第11話 領都への旅 4
彼らの今後についてはひとまず保留して、狩りに行くことにした。
ベースキャンプとなる野営位置には留守番として盗賊を二人残している。
お頭が厳重に注意していたので、あの二人が逃げるということはないだろう。
狩りなので、ちょっと不安ではあるが盗賊たちには捕獲時に奪った武器を返している。
むしろ、武器を持たせても問題ないという余裕を見せた方が今の状態ならいいと思う。
とは言ってもここは街道だ。獲物らしい獲物はいない。
「さて、何を狩りましょうか」
「この辺だとレッサーファルコンかオオアシトカゲかねぇ。どっちもこの辺だとたまに獲れる」
「そうなんですか。見たことないですね...」
「そりゃまあ...あの馬いたらな...」
「あー...」
やっぱあいつ魔物なのでは?
というわけで、やつの気配が残るこの辺りには生き物は寄り付かないであろうということで移動をした。
街道から逸れて2時間ほど歩いたところで、遠くに全長5m、高さ2m程のトカゲが見えた。
太陽を見上げてじっとしている。日光浴だろうか。
それにしても胴体に比べて足がやたらでかい。成人男性ほどの大きさの胴体に2倍ほどの太さがある足が4本くっついていて、なんだかアンバランスな生き物だなぁ、という印象だ。
あれがオオアシトカゲだろうな。
「お頭、アレですか?」
「ん...おぉ、流石。オオアシトカゲだ。オイ!」
移動中は周囲の警戒もありまばらな配置だったが、元軍人だけあって盗賊たちはお頭の一言で素早く隊列を組んだ。
前列に盾持ち、中列に剣士、後方に弓手が並んでいる。
「デカいですねお頭。どうしやすか?」
列の先頭にいた盗賊の一人がお頭の指示を仰ぐ。
「あいつらは好戦的だ。正面から走って行っても逃げないだろうが、脚の力が厄介だからな。遠距離から先制して釣って、盾が勢いを殺してから剣で一気に仕留めるぞ」
「了解ッス」
そういうと弓を持つ盗賊5人が矢の届く位置へと静かに駆ける。
「お頭、俺も手伝いますか?」
「そうだなぁ...近付いてきたら弓を射ってもらってもいいかい?」
「了解」
それから5分ほどして、弓手たちがオオアシトカゲから20m程の位置に到着した。
俺のいる本隊からは200m程離れているだろうか。
オオアシトカゲは太陽を睨んだままで、こちらに気付いている様子はない。
後方から様子を伺っていると、弓がオオアシトカゲに命中した。
4本は大きな足に阻まれて刺さらなかったが、一本は頭に刺さっている。
これは即死だろう。そう思ったが、オオアシトカゲは矢の飛んできた方向に勢いよく首を捻ると、そのまま物凄い勢いで駆け出した。
頭を射っても死なないとかあるのか!?と驚いていたのも束の間、弓手たちがこちらに逃げてくる。
走りながらでは照準がおぼつかないのか、時々矢を射っているがオオアシトカゲには当たらない。
そうして1分も経たない内に弓手は本隊の目前まで走ってきていた。
オオアシトカゲはそのアンバランスな体躯の影響か、見た目に反して脚はそこまで速くないらしい。
弓手との間には40m程の距離が開いている。
弓手がこちらに合流し、本隊も後退する。
隊列は先ほど同様、前列に盾、中列に剣士、後列に弓手だ。
お頭と俺は弓手の後ろにいる。
「射ってみても?」
「構わんよ」
お頭に確認してから弓を構える。
オオアシトカゲは盾まで20m程の距離だ。
矢筒から矢を引き抜き、弓を引き絞る。
狙うのは眉間のあたり。大抵の生物は脳を潰されれば死ぬはずだが、さっき頭に当たったのに死ななかったんだよな...。
そう思いながら残り10m付近で矢を放つ。
矢はオオアシトカゲの眉間に吸い込まれていき...
命中と同時にオオアシトカゲの脚が停止する。
勢いのまま5m程オオアシトカゲが横転し、土煙を上げて停止した。
動く様子はない。
「オイオイ、マジかよ...」
隣でお頭が呟いた。
他の盗賊たちからもどよめきが聞こえてくる。
俺、またなんかやっちゃいました?
いや、まぁ頭を射ったら普通に生き物は死ぬので、何もやっちゃいましたではないんだが。
「...兄ちゃん、筋力ステータスいくつなんだ?」
前にも言われたな。俺も知りたい。
「いやー、わかんないですね」
「...いや、すまん。失礼した」
いや、隠してるとかじゃないんですけど...。
というかみんな一撃で仕留めると筋力ステータスを気にしてくるな。
頭潰したら普通一撃で死なないか?
「...とりあえず、これ持っていきましょうか」
なんだか気まずい空気の中、ひとまずオオアシトカゲを焚火の場所まで運ぶことにした。




