第20話 天使会議 3
バーベキューコンロの場所にきた。
みんなこちらを見ている。
「佐藤 朝日、27歳です。この世界のことについてあまりよくわかってませんが、精一杯頑張ろうと思っています。よろしくお願いします。」
自己紹介ってこんな感じでいいんだろうか。
そう思っていると、ノクティスさんがパチパチと拍手をして、他の人たちもそれに続く。
よかった。これで大丈夫だったか。
「...よろしく...アサヒちゃん...で...いい...?」
「あ、はい。大丈夫です。ノクティスさんですよね。よろしくお願いします」
「今回はノクティスが新人担当だから、詳しいことはノクティスに聞いてね。
じゃあ、始めましょうか」
そう言いながら既にソルスさんは肉を頬張っており、グイッとビールを飲む。
「またですのソルスさん!まだ乾杯してないのに!」
「はいはい、ごめんなさいね。じゃあ乾杯の音頭は幹事のノクティスからお願いしようかしら」
「全く...」
「...承った...。1ヶ月...ぶり...に...皆...と...会えて...嬉しい。積もる話...も...ある...だろうから...今日...も...楽しく...飲もう。ソルス...は...アルハラ...厳禁。じゃあ...乾杯。」
ノクティスさんの乾杯を合図に、バーベキューが始まった。
どうすればいいのかわからないが、食べていいんだろうか。
そう戸惑っていたら、ノクティスさんが銀色の缶を渡してくれた。
「ビール...で...よかった?
天使会議...は...無礼講。畏まらず...に...食べて...いい。」
あ、この人いい人だ。
「ありがとうございます」
よく冷えた缶ビールを受け取って缶を開ける。
プシュッといい音がして、泡が少し出てきた。
「ビール...は...この...世界...にも...ある...けど...あんまり...美味しく...ない。
月1...の...楽しみ。」
そういえば今日ギルドで見かけたけど飲めなかったからなぁ。
そう思いながらビールをグイッと飲む。
「これはノクティスさんの能力なんですか?」
「そう...。...夢...の...世界...を...作り出す...能力。
あと...は...夜...に...なると...色々できる...。
けど...寝るの...が....早い...から...あんまり...使えない」
おじさんは体力がないからすぐ寝がちである。
俺も25を過ぎてから急に体力がなくなって徹夜が辛くなったのでちょっとわかる。
ノクティスさんが1本目の缶を飲み終わって2本目のビールをダンボールから取り出した。
「前の世界では何をしてたんですか?
あ、これ聞いて大丈夫でしょうか?」
「...大丈夫。
...土木建設員。チーフ...だった。これ...名刺」
まさかのガテン系である。ギャップがすごい。
にしても、なんで名刺持ってるんだろう...?
「あ、これはご丁寧にどうも。俺も渡したいんですが、名刺がないんですよね」
「...いい。これも...今作った。
覚えやすいように」
なるほど。
名刺を確認すると、○○建設 主任 田中 良太郎と書いてある。
「田中さんですか。よろしくお願いします。
田中さんはどうやってこの世界に来たんですか?」
ノクティスさんがビールを煽る。
ハイペースである。2本目を空けて3本目を取り出した。
顔が赤い。なんだかニコニコしている。
「ノクティス...ね...。
現場で...足場から...落ちて...気付いたら...目の前に...神様が...。
...この喋り方...めんどいな...。アサヒ君はどうだったの?」
あ、なんか口調変わった。田中さん酔ってる?
「なんか穴から落ちて、気付いたら森にいましたね」
「あーなるほどね、そっちタイプかぁ。
や、人生生きてたら色々あると思ってたけど、まさか自分が異世界に来るとは思わなかったよね」
そう言って田中さん...ノクティスさんがタハハと笑う。
キャラ違い過ぎません?
「いや、そうですよね。
最初はどっかに拉致されたのかなーとか思いましたもん。
ノクティスさんは今何してるんですか?」
「なんか巫女みたいなことやってるよ。
最初は33のオッサンが巫女か...って思ってたんだけど、やってみると楽しくて。
アサヒ君もせっかく可愛くなったんだから、そういうのやってみてもいいんじゃない?紹介しようか?」
「や、自分はそういうのはちょっとですね...」
「まぁまだ若いもんね!これからこれから!
多分そのうちわかるようになると思うよ!」
そう言ってノクティスさんが大きな声で笑う。
喋り方が完全に建設会社のおじさんだ...。
と、思っていたら急に赤髪の少女が立ち上がって叫んだ。
「1番!矢野裕司!火吹き芸やります!!」
さっきまでのじゃ口調だった人である。イグニスフィアさんだったかな?
周りはゲラゲラ笑いながらいいぞー!と野次を飛ばしている。
ノクティスさんも一緒に野次を飛ばしていたが、ふとこちらを見てきた。
「みんなね、元の世界では色々あったんだよ。
でもこっちにきてからはほら、こんな風に楽しく過ごせてる。
なんか魔王とかいるみたいなんだけどね、皆こういう空間を大切にしたいなと思ってるんだよ」
そう言って田中さんがとても嬉しそうな顔で笑う。
その笑顔になんだか感化されてしまい、俺も野次を飛ばす。
「お、いいねぇ。そうこなくちゃ!」
元の世界でもノクティスさんみたいな人が上司だったら幸せだったのかもしれない。
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そのあとは矢野さんに対抗して佐野さん(青色の髪の間延びした喋り方をする少女で、アクィというらしい)が水芸をしたり、矢野さんの炎が木に燃え移って佐野さんが慌てて消化したりと、楽しい時間を過ごした。
「おっと、そろそろ時間ですね」
一番飲んでいるにも関わらず全く酔った様子がないソルスさんが呟いた。
皆その言葉を聞いて酔いが覚めたのか、さっきまで普通に話していたのに口調が元に戻った。
「...次...の...幹事...は...スフィ」
「ああ、そういえば次はわしじゃったな。よかろう。後程ノクティスに文を送るでな。よろしく頼むのじゃ」
「...承った。アサヒちゃん...私...が...世話係...だから...
何か...あったら...レイヴァン辺境伯領...の...領都...にある...夜...の...神殿...に...来て」
「わかりました。ノクティスさんの名前を出せば大丈夫でしょうか」
「...そう。じゃあ...時間...だから」
次の瞬間に目が覚めた。
軽く酔っていたが、酔いは残っていない。
夢だったのか?と思いつつ外に出て空を見た。
クコの町の上空には雲で大きく「ようこそ異世界へ^_^ よろしくネ ^_^b」と書かれていた。




