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Perfect Day  作者: 高崎 祐
8/22

夕暮れ時

「先輩、あれからどこに行ってたんですか?」


部室でブラウスのボタンを留めながら、凛子が訊いてきた。


「先生に頼まれて、ある人物に作文書かせてきた」


「ある人物?それは一体どなた?」


「まぁ、誰でもいいでしょ」


「わかった。南さんですね」


超能力者か、お前は。


「・・・なんで?」


訊き返した。


「だって先輩、嬉しそうな顔してますもん」


「してないけど」


「またまたぁ〜、そう隠さなくても」


凛子がニヤニヤしながら言った。

デジャヴか?

この光景、なんか見たことある気がする。


「南さんの事が好き、と言っても別に驚きませんよ。南さん、かっこいいから私らの学年でもそこそこ人気あるし、ましては先輩は幼馴染っすからねぇ」


「・・・なんか私が南のことが好きなこと前提で話を進めてない?」


「違うんですか?」


「違う」


「どうしてさっき、いつもみたいに『悠介』って呼ばなかったんです?」


何故知ってる。凛子の前で奴の名前を出したことはないはずだが。


「それは・・・勘違いされると思ったから」


「意識してますね」


「殺されたい?」


「スンマセン」


まったく、顧問だけでなく後輩からもバカにされるとは散々だ。


「そいや先輩」


「ん?」


「南さんのところ、ユニフォームで行ったんですか?」


「そうだけど」


「攻めましたね」


また訳のわからないことを言い出したな。この少女は。


「なにが?」


「だって陸上のユニフォームって、陸上知らない人がみたらモロ下着じゃないっすか」


「まぁ、言われてみればそうよね」


「先輩がもし男子だったとして、自分の周りを下着姿の女子が歩き回ったらどう思います?」


わからない、と、私が言う前に、


「きっと南さん、超ドキドキしてたと思いますよ」


「んなわけが」


「私が南さんだったらしますけどねぇ。先輩みたいな美人が半裸で彷徨(うろつ)いたら」


「半裸とか言うな。恥ずかしくなるだろ」


「恥じらってる先輩、可愛い〜」


そう言って凛子が抱きついてきた。この娘は、本当に私と年齢(とし)が1つしか違わないのか。

10秒ほど私にしがみついた後、ゆっくりと私から手を離し、


「じゃあ私は帰りますので、先輩、また明日!」


凛子が敬礼をして言った。返事をすると、風のように部室から飛び出して行った。

1人になった更衣室は、まるで廃屋のように静かである。1人いなくなるだけでこんなに違うものなのだろうか。



薄暗くなった空を見上げながら、私は部室を後にした。




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