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第3話 拠点と異世界バトル

 朝。意外とぐっすり眠れた自分の神経の太さに感謝した。

 木の上で寝たので死ぬほど体が痛いが、贅沢は言っていられない。

 今日の活動方針を考える。


 まずは拠点。それから火を起こして水を飲みたい。

 川の水はそのままでは腹を壊す可能性ので、煮沸する必要がある。


 拠点の場所を決める上で大事な要素は3つ。

 水源から近いこと、火が起こせること、魔物に見つかりにくいことだ。


 まず河原。ここは論外だ。

 川の増水や魔物に襲われる危険がある。


 次に木の上。

 見つかりにくく水源から近いが、火が起こせない。


 洞窟があれば有力候補だが、それらしいものはないし、別の生き物が住み着いていたら危ない。


 悩みながら辺りを見回していたら、根元に空洞がある木を見つけた。

 辺りを警戒しながら木を降りて確認したが、入り口は俺の胸元くらいの高さで少し小さいが、

 横になれるだけの広さとある程度の奥行きがある。

 それに秘密基地っぽくてなんかいい。


 拠点の場所が決まったので早速設備を考える。

 入り口はそこら辺に落ちてる枝で偽装すればなんとかなるだろう。

 ベッドは虫対策で地面から浮かしたいからツタで吊るすとして、火は外に。

 いいんじゃないだろうか...いいよね?


 よし、拠点も決まったことだし火をつけよう、と思ったが、火を起こす方法がわからない。

 なんか弓のツルを使ってギコギコすれば起こせると思っていたけど、

 火が出るような乾燥した木なんてねぇよ...。夏だし。


 ...待て、今こそ魔法の力に目覚める時なのでは?

 追い詰められた時に真の力に目覚める的な...あると思います。




 そう思って10分ほど火を出そうとしたんですが、まあ無理でしたね。

 多分火の属性?みたいなのがないんでしょうね。

 火ってそんなにレア適正じゃないもんね。

 多分なんかもっとレアな属性が使える的な、アレなんだと思う。


 儚い気持ちでふっ、と木を見上げたら、芋虫がいた。

 ...腹減ったなぁ...これ、食えたりしないかな...。


----------------------------------------


 火は一旦諦めて、飲める水を得る方法を考えた。

 川の近くに穴を掘って濁りが収まるまで放置し、その上澄みを飲むというものだ。

 火を使わなくてもこれなら飲めるらしい。サバイバルの専門家が言ってたから間違いない。

 よくよく考えたら水を熱するための入れ物とかないし。


 そう思い川の近くで穴を掘っていた時、争うようなの声が聞こえてきた。

 急いで木の上に避難し、辺りを窺うとゴブリンの集団が豚の顔を持つ人型の魔物と戦っている。

 オーク、なのか?

 改めてファンタジー世界に来たんだと感じる。

 オークが1匹なのに対しゴブリンは5匹の群れで、2匹が棍棒、1匹が槍、1匹が剣、あとの1匹は杖のようなものを持っている。

 ゴブリンの大きさは120cm程度だが、対するオークは2m。

 大柄な大人と子供5人が向き合っているような絵面だ。

 5対1ではあるが、オークに分があるように思う。


 杖持ちのゴブリンが何かを叫ぶと、2匹の棍棒持ちのゴブリンがオークに向かって走る。

 杖持ちのゴブリンが指示しているようだ。

 単体だと全く知能がなさそうに思えたが、2匹のゴブリンは連携するように走り、フェイントを交えてオークの攻撃を避けて足に打撃を入れる。

 俺がやられたら骨が折れそうな勢いがあったが、オークは厚い脂肪の影響か、打撃が全く効いていないようだ。

 片方のゴブリンが棍棒で殴った反動でノックバックしているところで頭を掴まれ、そのまま持ち上げられて宙ぶらりんにされる。


 「グギギ!ギャッ」


 掴まれたゴブリンは必死に暴れていたが、オークは意に介する様子もなくゴブリンの頭を握り潰した。

 暴れていたゴブリンの四肢がだらんとぶら下がる。

 その間ももう一匹のゴブリンはオークに棍棒を叩きつけていたが、オークの方はダメージを受けた様子もなく攻撃していたゴブリンを蹴り飛ばす。

 ダンッ、とタイヤをハンマーで殴ったような強烈な音がして、ゴブリンが仲間の元に吹っ飛ぶ。

 蹴られたゴブリンの腹は大きく凹んでおり、そのままビクビクと痙攣して絶命した。


 オークが残りのゴブリンに向かって歩き出したところで大勢は決したかに思われたが、

 ゴブリンの持っていた杖が光ったと思うと拳大の火球が3つほどオークに向かって飛んで行った。


 おお!魔法だ!と思ったのも束の間、オークが火球に向かって腕を振るい、火球とぶつかった瞬間に爆発が起きた。

 爆発の余波で熱の篭った突風がこちらまで飛んでくる。

 これはさすがにオークでも耐えられないのではないかと思う爆発だった。


 爆発の煙が晴れたが、予想に反してオークは生きていた。

 流石に無傷とはいかず、直撃した腕が一部炭化しており、指も何本かなくなっている。

 その顔は憤怒で歪んでいた。

 恐らくゴブリン側は棍棒ゴブリンが時間を稼いでいる間に魔法を準備して倒そうという作戦だったのだろうが、アテが外れたゴブリンたちの顔は驚愕と恐怖に染まっている。。


 オークが残りのゴブリンに向かって走り出すと、ゴブリンたちは我先にと逃げ出した。

 オークもそれを追って走っていき、後には焼け焦げた木々だけが残された。


 それからしばらく様子を窺っていたが、オークが戻ってくる様子はなかったので、戦闘のあった辺りを確認しにいった。

 魔法による炎は通常の火より強いようで、戦闘から既に30分くらいは経ったはずだが、木の大部分を炭化させて尚、火は燻り続けている。

 ゴブリンの死体は爆風によって吹き飛ばされたのかどこにもない。

 ファンタジー世界における初めてのまともな戦闘を目にして、俺の心は興奮と恐怖がごちゃ混ぜになっていた。

 オークはもちろん、あのゴブリンの群れですら正面から戦おうとすれば俺に勝ち目はないだろう。


 絶対に敵に先に見つかるのだけは避けなければ。

 不用意に歩き回って鉢合わせになれば詰みだ。

 見つからないような立ち回りをしながら、この森を抜ける方法を探すか?

 ダメだ、森で遭難したら不用意に歩き回らない方がいい。

 そもそもこの近くにゴブリンの群れがあるなら、オークはこの辺に滅多にいないんじゃないだろうか。

 そうじゃなければこの森でゴブリンが生き残っているのは不自然だ。

 当面は森に慣れるためにこの近くで過ごすべきだ。

 足の短いゴブリン相手ならなんとか逃げ切れそうな気がするが、今の状態でオークの群れに遭遇したら確実に助からない。


 ...何はともあれ、今は火を手に入れた喜びを素直に感じることにしよう。

戦闘描写って難しいなあ、と思いました。

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