表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大罪の賢者  作者: 伊佐緒晶
賢者の指輪
7/37

大罪と美徳

やっと題名に沿った展開が出来そうです。

 果てが見えないほどの広い空間にエルクは倒れていた。

 そして、起き上がって上を見て一言。


 知らない天井だ。


 緊張感の欠けらも無い様に思われても仕方ないが、鉄板ネタなのだから一度は言ってみたかった衝動に負けただけだ。


 天井というか、空?

 横も見渡す限り何も無いんですけど!ここどこよ?

 そう言えば、遭難した時は動かない方がいいんだっけ?いや、山は山頂目指した方が助かりやすいとか聞いたことある気がするけど、平坦な空間だからここに居よう。


 混乱しつつも行動が決まれば、後は助かるための手段だな。まずは状況確認から。


 遭難ではないし、ましてや歩いてなかったはずだから、迷子なんてありえない。

 ま、まさか拉致られた?

 でも、それならスーリヤの方を選ぶよな。なんと言っても、可愛いし。

 こんなオッサンもとい少年を人質にしても得られるものは・・・・・・、父さんのコネ関係か?

 でも・・・・・・・・・


 生物特有の気配もなかったため、動かず考えに没頭していことが原因で、生物では無いものが近づいていることに気付かにいた。


 《・・・・・・・・・。・・・・・・か。・・・・・・・・・・・・・・・け》


 ん?なんか聞こえた気がするけど気のせいだろ。相変わらず、気配もないし。


 《・・・か・・・・・・に・・・ろ。・・・で・・・・・・ない》


 気のせいじゃないのか?なんにせよ、考え事の邪魔だな。


 《邪魔・・・は・・・んだ。いいか・・・こっ・・・・・・を見ろ》


 あーあーきーこーえーなーいー。

 怪談ものだと、ここで振り返ったりすれば襲われるのが定石だったはずだ。

 意地でも振り向いてやるもんか!


 《おい!失礼にもほどがあるだろ!》


 やっとハッキリ聞こえたけど、なんなんだよ。無視しとけばどっか行くんじゃないのかよ。


 《話を聞かんか。取って食おうとは思っとらん》


 またまたぁ。そう言いながら振り返った途端にパックンチョなんだ。その手には乗ってやらん。


 《分かった。では、面倒だが目の前に顕現してやろう》


 うわー。なんかよく分かんないけど、こっちの方が面倒事に巻き込まれそう。


 顔全面でハッキリと嫌ですと示しているのに《そいつ》は現れた。


 《ハッハッハ。どうだこれで無視出来んだろ》


 出たよ。頼んでもないのに老人が偉そうに出てきて、目障り。ウザイにもほどがある。てか、思っただけで会話が出来るって気持ち悪っ!?


 《なっ!!ウ、ウザイだと!しかも目障りで気持ち悪いだと!貴様誰に向かって言っておる!?》


 は?貴方以外に誰もいないですよね?

 どこの誰だか知らないけど邪魔しないで貰えないですか?


 《またしても、邪魔だと!吾は《傲慢の指輪》の主だぞ!少しは敬意を持たんか!》


 なんか偉そうなのが出てきたなぁ。

 しかも敬意を持てだってよ。会社で役職持ってるだけの上司を思い出して笑っちゃうよ、本当に。

 敬意を持って欲しければ、行動で示さなきゃならないってのは子供でも知ってるのに。


 《き、貴様!?まだ愚弄するか》


 愚弄と言うか、真理だと思うんですけど、どうなんですか?

 それだけのことを言うんであれば、何かしら功績を持ってますよね?

 教えてくれません?なにしろ無知なので。


 煽って糸口を探す戦法にしたのはいいんだが、なかなか進まない。

 進まないことにエルクは、徐々に腹が立っていたのに、乗せた途端流れるように喋りだした。


 《そうか。無知ならば仕方ない。吾が教えてやろう。いいか、この世界は、我ら賢者が発展させてきたのじゃ。》


 へー。そうなんですね。スゴいです。


 《当たり前じゃ。吾は傲慢。全て見下し、全て従える者よ。》


 へー。そうなんですね。スゴいです。


 《我らは得意な分野で活躍し、足りない部分をお互いに補ってきた》


 面倒くさそうな自慢話になりそうだけど、今更断れないから乗っておくか。


 へ、へー。そうなんですね。他にどんなスゴい人がいたんですか?


 《他には《嫉妬》《強欲》《憤怒》《怠惰》《色欲》《暴食》がおる。それぞれ常人から掛け離れるほどの力を持ち、時には暴走してしまうものの『賢者』と呼ばれ、今まで滅びを迎えることなく生き延びることが出来たのじゃ。》


 ん?七大罪なんだから、むしろ文明を破壊する側じゃないの?

 それに、暴走してたんじゃ、迷惑だったろうに。


 《何を言う!奴等から人々を護り、切っ掛けや実績を持って人の手で発展出来るように手助けしてきたのが、我等じゃぞ!確かに迷惑をかけた事があるのは否定せんが・・・・・・》


 ほらみた事か!尻すぼみってことはそっちにも実績ありだな。

 大罪系の時点で怪しすぎるんだよ!せめて、美徳系だったら信用出来たのに。


 《貴様の言う大罪やら美徳が何かは知らんが、我等にも対になるもの達がおる。それが《忠義》《慈愛》《分別》《寛容》《勤勉》《純潔》《節制》の七人で、『使徒』と呼ばれておる》


 まんまかよ。

 だけど、それの何が悪いんだ?美徳系は真面目に生きてるやつの評価ポイントだと思うんだけど。大罪系よりよっぽど、世界が綺麗に発展しそう。


 《そんなことはありえない!》


 うわっ!ビックリした。

 急に大声出すなよ。別に耳は悪くなってないっての。


 《巫山戯たことを抜かすからじゃ!よいか、奴等は神の名のもとに強要してくるのじゃ》


 神?そんなのがいるの?

 地球探しても、紙の上にしかいないのに。神だけに。


 《面白くもなんともないわ!それだけではすまん。欲望の制限とは発明の逆じゃよ。何も生まれない。傲慢さがなければ階級は存在せず、嫉妬を持たなければ己を磨かない。強欲さがなければ現状で満足するじゃろう。憤怒する心がなければ何も決まらず、怠惰の概念がなければ褒美はいらない。色欲あるからこそ子供が産まれ、人が増える。暴食があるからこそ食糧生産が盛んになる。全てがあるからこそ、人は生きていけるんじゃ》


 言われるとそうだな。

 発明の母がいなければ、永遠にそのままでしかない。

 停滞は進歩じゃなくて、退化だって誰かが言ってたなぁ。

 なんだか、大罪と美徳って言葉では語れない深さがあるような気がしてきた。


 《そうなのじゃ。そして、貴様は《傲慢》に選ばれたのじゃ》


 え?俺が傲慢?

 冗談は貴方の存在だけにして下さい。マジで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ