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第7話 ゴブリン・ロード

 集落に着いた。

 ほぼ全ての建物に火がついているため、暗い森の中で集落だけが昼間のような明るさになっているが、ゴブリン・ロードの建物だけは無傷である。


 基本的にボスモンスターは自分が攻撃されない限り手下に全てを任せ、自分自身はふんぞり返っているものが多い。

 たまにそうでないものもいるが、そうした行動をするモンスターはダンジョンのボス部屋で手下を率いて戦う個体以外は数の利を理解する高い知性を持っており、ユニーク個体とされるものがほとんどである。

 基本的に野生の魔物はダンジョンで生まれた個体が外に放たれ、自然に定着しているものがほとんどであるが、ダンジョンを離れたことで恩恵を受けられなくなるためか、能力や知性はダンジョンにいるもの程ではない。

 とはいえ、ゴブリン・ナイトですら初心者向けダンジョンでは中層階序盤のボスモンスターであり、ロードやキングに至っては中級ダンジョンでも深層中盤のボスとして出現するため、油断は禁物である。


 ゴブリン・ロードの建物にファイアアローを放つ。

 建物内で戦うよりアサヒの援護が期待できる屋外の方がこちらにとって有利だ。

 近くにいる際には攻撃を控えるように伝えているが、初撃はアサヒに譲ることにしている。


 ファイアアローが着弾し、建物の入り口が吹っ飛んだ。

 中から先ほどまでのゴブリンより低く大きい鳴き声が響く。

 ゴブリン・ロードが怒り狂っている。

 最上級に至った魔物はいかに元がひ弱なゴブリンであろうと上級職がいなければ騎士団を1匹で滅ぼしうる怪物である。

 肌で感じる圧力は先程相対したゴブリン・ナイト30匹の比ではない。 


 炎に照らされながら、ゆっくりとゴブリン・ロードが出てきた。

 ゴブリン・ロードの防御ステータスはA。炎の暑さなど微塵も感じている様子はない。


「ゴギギ!!ゴギャ?...ゴギャギャギャ!!!」


 外の様子を見て自身の群れが壊滅させられたのを理解したのだろう。

 ゴブリン・ロードの怒りが一層深まったのを感じる。

 比例してゴブリン・ロードから感じる圧力が強まった。

 威圧スキルを使ったのだろう、肌に刺さるような殺気を感じる。

 一般兵であればこれだけで卒倒してもおかしくない。

 こちらも体内の魔力を放って威圧し返す。

 ゴブリン・ロードの動きが一瞬止まった。


 その瞬間、アサヒの放った矢がゴブリン・ロードの眉間に突き刺さる。

 ゴブリン・ロードは糸の切れた人形のように倒れた。


 ...は?一撃で倒した、のか?


----------------------------------------


「お疲れ様です!」


「あ、ああ...。倒したのか?」


「そりゃまあ眉間に矢が刺さりましたし。生き物なら死ぬでしょう」


 当たり前のように言っているが、ゴブリン・ロードは頭に矢が一本刺さったところで死ぬような相手ではない。

 不意を突いて急所を射ったとはいえ、普通なら体力の半分も削れれば御の字だろう。


「失礼だが...筋力ステータスはいくつだ?それともそういうスキルなのか?」


 ステータスやスキルを相手に聞く行為は行儀の良い行いではない。

 特に戦闘を生業にしている我々のような人間の間ではタブーと言ってもいい。

 だが、ゴブリン・ロードを一撃で屠れるような能力について私は聞いたことがなかった。


「ステータス?ステータスがあるのか!?」


「あるのかって...そりゃあるだろう。」


 ああ、彼は記憶喪失だったか。なら知らなくても無理はない。


「そういえば記憶喪失だったな。

 表示しようと念じながら『ステータス』と呟けば見れるだろう?」


「あ、えーっと...。いや、それよりステータスだ!『ステータス』!

 あれ?出ないな...。『ステータス』!『ステータス』!!...出ない」


 ふむ...出ないということはないだろう。

 ステータスを知られたくなくて出ないフリをしているのだろうな。

 まあ、基本的に他人にステータスを知らせるなんてよっぽど信用していない限りはないことだ。

 命を預ける冒険者パーティでも、ステータスについては必要最低限しか伝えないことも多いと聞く。


「ふむ、まあ無理に教えろと言っているわけではない。気にするな」


「そういうわけじゃないんですけど...『ステータス』!...ダメだ、出ないな」


 ...いや、嘘を言っているわけでもなさそうだな。本当に出ないのか?

 もしかしたらステータスを出そうという感覚自体が分からなくなっているのかもしれない。


「もし本当に出ないのなら、神殿でステータスカードを発行してもらうと良い」


 ステータスカードは魔力を吸って自動的にステータスをカードに写してくれるもので、ギルドカードとして利用されている他、貴族の間ではまだ自力でステータスを出せない子供のための能力の確認の用途で利用されることもある。


「おぉ...神殿...」


「発行には身分証が必要だ。あるか?」


「あー...ないですね...気付いたら服以外何も持ってなくて...」


「であれば私が身元保証人になろう。どうだ?」


「是非お願いします!!!」


 ステータス一つで大袈裟なやつだ。


「では、領都まで案内しよう。同行してくれるな?」


 神殿に行けばゴブリン・ロードを一撃で屠った能力についてわかるだろう。

 私は有無を言わせずアサヒを連行することにした。


----------------------------------------

ゴブリン・ロード

職業:統率者

ステータス:

 筋力:B

 防御:A

 魔力:E

 知性:D

スキル:

 威圧

 剛力

 統率(職業スキル)

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