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Perfect Day  作者: 高崎 祐
20/22

美菜子の悩み

「ねぇ、楓」


「ん?」


それは昼休みの出来事だった。


「私って、恐い?」


「・・・は?」


美菜子の唐突な質問に動揺し、私は掴んで持ち上げていたミートボールを元の場所に戻してしまった。否、落とした。


「楓、貴女(あなた)今、口じゃなくてミートボールで返事したのね?」


「ちょっと待って、滑っただけだって」


私は慌てて落としたミートボールをまた掴み上げ、口に放り込んだ。床に落ちなくて良かったぜ。


「で、」


私には気になることがあった。


「どうしたの急に?そんなこと言って」


そう、普通に考えたら自分の事が恐いかと訊く女子高生が何処に居る。というか、その質問自体が恐い気もするのだが。


「いや、最近部活であったことなんだけど・・・」


美菜子はため息をつき、


「この前、部活が終わった後、私1人残って掃除してたら、私が掃除してた道場の隣の道場で1人の1年生の男子が道場で寝転んでたのよね」


「ほう」


「その子も掃除で残ってたみたいなんだけど、部活で疲れたっぽくて寝ちゃってたの」


「ふむ」


「道場で寝たままにするのも良くないから、『ねぇ』って声をかけたんだけど」


「美菜子はその時どんな格好してたの?」


「着替えてなかったから、胴着のまま」


「なるほど」


「それで、声をかけた時その子が、びくっ、ってなって」


美菜子は悲しそうな顔をした。


「凄く謝られたの」


「あらま」


「しかも謝り方も土下座よ??目の前でごめんなさいを連呼されて土下座されて、なんか震えてるし挙げ句の果てには『勘弁してください』って言われたわ」


「それは・・・、普通じゃないっすね」


「でしょ!?優しく話しかけたつもりだったのに、明らかに恐れられてる感じしかしないんだけど」


「その子と関わりは?」


「いつだったか男女合同練習をした時に1回だけ()ったくらい」


「その時になんかあったのでは?」


「特に何もなかったけど・・・」


「じゃあ、違うか」


「あ」


「何か心当たりが?」


「その子とは関係の無いことなんだけど、その合同練習が始まる前に肩慣らしで思いっ切り練習用のマネキンを叩いたら竹刀が折れたのよね」


「・・・竹刀って、折れるモンなんすか?」


「いや、その竹刀は借り物で、なんか古かったみたいだから」


「へぇ・・・・・」


マネキンよ、ドンマイ。


「折ったところを見られてたか」


「私が後輩だったら竹刀を叩き割る先輩の姿なんて恐怖のイメージを覚えて一生忘れない気がするわ」


「そっか〜」


美菜子は納得したように呟いた。あの内容で納得出来たのならきっと良かったのだろう。


私は残っていたミートボールを掴み上げた。これは、温めた方が多分美味しいよな。


「まぁ、理由が見つかって良かった。よく考えたら、いくら主将とはいえ素の女子高生が恐れられるなんてないわよね〜」


美菜子は笑顔でそう言った。ぶっちゃけ怒るとガチで恐いのはもちろんだが黙っておこう。



「ね?楓」



「えっ」



その瞬間、掴まれていた肉の塊が箸を見事にすり抜け、弁当箱の中ではなく、机の上に見事に着地した。



落ちたミートボールよりも、私は美菜子に目を向けた。




笑っている。

さっきの笑顔とは別の、目の笑っていない笑顔で。


「楓?今、どうしてそれを落としたのかな?」


「い、いや、これは・・・」


「私、怒らないよ?だから、正直に言ってごらん?私、恐いかなぁ?」


穏やかな口調の反面、とてつもない威圧感が私を襲う。

美菜子は「優しく話しかけたつもりだった」と言っていたことを思い出した。もしかしたら、その1年生もこんな感じだったのかもしれない。




これはもう、土下座しかないな。



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