第17話 冒険者ギルドと散歩の終わり
冒険者ギルドに来た。
武器屋の奥さんが言う通り、門の方に歩いていったらあった。
看板は鳥の羽が描かれていた。
ゲルハルトさんに聞いたところ、どの国にも属していない自由の象徴ということらしい。
それにしても結構大きな建物である。3階建てで他の建物の2倍くらいの横幅がある。
ドアは残念ながら西部劇に出てくるバーの入り口みたいなアレではなく、普通に観音開きだ。
「なんかちょっと緊張してきました...」
「気負うことはねぇ。どうせアサヒが行っても依頼人にしか見えないだろうさ」
「まあ...確かに」
別に冒険者になるために来たわけではないし、この見た目に絡むような人間もそうそういないだろう。
ゲルハルトさんも護衛に見えてそうだし、せいぜい以来にきた貴族令嬢とか、そんな感じの見られ方をするだけだ。
俺は意を決してドアを開けた。
冒険者ギルドの内装は予想とは違い、異世界の酒場っぽい雰囲気だ。
依頼はどこだろう、と思ったところでウェイトレスさんに話しかけられた。
「いらっしゃいませ。お食事ですか?」
「すみません、依頼を見たいんですが」
「あら、冒険者の方ですか?」
「いえ、そういうわけではないんですが。見学みたいな感じです。
あとで食事も頂きます」
結構歩いて腹が減ったので、ここらで少し腹ごしらえをしたい。
「あら、そうなの。依頼は2階にの掲示板に貼り出されてるから好きに見てね。
申請は近くにある受付でできるから、何かあったらそっちで依頼を出せるわよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
どうやら1階が酒場で2階がギルドになっているらしい。
とりあえず2階に上がってみることにした。
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階段を上がった先には広めのスペースがあり、ウェイトレスさんが言っていた通り受付と、それに対面するように掲示板がある。
冒険者になるのも一興な気がするが、命をかけた戦いはちょっとなぁ...という気持ちもあるので、一旦領都に着くまで保留である。
依頼を出したいわけでもないので、受付には今のところ用事はない。
今回のところは掲示板にどんな内容があるか確認するに留めようと思っている。
「...字が読めない」
「なんだ、アサヒも読めないのか。俺もだ」
そう言ってゲルハルトさんが大声で笑う。
日本語通じてたし文字も日本語かな、とか思ってたんだけど、アテが外れてしまった。
いや、ここまで来る途中の商品の文字も読めなかったからそんな気はしていたが。
その後、特にすることもないので普通に食事をして冒険者ギルドを出た。
昼間から酒を飲みたかったが、子供には出せないと言われてウェイトレスさんからお断りされてしまった。
ゲルハルトさんは普通に飲んでいた。羨ましい。
「アサヒ、次はどこに行くんだ?」
「うーん...そうですね、とりあえず目的は達したので一旦中央の広場に戻りましょうか」
「わかった」
その後は中央広場到着して腰をかけていたら夕方になっていた。
1時間ぐらい噴水を眺めていたらしい。
まぁ、歩いて疲れたからなぁ。
散歩して、興味のある店に寄って、広場でぼーっとする。
図らずも理想の休日が完成してしまった。
「そろそろ帰りますか」
「ん、お?もうそんな時間か。ぼーっとしてると時間が過ぎるのはあっという間だな。」
「ですねぇ、いい休日でした。ありがとうございます」
「こっちこそ、堂々と町を歩くなんて久しぶりだ。助かったぜ」
ゲルハルトさんと笑い合う。いい友人ができた。とても嬉しい。
貴族街の入り口で門番さんに割板を渡し、簡単な質問を受けて通された。
顔と名前を覚えられていたらしく、思ったよりスムーズに入れてよかった。
大体こういうのって出る時はザルだけど入る時は厳しく調べられる、みたいなことが多いし。
エウリュカさん様々である。
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騎士団の詰所に戻って、エウリュカさんに会いに行きゲルハルトさんを大部屋に戻した。
今はエウリュカさんと一緒に食堂で夕食が出てくるのを待っている。
「アサヒ、町はどうだった?」
「活気があってよかったです。こんなにたくさんの人を見たのは久々でした。」
「だろうな。だが、領都はもっと人も活気も多いぞ。楽しみにしておけ」
「それは楽しみですね。
ところで明日なんですが、武器屋さんに武器を預けているので取りに行こうと思っています」
「ふむ。それはいいが、昼ぐらいには戻ってきてもらってもいいだろうか?
夕方に領主殿に挨拶に行く予定がある」
「わかりました」
その時、夕食が運ばれてきた。
今日のご飯はシチューとパン、それにサラダだ。
「そういえば、今日オーク肉を食べたんですよ」
「ほう。どうだった?」
「なかなか美味しかったです。あの獣臭さが癖になるというか」
「わかるぞ、アレは美味い。
私としてはキョウギュウの肉がイチオシだな。
四本足で二本の角と白黒の模様が特徴の魔物なんだが、あの何者にも例えられない鼻に抜ける味が堪らん。
屋台にもよく並ぶから、明日にでも食べてみるといい。
ああ、キョウギュウといえば以前に上位個体のモウギュウを食べたことがあるんだがーーーーーー」
ああ、女の子と話しているとなんかこう、ゲルハルトさんと話している時とは違う部分が癒されるな...。
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楽しく会話をしていたら、気付けば夕飯時も終わり、眠る時間が近付いていた。
「もうこんな時間か。そろそろ寝なければな。」
「そうですね。湯浴みってしてもいいんでしょうか?」
「湯浴みは朝にするものだ。夜には入れん」
「そうなんですか...。なら仕方ないですね。俺も寝ることにします」
そうしてエウリュカさんと別れて、ベッドに入った。
寝続けた反動で眠れなくなっているかと思ったが、よく歩いてよく食べたおかげか気付けば眠っていた。
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気付けば目の前に円卓があった。席は7つあり、そのうちの1つに俺が座っている。
俺の他には6人の少女が座っていた。
全員12歳くらいで、なんとなく朝鏡で見た俺と似ている気がする。
これは...夢だな?
少しの間呆けていると、隣にいた深い紫色の髪に黄色い目の少女がこちらを向いて話しかけてきた。
「はじめ...まして...」
「えーっと...はじめまして?」
「よう...こそ...天使...会議...へ...」




