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FLOWER  作者: タンポポ
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プロローグ

「ねぇ、もし魔法が使えたら、どうする?」


初めは、何も答えられなかった。


「魔法使いになって、あたしらのところに来なよ。どう?」


今考えれば、本当にあれで良かったのだろうか。

でも、後悔はしていない。


あの日、私は―。



「ねぇ、この後どっかいかない?カラオケとかさー?」

学校の帰り道、一緒に帰ってた友達の一人が言った。

「いいねー行こう行こう。」

でもその時、友達の会話は、私の耳には入っていなかった。

道路の反対側、20代前半くらいの男が、お店の入り口や壁を触りながらフラフラと歩いていた。

男が触ったところは、黒い模様が浮かび上がる。

あれは―!!

「あんたはどうすんの?」

「えっ!?」

急にふられてびっくりした。全く聞いてなかった。

「カラオケだよー。」

友達に説明され、「ゴメン。パスだわ。」って断る。

友達と別れて、男を追いかける。

あの男を、放っておくわけにはいかない。

あれは―。

多分……

「ありゃー悪魔だな。」

っっ!!!

即座に離れる。

隣に、見ず知らずの男…いや、おじさん!?がいた。

「誰?何者?どこの所属?」

きつい顔になって、早口で話す。

「あのね、お嬢さん。普通は、聞く前に自分が名乗るもんだよ?」

おじさんは、ゆっくりと少しねっとりした話し方だ。

こうゆう話し方は好きじゃない。

「すみませんでした。でも、知らない人には名前とか、個人情報とか、言っちゃいけませんので。」

私はまだ、きつい顔で早口。

「そう。そりゃ残念だ。じゃ俺も俺のこと、お嬢さんに教えないから、お嬢さんのこと何も聞かないよ。」

何が残念なのか、理解できない。

「ところで、あの悪魔、どうするつもりだい?」

「あたりまえでしょ?止めるのよ。」

「できるのか?・・・お嬢さん」

やけにムカつくおじさんだな。

「できるわっ!!」

私は言い切っておじさんを睨んだ。

でも、強がりとかじゃなくて本当にできると思ってる。

だって、私は―。

よくわかんないけど、おじさんは少し驚いているように見えた。

「お嬢さん、いい目をするね~。」

「はぁっ!?」

「よし、お嬢さんのいい目に免じて、協力してあげよう。」

そう言っておじさんは、ふらふら歩きながら何かをぶつぶつ言っていた。

おじさんが歩いたところには、赤い模様が浮かび上がる。

ただふらふら歩いているだけじゃないんだ。

急に、おじさんは止まった。

「しっかり意識もてよっ」

っっ!!

体があるようでない

目が見えているようで見えてない

足が地面についているようでついてない

自分がここにいるようでいない

なんともおかしな空間を乗り越えて、気付けばまた別の空間にいた。

赤でつつまれた空間―。

そういえば、おじさんが地面に描いていた模様と似てる!?

なぜか、そう思った。

「ぼうっとしてないで、さっさとやっちゃってよ。」

っ!

目の前には悪魔―。

おじさんは、私が自由に暴れられるように、空間をつくってくれた。

私は、ゆっくり男―悪魔に近づいていく。

悪魔は私に気付いて、奇妙にケタケタと笑い出した。

私は、ひるむことなく悪魔を睨みながら、近づく。

「=h/jds4g8wh0yewxbo93#(@g!”」

ちょっと前にやっと覚えられたコードを言いながら、制服のポケットから、花の形をしたネックレスを取り出す。

ネックレスは、銃に変わる。

ケタケタ笑ううっとしい悪魔に、思いっきりぶちかましてやった。

煙がまう。

まだ、原型をとどめている悪魔を見つけて、私はため息をつく。

だが、悪魔はすばやい動きで、走り回った。

ついてこいよ

そんな挑発的な顔を見せ付けられ、私は仕方なく挑発に乗った。

「=h/jds4g8wh0yewbo93#(@g!” ワタシニ…チカラ……ヲ…」

私の足に小さく生える―羽

それを使って、すばやいスピードで走り続ける悪魔を、追いかけた。

追いかけている間に、銃はどんどん大きくなる。

それにともない、悪魔の顔もひきつる、怯える、焦っていく。

そんなのお構いなしに、銃を大きくしていく私。

追いついたところで、今度は間近で顔面にぶちまけてやる。

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ」

叫びにならない叫びで、悪魔は消える。

と、同時におじさんの作った空間も消える。

いつもの町並みに戻っていた。

少し離れたところで、あの20代前半の男は倒れていた。

!!

拍手の音が聞こえて振り返る。

「お見事お見事」

おじさんだ。

「ご協力、ありがとうございました。」

少し棘のある言い方で言う。

「どういたしまして。」

やっぱりねっとりとした言い方のおじさん。

私に背を向けて、手をひらひらとふりながら去っていく。

「あんた、何者ぉー?」

大きな声で叫ぶ。それでもおじさんは去っていく。

きっと聞こえているけど、無視しているのだろう。

まぁ何者でもいっか。

そう思って私も、ネックレスをポケットに入れ、背を向けて歩き出す。

綺麗な夕日が出ていた。



「ねぇ、もし魔法が使えたら、どうする?」


初めは、何も答えられなかった。


「魔法使いになって、あたしらのところに来なよ。どう?」


今考えれば、本当にあれで良かったのだろうか。

でも、後悔はしていない。


あの日、私は―。


魔法使いになった。

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