ただの少女
パワプロで怪我や手術失敗したからと言って、サクセスやり直しダメ絶対
ボキッ
右足首があってはならない方角に曲がっているのを見ながら、真白は不思議な感覚に陥っていた。
痛みはなかった。
むしろ身体がポカポカして変な気分だった。
「大丈夫か真白!!」「真白!!」
監督やチームメイトが担架を持って駆け寄ってきた。
何人かが力を合わせて真白を持ち上げ、担架に乗せる。
自分以外の世界が勝手に動いていて、自分だけが世界から取り残されているような感覚に包まれたまま、救急車に乗せられ病院に搬送された。
応急処置と検査を受けた後、医者から話があった。
医者「複雑骨折です。全治2,3カ月くらいだと思われます。縦に綺麗に骨折〜」
後の部分は真白には聞こえなかった。
それまでは思考が追いついていない状態で、ようやく医者の言葉と共に思考が回り始めていた。
骨折…?全治2カ月?
何で?
私だけ?
何で??
真白は沸々と込み上げてくる怒りを、コブシを握りしめて必死に押し殺していた。
横にいた監督はその様子に気付いていたが、何も言えなかった。
医者からの話が終わり、ひとまずは入院することになり、真白は病室のベッドで横になった。
もう夜になってしまっていたので、監督は帰っていった。
監督曰く、試合は5-1で負けてしまったらしい。
中学最後の夏は終わってしまった。
もし勝っていたとしても、どちらにしろ試合は骨折のせいで出られなかっただろうが、もう夏が終わったという衝撃でまた思考が置いてけぼりとなった。
自分の中学の最後はこんなものなのか。
情け無さでつい涙が出てきてしまった。
布団の中にくるまって、押し殺していた感情を解放する。
数時間後、泣き止んで冷静になって、今度は骨折の部位の痛みがジンジンと分かるようになって、悶え苦しむこととなった。
後日、医者からまた話があり、複雑骨折の為に、手術が必要とのことだった。
全身麻酔でボルトを入れて手術をし、骨を矯正していくことが理由だという。
また一方で、監督からは、もし骨折がある程度治って学校に復帰したら、野球クラブでマネージャーをしてみないかと提案があった。
医者からの宣告があったときの、真白の様子を見ていた監督なりの気遣いだったのであろう。
真白「…少し考えさせてもらってもいいですか?」
即答が出来ない状態だった為、返答は待ってもらった。
1人になった病室で真白は思い悩んでいた。
マネージャー…
選手としてではもうチームに関われない。
選手として、レギュラーとして、チームに貢献していた真白にとって、自分の存在価値が折られたような気がした。
それは男子の中で、女子でありながらもレギュラーという選ばれた存在であった真白にとって、信じられない現実だったからだ。
真白は特別な才能を持つ少女から一転して、その才能をもがれた、ただの1人の少女となった。
もしかしてタイトル間違えた疑惑が浮上。