プロローグ
初投稿です!よろしくお願いします!
ハイペースで投稿できるように頑張ります!
大人になったら、漠然と何かになれると思っていた。
今もどこかでそう思っている自分がいるのを、微かに感じる。
小さい頃は自分はまだ出会っていないだけで、もう少ししたら熱中できる何かに出会って、
競い合えるライバルや心躍るイベントが起きて、楽しく過ごすのだと。
そう思っていた。
----------------------------------------
絶望の朝を告げるアラーム音。
3度程スマホを黙らせたが、しつこく鳴り響く機械に抵抗を止め、時間を確認する。
月曜日の8時半。
起きねば。起きて、準備して、仕事に行かなければ...。
いつも通りの朝、いつも通り出勤して、いつも通り客に怒られ、いつも通り虚無と共に帰って寝る。
大学を卒業して以来、ずっとそんな生活をしていたら気付けばもう27歳。
胸を張ってアラサーと言える歳になっていた。
最近、時間が過ぎるのが早く感じる。
月曜に虚ろな目で目覚めて、気付いたら金曜日。
寝て起きて寝て起きて寝たらまた仕事だ、と思うと華金という言葉もどこか空虚に思える。
同級生はどんどん結婚していくし、この間は親と電話していたら
彼女の有無と同時に「○○ちゃんの子が小学校小学校に入ったみたいよ」なんて圧をかけられた。
仕事だけで手一杯なのに、出会って付き合って結婚して出産って、
一般的な社会人さんすごすぎないか...?
「はー...異世界とか行きてぇ......」
珍しく(実に2ヶ月ぶりである)太陽が出ているうちに仕事を終えた夏の日。
帰り道に眠りに就く太陽の光を感じながら異世界への片道切符が車道を走っているのを見て、ふとそんなことを口走ってしまうのも仕方ないと思う。
人類に労働は早すぎた。
「異世界、行きたいんですか?」
舌っ足らずな声がして、振り返ると幼女が一人で立っていた。
「あはは、聞かれてたか。こんにちは」
27にもなって異世界とか言っていたのを聞かれてしまったのが恥ずかしくてちょっとテンション高めに話しかける。
「お嬢ちゃん、どうしたの?もう暗くなるけど、お母さんは一緒じゃないのかな?」
「異世界、行きたいんですか?」
幼女は質問には答えず、先ほどと同じ言葉を繰り返す。
「そうだね、行ってみたいかな。
それより、お母さんとははぐれちゃったのかな?」
「異世界、行きたいんですね」
ふっ、と足元の感覚が消えた。
次いでエレベーターが下に降りるときのような浮遊感。
そこで俺の記憶は途絶えた。