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Perfect Day  作者: 高崎 祐
14/22

最初の晩餐3

私はリビングに案内された。

悠介の家のリビングは、私が覚えているリビングと変わらなかった。やはり人数が少ないと、模様替えというものをしないのだろうか。


「座ってて。今、準備すっから」


私は椅子に座り、部屋を見渡した。

テレビの横にある写真立て、その中にある写真には幸せそうな笑顔で写る夫婦と少女、そして妻の胸に抱かれている赤ん坊。

悠介の父親は、悠介が生まれてすぐ交通事故で亡くなったらしい。自分の父親の顔を自分の目で1度も見たことがないというのはなんとも不憫な話だが、悠介自身そのことについてそこまで気にしていないみたいで、『俺が生まれる前に死ななくて良かった』とか言っていたのを思い出した。


「お待ちど」


そう言って悠介が私の前に皿をいくつか置いた。

薄い玉子が乗せられたカレー、そして生ハム、だろうか?色々と盛られたサラダ。

どちらもウチで出たことのあるモノだが、ウチのとは違い随分と綺麗だ。生ハムなんて、コンビニで買ったサンドイッチでしか食べたことはない。


「豪華ね」


そう言うと、悠介が


「ウチの母親(ババア)がカレーしか作ってなくてな、即席で玉子乗っけてサラダ作ったんだが、そう感じてもらえたんなら良かった」


嬉しそうな顔をして言った。

ただのカレーを綺麗に魅せた悠介は、何か才能があるのかもしれない。

悠介が自分の分も持ってきて、席についた。


「じゃ、食うか」


「うん」


食前の合図をし、スプーンを持った。



「そういえば」


悠介が、サラダに入っているレタスを生ハムで器用に巻きながら言った。


「こうやって、2人でメシ食うの初めてじゃね?」


「たしかにそうね」


「不思議だよな。幼稚園に行ってた頃から仲なのに、2人で向かい合って食うのが初めてって」


悠介は()()みと言った。

私は記憶の中から、悠介と食卓を囲んだ過去を探してみたが、やはり2人だけで飯を食ったことは1度もなかった。

仲が悪かったわけではない。

きっと巡り合わせが悪かったのだろう。


「考えてみれば、あんたの顔を見ながら飯を食うってのは、私からしたらなんか斬新な気がする」


「同感だ」


悠介が、にっ、と笑った。



「ちょっと話変えるけど」


「ん?なんだ?」


涼子(りょうこ)さん、どうしてる?」


涼子というのは、少し歳の離れた悠介のお姉さんだ。


「あいつか」


悠介が少し顔を(しか)めた。


「たまに電話してくるよ。母さんはどうしてるか、あんたはどうしてるか、って。まぁ、月に1回くらいだけどな」


悠介と涼子さんの仲はあまり良くない。

というか、涼子さんは悠介のことを嫌ってないが、悠介は涼子さんのことを嫌っている。つまり、一方的だ。

涼子さんには、私も奈那も世話になった。小さかった私と悠介を公園に連れて行ったりしてくれたし、生まれたばっかりの奈那をあやしたりもしてくれていたらしい。そういうこともあり、私も奈那も涼子さんには(なつ)いているが、悠介は違った。

本人曰く、逆らったら何をされるかわからないらしい。私達にはそんな感じには全く思えなかったが、まぁ姉弟(きょうだい)だと色々とあるのだろう。


「へぇ」


()き遅れてるらしいからな。当分帰ってこないとか言ってた」


それは寂しい。

悠介からしたらラッキーか。



色々と話しているうちに、食事が終わった。


「私、洗い物するけど」


一飯の恩はこういうもので返さないといけない。


「じゃあ洗った皿を拭いてもらうから、ちょっと待っててくれ」


ソファーに座っていいぞ、と悠介が言った。

私は御言葉に甘えて座らせてもらった。


「楓、リモコン取って」


ソファーの肘を置くところに置いてあったリモコンを取って、悠介に渡した。

悠介がテレビのスイッチを入れる。

その瞬間、画面に濃厚にキスをする男女の姿が映った。

声は出さなかったが、少し動揺してしまった私がいた。

正直、気まずい。

私は悠介を見た。

悠介は、眉1つ動かさず、ぼーっと画面を見ていた。

そして、


「異性とこういうシーン観るのって、すげー気まずいな」


さらっと言った。

言うな。

言われなくても私はちゃんとわかっている。


「そうね」


気にしていないように、私は応えた。

悠介は私にリモコンを差し出し、


「なんか観たいのあったら変えていいよ」


そして、にやっ、とし、


「変えたくなかったら別にいいけど」


そう言った。

私は悠介からリモコンを奪い取った。

悠介はケラケラと笑っていた。


チャンネルを野球中継に固定し、私はソファーの背もたれにもたれかかった。

台所で食器を洗う幼馴染、一体どういう光景なんだろう。


夜は、()けていくばかりだった。


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