気付いてください
2014年2月6日 ブログ初投稿
2022年1月18日 修正
男…友達の肝試しに付き合わされた。極度の怖がりらしい。
女…仕事で来た。いろいろ怖いけど、大丈夫らしい。
どこからか音が聞こえる。
男「うわあぁ? なんか! どっからかっ、なんか音が……!」
女「風が通って反響したんじゃないですか?」
女がさっさと歩く。
ヒールが響く。
男「わっ! わっ? 音が! ほら! またカツカツって!」
女「あたしの足音です。ほんと怖がりなんですね」
男「自慢じゃないが、ホラーと幽霊と妖怪と怪談とホラーは大嫌いだ」
女「ホラー二回言いましたよ?」
男「嘘? 幽霊と怪談と……えっと、オレなんて言ってたっけ?」
女「最初から違います。『ホラーと幽霊と妖怪と怪談とホラー』って言ってました」
男「そんなにちゃんと自分で言ったこと憶えてないよ……」
女「ついさっき自分で言ったことですけど?」
男「とにかく! 嫌いだし、苦手なんだよ……」
女「そんなに怖がりなのに、なんでここに来たんですか?」
男「み、みんなが行くっつぅから…し、仕方なく……」
女「そういうのが良くなかったんですよ」
男「だ、だよなぁ……自分でもそう思う。オレ、意思が弱くって……」
女「だいぶ強いとも思いますよ」
男「え? どういう意味?」
女「いや、弱いから……なのかな?」
男「だから、どういう意味?」
女「気付いてないんですか?」
男「どういう意味なんだよ? だから!」
女「感じませんか?」
男「え? ま、まさか……いる? いるの? なんかいるの?」
大慌てで周りを見回す男。
女は前だけを見る。
女「ええ、います」
男「マジかぁ? どこ? どこに?」
女「目の前に」
女の視線を受け、彼女の後ろに隠れようとする。
男「オ、オレの後ろってこと?」
女「まあ、あたしも今は、そうなりますね」
男「ちょっ! やめて! マジそういうのやめて! 背後に憑かないでぇ!」
女「あたしはどうなるんです?」
男「あ……ご、ごめん。きみのこと、なんか盾みたいにしちゃって……」
女「いいえ」
男「きみ、強いね……怖くないみたいだし」
女「怖いですよ、いろいろ」
男「いろいろ? 平気そうに見えるけど」
女「仕事ですから」
男「仕事? 仕事で来たの? ……そういえば、きみ誰?」
女「今更ですね」
男「えっ……ほんときみ誰? みんなの中にいた? 憶えてないけど……」
女「憶えるも何も、いませんでしたもん」
男「……えっ? 嘘、も、も、もしかしてきみ、……ゆう……」
女「違います」
男「あぁあ良かった」
女「あたしは良くないです」
男「あ、そ、そうだよね……間違えちゃったし……ごめん」
女「(忙しなく動き回る男を見ながら)いや、そこじゃないんだけどなぁ……」
男「でも、じゃあ、きみの方こそ、なんでここに来たの?」
女「仕事です」
男「え? そうなの?」
女「さっき言いましたよね?」
男「言ったっけ?」
女「言いました」
男「どんな仕事?」
女「こういう仕事です」
男「え? 廃屋に来て、話をするのが仕事ってこと?」
女「話をするっていうか……まあ、近いけど」
男「へぇ、暇なんだ」
女「あんたに言われたくねぇわ!」
男「ごめんごめんごめん!」
女「ねぇ、気付かないんですか?」
男「ちょ、ちょっと……さっきから何? まだなんかいんの? ねぇ、オレ怖がりなんだって! マジでやめてくださいって!」
追い払うような仕草をしながら、あちこちうろうろし出す男。
男「なんか視線を感じる! ねぇ! (女から視線を外さないで)視線感じない?」
女「ものすごく感じます」
男「だよね? だよね? いるよね? これいるよね?」
女「さっきからいるって言ってるじゃないですか」
男「嘘? 言った? そんなハッキリ言った?」
女「二分くらい前にハッキリ言いました」
男「嘘? 憶えてない」
女「これもさっき言いましたよ?」
男「二分も前のこと憶えていないよ」
女「だから忘れちゃったんですかね」
男「何を?」
女「死んだこと」
男「……へ?」
女「あたし、見えるんです」
男「見えるって、…何が?」
女「あなたが」
男「それは見えるだろうね。オレも見えるよ? 目があるから」
女「だからそういうことじゃなくって、見えるんです。ほんとに気付いていないんですか?」
男「何に? ……あっ、え……? そういうこと? えっ? 嘘? いるの? えっオレの後ろ?」
女「堂々巡りだ」
男「ハッキリそう言ってよ!」
女「ハッキリ言って、ショックを受けませんか?」
男「そんなにいっぱいいるってことなのかぁ……いやっ、なんかきみがいると大丈夫な気がする!」
女「ここまで鈍感だとあと大丈夫かな……」
男「言ってくれ!」
女「じゃあ、言いますね」
男「(目を瞑って)うん!」
女「……目を瞑る必要あります?」
男「見えたら怖いから」
女「意味ないと思いますよ?」
男「気持ちの問題!」
女「そこだけは変に強いんだぁ……」
男「(目を瞑って)なんか言った?」
女「あなたが幽霊なんです」
男「オレが幽霊…………(目を開け)は?」
女「気付いてください。あなたが幽霊です」
男『え………えぇ? 嘘ぉー!』
~おわり~
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