た感じでは直撃したけど……こんなんで死ぬとは思ってない。

ガラガラ……。ドンッ!

「あ〜……これはやばかったな。咄嗟に溶かしてなければ死んでたかも」

溶岩魔法まで使えたか……。

「相性が悪かったな……。とはいえよくここまで戦ったさ」

剣を構えてゆっくりとバージェスが向かってくる。

「そりゃどうも……」

「魔力切れで動けないのだろう……あれだけ連発したんだ無理もない」

「ははは」

「もう十分だ……元々お前の国は滅ぼして残骸にしようと思っていたが……想定よりも楽しませてもらった礼だ。俺の傀儡国として活用してやろう。まぁ……お前は殺すが」

そう言ってバージェスは俺の首筋に剣を向けた。

「終わりだ」

「終わりか……」

俺は肩を揺らしながら笑いを一生懸命に堪える。

「? 何がおかしい」

「いや……見えもしない未来の話をするから面白くてな」

「……なんだと?」

俺はバージェスの剣を掴み顔を上げて真っ直ぐ目を見る。

「……ここまでよく戦ったな。褒めてやるよ……。お前はこの魔王! 反逆の刃! ノーチェ・ミルキーウェイと戦ったんだ。その勇士は忘れるまで忘れないさ」

何を言っているのか全く理解出来ていないバージェスをそのまま置き去り俺は魔法を発動した。

「なっ!」

地面が揺れる……ピキピキとヒビが入り足元に大きな亀裂が見える。

「さぁ……最終ラウンドだ。理の王!」

俺の声は暗い空に響いて消えていった。


現在のステータス

ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】

深淵蟒蛇Lv5

所持アイテム星紅刀

《耐性》

痛覚耐性Lv5、物理攻撃耐性Lv9、精神異常無効Lv8、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8

《スキル》

支配者、知り尽くす者、諦める者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)極限漲溢(ルプトゥラ)魔法無効(アンチエリア)

《魔法》

火炎魔法Lv8、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv2、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破壊魔法Lv8、幻影魔法Lv9、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10

《???》

強欲、傲慢

《資格》

管理者-導く者

《称号》

神に出会った者/神を救った者


ケルロス・ミルキーウェイ

赫々白狼Lv5

《耐性》

痛覚無効Lv6、状態異常耐性Lv9、物理攻撃無効Lv3、魔法攻撃無効Lv9

《スキル》

信頼する者、不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)

《魔法》

風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv8、創造魔法Lv6、光魔法Lv10、神聖魔法Lv8

《???》

嫉妬


クイック・ミルキーウェイ

冥紅土竜Lv4

《耐性》

物理攻撃無効Lv5、精神異常耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv3

《スキル》

吸収Lv6、放出Lv7

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv2、風斬魔法Lv8、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv9

《???》

喰らい尽くす者Lv9

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