夢に向かって
「ふぁぁ・・・」
青い空に白い雲。そして、時々亜龍騎士。
これが日常になったし、当たり前の光景に思えるように最近やっとなった。
前世での朝なんて、時間に追われてゆっくり風景なんて見ている余裕はなかった。それに、満員電車でもみくちゃにされてたらそんな気起きないしなぁ。
俺は・・・・・・いや、まだ、僕って年齢か。僕は同じ光景に変わり映えしない毎日に嫌気が差して、この異世界に逃げ込んだ。
新しい両親。新しい言葉。新しい概念。新しい常識。
新しい尽くしで大変だけど、とても充実して楽しい毎日だ。まだ7歳で、まだまだ来てない時間が多いけど、これからがとっても楽しみ。
知らない事ばかりだけど、これからの将来設計をどうするか悩み出した頃に、若い女性の声が聞こえてきた。
「エルクー、起きてるー?ご飯よー。」
母さんから起床の催促が来ちゃったから、とりあえず将来設計を考えるのはここまでにして朝食を食べてからにしよう。
っと、その前に返事しとかないと僕の部屋に乗り込んできて、母さんにオモチャにされる。
「起きてるよー。今行くー」
よし!これで最悪は免れた。パパっと着替えてリビングに行くと、美味しそうなご飯に柔らかな笑みを浮かべている母さんと、短く切りそろえた髪に筋肉質な体躯をしたイケメンの父さんが待っていた。
「おはよう、エルク」
「おっ!起きたか寝坊助」
母さんと父さんがリビングに入るなり挨拶してきた。
いや、するのはいい事だけど早くない?まだ、ドアを開けたばっかりだよ?
まぁいいや。気にしたら負けな気がする。
「おはよう父さん、母さん」
「さて、揃ったことですし、ご飯にしましょう」
母さんの号令で朝食を食べ始める僕達。
なんとなしにって感じで父さんが普段聞かないようなことを聞いてきた。
「エルク。そういやお前、もうすぐ、10歳に、なるんだ。将来、なりたいものとか、あるのか?」
「あ、うん。あるよ、一応」
「へー、そうか。何に、なりたいんだ?鍛冶屋、とか?」
「いや、なんで鍛冶屋が出てきたの?」
「ん?昔、『僕父さんの武器みたいなの作ってみたい』って、言ってた、じゃないか」
あー・・・・・・。
言ったっけ?言ったような、言ってないような。うーん。思い出せない。曖昧に回答しておこう。言質を取られたら大変だからね。
まぁ、鍛冶屋うんぬんは置いといても、食べながら喋る父親にはなりたくないかな?言わないけど。
「それは、昔の話でしょ?今は違うよ」
「なんだ。じゃぁ、父さんと同じ騎士か!」
惜しい。戦う職業ではあるけど、それじゃないんだよなぁ。
顔に出ていたのか、違うけど、惜しいことを察した父さんが次の回答を出てきた。
「違うのか。なら討伐屋か?」
これも、惜しい。もはや、ニアピン賞。
だが、今までの興味を示した物とかを考えてるんだろうけど、それを考えれば答えは一択しかないはず。しかし、意識的にしろ無意識にしろ避けてる回答がある。それを、僕はハッキリと言葉にして伝える。
「僕は冒険者になりたいんだ」
「却下だ」
即答!早くない?朝の挨拶といい、早すぎる!
だが、この回答は予測出来たであろうから出鼻をくじくには即答が適切だろう。
だけど、僕の熱意を侮って貰っちゃ困る。
「なんで?危険だから?お金がかかるから?給料が不安定だから?」
とにかく説得するために、なぜ?を連発しよう。
大人の伝家の宝刀『ダメったらダメ』が来ないで、こちらのなぜ?が尽きなければ勝てるのだ。理論上は・・・。
「そうだ。危険な上に報酬が割に合わないことが多い。臨機応変に対応出来なければ終わり。報酬よりも準備と実行に金がかかり過ぎる。何より嫁が貰いにくい」
・・・・・・は?
最後が一番真剣な声と表情だったんだが・・・・・・。
あれー?可笑しいな?なんで危険とかお金とかより真面目な訳?
なんて混乱していると、父さんが自慢げに語り始めた。
「いいか!母さんみたいな嫁を貰うなら容姿・金・死亡率は考えておけ。俺はイケメンだし、騎士の中でも給料も多い方だ。しかも、騎士は戦争でもなければほとんど死なんからな。母さんは最高だろ!美人だし、綺麗だし、可愛いし、美人だし!」
母さんも満更では無いようで恥ずかしがりながらも父さんと桃色空間を作り始めてる。
息子としては、この空間からスグにでも逃げ出したい。それも、全力で。
よし、逃げよう。おじゃま虫は退散して、夫婦水入らずで楽しんで貰うとしよう。
「分かったよ父さん。とりあえず考え直してみる」
そう言って残りの朝食を掻き込み、ご馳走様をして。家を足早に出た。
ま、考え直した結果、冒険者になるんだけどね。
ここまで来た方へ。
有難うございます!初投稿ですので、ゆっくりになると思いますが連載していきます。
よろしくお願いします