表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

MY song

彼岸花。

作者: caem


 さらさらの黒髪が揺れた。


 僅かに射した夕焼けを纏わせてーー。




 いつからだったのだろうか。


 そのとびっきりの笑顔に救われていたのは。


 錆びた階段の、誰にも気付かれようもない。


 ジメジメしていた空間だけが唯一の遊び場だった。


 幾度読んだか分からない、でもそれほど大切にもしておらず。


 片手サイズの文庫本ーー、一人っきりの自由な時間。


 ペラペラ、捲る。


 時には口にして、気に入ったフレーズなどを。



 気付けば、赤トンボが群れている。


 露出していた肌には痒みを覚えていて……




「そんなとこで何してるの?」



 突如現れたその姿に思わず驚く。


 一生関わり無いだろう。


 天使が語りかけてきたのだ。



「……いやぁ……、ただ、そのう……」



 上手くは言えない。


 分かりやすくは、貝殻のなかで踞っていただけだけど。




「ふ~ん、そっか」


 空気を読んでくれたのか、彼女はどこかつまらなそうにして、その場を去ろうとしていた。


 空き缶の音が静寂に問いかけるようだ。



「ねぇ……ちょっと付き合ってくれない?」




 嫌だ。


 迷惑きわまりない。


 なぜ邪魔するんだ。





「ほら! はやく!!」












 ぐいぐい引かれて飛び出した。


 世界はあまりにも眩しくて。


 そして、苦しみや悲しみにも。






 ーーありがとうーー






 きみはもう変わったのかな。


 待っていてくれたら嬉しいな。


 手のひらをあわせて、どこまでも空高くーー思い出が舞い上がる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ