素振り編
長文始めようと思います
ブンッ!
バットを構え、脇を締め、身体の力は抜き、足を踏み込み、体重移動から腰の回転までを、全くの無駄のない動きで、一振りに込める。
その彼女の動きは一つの芸術にさえ思える。
夜の満天の星空が見守る中、1人の少女が素振りをしていた。
少し日焼けした褐色、ショートカットのボーイッシュな子で、毎日の鍛錬は欠かさない真面目な子だ。
女子が野球をすること、それ自体、筋肉量や運動能力などで男女差が発生し、大きなハンディキャップを負っていること自体は痛いほどわかってる。
走塁はもちろんのこと、守備範囲が広く足の早さや肩の力が求められる外野や、俊敏な反応かつ肩の力が求められる内野の守備では男子にどうしても劣ってしまう。
だからこそ、彼女は打撃に特化して練習をしていた。
打つ瞬間から打った後の振り抜きまで、無駄のない動きで終わらせられれば、ヒッティングに限って言えば、男女の差を埋められる気がした。
打席に入った時だけは、1人のバッターとして認められる。
そんな思いを持って負けず嫌いな彼女は小さい頃からバットを握り続けてきた。
真白 珠
球技をするためだけに生まれてきたような名前を持った中学三年生の女の子。
ブンッ!
ブンッ!
ブンッ!
その一連の動作は、一度決まった型のように、ブレることなく精密な機械の様に、動いている。
しかし、自分の動きが正しいのかどうかの自問自答は常に忘れない。
バットはどこまで短く持つべきか、バットは肩に置いて水平に振るだけにして、なるべくヒッティングまでの時間をなくすべきか、たった一振りのことだけなのに、色々な創意工夫は尽きない。
そこまで野球と真摯に向き合ってる彼女だからこそ、輝いて見える芸術作品の領域にもなり得るのだろう。
真白「フゥ…」
1日のノルマを終えた彼女から、思わず吐息が漏れてしまう。
こんなガチめな雰囲気でこれから先持つのかお父さん心配です。