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第8話 領都への旅 1

 そのまま一晩森で過ごしてから川を下った。


 木々が密集した森の地帯と平原の地帯がクッキリと分かれている。

 エウリュカさんによれば、土地の精霊の生息域によって魔力の質が分かれているかららしい。

 精霊、いるんだ。


 森を抜けた。川下りに1日半程かかったので、今は昼である。

 俺にとってはこの世界で初めての森以外の場所である。

 森では常に気を張っていたこともあり、草原を見た俺の感想は感動半分眠気半分だった。

 なんだか木がないと落ちつかない。ここ数か月ゴブリンから隠れる生活をしていたせいだろう。


「このまま領都に行くんですか?」


「いや、近隣の村に報告をしてやる必要がある。被害が減っているとはいえ、減ったら減ったで個体が強くなることは農民でも知っている。彼らからすればゴブリンの動向が分からないと気が気じゃないだろうからな。早く安心させてやりたい。領都へはその後に向かう」


「なるほど、わかりました村へはどのくらいで着きますか?」


「馬がいるから半日もあれば着くだろう。」


「ほうほう。馬ですか?」


「ああ」


 そういうとエウリュカさんは腰に下げたマジックバッグからラッパを取り出し、演奏を始めた。

 辺りにエウリュカさんの演奏が鳴り響く。


 そうして5分程経っただろうか。遠くに黒馬が走っているのが見える。

 近くにいるように思ったが、黒馬のサイズがおかしかった。

 と、思ったがエウリュカさんは動じることなくラッパを吹いている。


 程なく馬がこちらに到着した。

 高さが2.5mくらいある。どう見ても魔物側の生物に見える。


 「軍馬だ。音楽で戻ってくるように調教されている。」


 アレがこの世界の馬なのかぁ...と、この時は素直に受け止めたが、この黒馬が特別なだけで道中見かけた行商人っぽい人の馬は普通だった。というかこっちの馬を見てビビっていた気がする。

 なんか...すみません。


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 村でのエウリュカさんは終始淡々とゴブリン討伐について村長に説明していた。

 報告自体は10分もかからず終了し、村長は俺にゴブリン被害の減少について感謝していた。

 記憶喪失でゴブリンの群れと単騎で戦っていたという部分についてはこの世界の常人の感覚からすると正気の沙汰ではないらしく、少し説明の仕方に悩んだようでゴブリンの群れが減少した後にたまたま通りかかった凄腕の冒険者ということで紹介された。

 俺がいなかったとしてもエウリュカさんなら一人であの群れ殲滅しそうな気がするな...と思ったが、それは言わないでおいた。

 村長からは感謝の宴を開くと言われたが、エウリュカさんは端的にそれを断り、この辺りには他に村はないということだったので領都への帰路に着くことになった。


----------------------------------------


「宴、断っちゃって良かったんですか?」


「アサヒ。辺境にある村はあまり余裕はない。

 ましてや今は秋だ。宴など開いては越冬に差し支える可能性がある」


「なるほど...。エウリュカさん、お優しいんですね」


「そっ...そんなことはない。民が無事に過ごせるように努めるのが騎士として当たり前だろう」


「そうなんですね。騎士って戦争ばかりのイメージでしたが、素敵ですね」


「そうだ。騎士は誉れ高い仕事なんだ」


 騎士について褒められ、エウリュカさんはとても嬉しそうに笑いながらそう答えた。


----------------------------------------

 

 そうして村への説明を終えた我々は領都への帰路についた。

 広陵の森はかなり辺境にあるので、領都へは軍馬の足でも一週間程かかるらしい。

 まずはこの近辺で一番大きなクコの町という場所に向かうということで、今はその道中で街道の端で火を囲んで野宿である。

 馬は夜は放した方が調子が良くなるということで、どこかに行っている。

 あいつを襲う魔物なんてまずいないだろう。

 というか騎士の乗る馬なのに見た目が禍々しすぎる。やっぱりあの馬魔物だろ。

 俺とエウリュカさんは火を囲んで領都の話や森での暮らしについて会話に花を咲かせていた。


「ところでアサヒ、森では普段何を食べていたんだ?まさかゴブリンの肉ということもあるまい」


「あーそれですか、実はですね...」


 その時、周囲から声がした。


「へへへ、騎士様方ァ、二人だけで旅とは危なっかしいですねェ?

 ここら辺は治安が悪ィんだ。運が悪かったと思って馬と荷物を寄越しな。」


 この世界の治安はあまり良くないらしい。

 俺たちを囲むように盗賊が現れた。

 盗賊の規模は20人程だ。これはまずいのでは?


 エウリュカさんはそれを既に察知していたらしく、動じた様子はない。

 ちなみに俺は森を抜けてから気が緩んでいたので全く気付かなかった。


「賊よ」


「なんですかァ?騎士様、まさかこの人数差で勝てるとお思いで?

 何、俺たちだって鬼じゃねェ。物さえ置いてってくれれば命は取らねェよ」


 へへへ、と山賊がいやらしく笑う。

 エウリュカさんが盗賊に顔を向ける。


「見上げた根性だ。それは私がエウリュカ・フォン・ゼッケンバーグだと知っての言葉か?」


 エウリュカさんの顔を見た瞬間、盗賊の顔が引きつった。


「オイ!あの賊狩りがこんなとこにいるなんて聞いてねェぞ!北部に行ったって話だったじゃねェか!」


「だから俺は騎士を襲うなんてやめようって言ったんだ!」


「お頭ァ!どうにかしてくだせェ!」


「ハイドの野郎、ガセ掴ませやがったな!人間の勝てる相手じゃねェ!逃げるぞ!」


 山賊たちが慌てながら逃げ出そうと走り出した時、エウリュカさんがため息を吐いた。


「少しは根性のある賊かと思ったが、私の思い違いだったようだな」


 エウリュカさんの周りに魔法陣が浮き上がり、髪が浮く。

 黒い髪が魔力の光を纏い、まるで頭上の星空のように煌く。

 程なくして土が盛り上がり、周囲に3m程の円形の囲いができた。

 エウリュカさんの魔法だろう、山賊は全員円の内側に閉じ込められる形となった。


 「何、お前らも命を取らないと言った。私も命までは取らんさ」


 盗賊たちの顔が引きつる。

 許しを乞う盗賊たちにエウリュカさんが殴りかかり、辺りが静かになるまで10分とかからなかった。


PV数の見方を今日知りました。

投稿したてなので1日10人が見てくれたら御の字と思ってたんですが、意外と見られてて嬉しかったです。

見て頂いた方にブクマしてもらえるようにもっと面白い話を書けるようになりたいなと思いました。

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