第12話 領都への旅 5
クコの町 クコ子爵邸
クコの町へは予定通り半日で辿り着き、私はこの一帯を領地として持つクコ子爵へ報告に来ていた。
「これはこれは、エウリュカ殿。ゴブリン退治とのことでしたが、結果はどうでしたかな?」
「予想通りゴブリンの群れは縮小しており、ロードが誕生していました」
「ふむ...それは誠ですか」
「群れは殲滅済です。耳を証拠として持参しております」
ゴブリン・ロードの耳は他のゴブリンと比べて2倍以上の大きさがある。
証拠としてはこれで問題ないはずである。
「なるほど。しかし、これでは証拠として不十分ではないですかな?
大きいだけのゴブリンだったのでは」
騎士がゴブリン・ロードを仕留めた場合、感謝の証としてその騎士団仕える貴族に金貨200枚を上納するのが通例である。
上納金を出し渋っているのだろう。
「このような大きさの耳を持つゴブリンはロードかキング以外にありません」
「確認されていないだけでいないとは言えますまい?
それに、今回は調査と聞いている。当家は討伐の依頼など出していませんが?」
「それは...そうですが...」
確かに往路でこの町に寄った際は調査の任務であると伝えている。
しかし、あのまま放置していれば民に被害が出ていた可能性は高い。
討伐は確実に必要だった。
「報告は以上ですかな?では、私はこれにて」
「お待ちください」
「なんですかな?依頼を出していない以上、これ以上お話はありませんが」
「...道中、盗賊を捕まえました。馬車の手配をして頂きたい」
「ほほう。それはそれは、大義でしたね。では使用人に用意させましょう。
では、お話は以上でよろしいか?」
「...ええ」
これ以上の追求は分が悪い。
確かに依頼は出されていない。私の落ち度である。
これはまた、副団長あたりにどやされるな...。
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馬車を手配してもらい、帰路は特に問題なく過ごした。
一晩野営をし、遠目にアサヒと別れた地点が見えてきた。
何か大きなものがあるな...オオアシトカゲか?
「...ああ、そういえば食料を渡していなかったな」
普段一人で動いているため、こういう時の行動に慣れていなかったな。
まぁ森でずっと過ごしていたんだから、2日ぐらいは余裕だろう。
にしてもなんだか焚火の近くにいる人影が多いな...?
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「あ、エウリュカさん。お疲れ様です」
「ああ。食料を渡し忘れてすまなかったな。それで、これはどうしたんだ?」
「近くにいたので狩りました」
「だろうな。ほとんど損傷がないが、アサヒが狩ったのか」
「盗賊の皆さんと一緒に狩りました」
「そうか。皮は高く売れる。取っておくといいだろう。
それにしても、何故盗賊の拘束を解いたんだ?」
「いやー、それがですね...」
アサヒによると、盗賊は隣の領地で貴族の罪をなすり付けられた元軍人らしい。
これまで盗賊として民の命を奪うような真似はしていないし、見逃してくれるなら他の盗賊のアジトも教えるという。
アサヒではどうすべきか判断できないので、私に判断して欲しいと言われた。
しかし、盗賊行為を働いたのは事実だ。
騎士としてこれを見過ごすわけにはいかない。
「ダメだな」
「そう、ですか...」
「だが、労働力をむざむざ減らすのも勿体ない。
見逃しはしないが、処刑されないようにする手もないわけではない」
「本当ですか!」
「うむ。それが嘘でなければ、だがな。
ただし、領都まで付いてきてもらうぞ」
「お頭、問題ないですか?」
「あ、ああ。命が助かるならなんでもいい」
盗賊たちから歓声が上がる。
「それで、他の盗賊のアジトの位置についてだが...」
アサヒにはゴブリンでの借りがある。
見逃したそうな顔をしていたので、妥協案を出すのはやぶさかでもない。
それに、話が事実だとしたら同じ王国貴族として多少の負い目もある。
しかし、子爵には盗賊を捕獲したと伝えた手前、見逃しましたというわけにもいかない。
他の盗賊を代わりに引き渡すことにしよう。
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「エ、エウリュカ様!?また盗賊を連れてきたんですか!?」
「うむ。周囲の盗賊団はあらかた片付けた。これで最後だ」
「そ、そうですか...これで最後なんですね...よかった...」
結局あれから2週間ほどかけ、クコの町の周辺にあった盗賊団4つを片付けた。
元軍人だけあって、アジトをリークした盗賊たちは連携の取れたいい動きをしていた。
最初の引き渡しの際には大いに喜んでいた町の憲兵も、間を開けず盗賊団を引き渡していたら3回目からもう収容する場所がないと悲鳴をあげていた。
町の入り口での4度目の引き渡しを終えた。
盗賊を滅ぼすという目標は達成したので、次の目的について話し合う必要がある。
「これでこの辺りの盗賊は全てだな?」
「え、ええ。俺の知っている限り、もうこの辺りに盗賊はいないはずですぜ」
「流石に疲れましたね...。まさか夜営しながらアジトと町の入り口を往復することになるとは...」
盗賊団もアサヒも疲労困憊といった様子だ。
「うむ。だが盗賊は滅した。
皆疲れているようだな。クコの町で3日程休憩を取ろう」
その言葉を聞いて、アサヒの目に喜びの色が灯った。
そういえば何度か入り口までは来たが、町に入るのは最初に馬車を借りて以来だったな。
クコ子爵には憲兵から連絡が行っているはずなので問題ないが、野営ばかりで流石に疲れていたか。
これは悪いことをしたな。




