迫られる選択
看護師への顔面に向かった右足のクリーンヒットから数日が経ち、家族やチームメイト・友人の見舞いがあった。
見舞いは嬉しかったが、チームメイトや友人の見舞いは様々だった。
「早く治してまた一緒に練習しようぜ」「無理はしないでいいから」「高校はどうするの?」「今日も可愛いね」「マネージャーやってよ」「学校早くまた来てね」
ん…?
何か途中に変なの混じってた様な…
ただボーっと過ぎていく時間の中で、一つ変化を感じていた。
それは一部のチームメイトの視線の変化だ。
今までは、限られたレギュラーという枠を争うライバルという視線から、好奇なものになっていたことだ。
そう、忘れられていたかもしれないが、真白は美少女なのである。
日焼けがよく似合う褐色のボーイッシュ美少女だ。
本来、マネージャーをしていたならば、何人もの兵どもが夢の跡となっていただろう。
つまりは真白は神に二物を与えられた、選ばれし者であったということだ。
普段はレギュラーになるのに鎬を削り、男勝りな性格だった為、変な虫を寄せ付けない雰囲気であった。
しかし骨折を経験して、しおらしい一面を見せてしまった為に、こういった視線に晒されるようにもなった。
そういったものに鈍感であった真白でさえ、薄々感じ取ってしまっていた。
正直なところ、うっせぇわという感情が芽生えていた。
元々が男勝りの性格の真白だったのだ。今更女子らしく生きる人生は考えられなかった。
マネージャーになったら、こういう感じになるのかな…
でも何処に行っても、この視線は変わらないんだろうな
入院してようやく、色々な選択肢の中を模索し始めていた。
男子に混ざって甲子園を目指す、男子硬式野球部でマネージャーに徹する、女子ソフトボール部に所属する、女子硬式野球部で日本一を目指す。
しかし、色んな選択肢がある中で、真白は男子とは対等でありたい自分がいることに気付いた。
そうすると自ずから答えは決まっていた。
数時間、色々と考えてはいたが。
バットを振りたい。
やはり今はただそれだけだった。
美少女の伏線回収終了しました。