阿久澤、倉科、馬鹿夫婦
「りゅーたん♡」
「なーに?かな♡」
超高層マンションの最上階ペンション。
そこに超がつくラブラブ馬鹿夫婦が住んでいた。
〇ラックマとコリ〇ックマの着ぐるみパジャマを着用し、白を基調とした高級ソファに抱き合いながら腰を下ろした。
「今日のりゅーたん、カッコよかったよー」
「かなも…可愛かったー!」
「ちょっ、りゅーたん」
見てるこっちが恥ずかしくなる。…というよりか、書いてる自分が恥ずかしい。
ま、話を戻して……
いつもの様にイチャイチャ時間を満喫していると、
2つの携帯が同時に鳴り出した。
その瞬間、二人の顔つきが一変する。
「俺だ、梶本か」
梶本とは、隆の秘書だ。
「私よ、何か問題発生?福嶋」
福嶋も同じく叶多の秘書である。
あの甘々しい声は何処えやら…
今や二人はバカ夫婦から一企業経営者の顔へと変様した。
〇ラックマ姿の隆はiPadを取り出し、オフィスにいる梶本から送られたデータを閲覧するその顔はまるで鬼。指摘点を瞬時に把握すると梶本に的確な指示を出していく。
「この企画の責任者はクライアントの要望を掴めていない。だからクライアント側が用意した費用を大幅に超えてしまってるんだ。もう一度根底からやり直せ。明後日の会議までには企画書を見せろ」
『分かりました、そう伝えます。それと阿久澤さん…別件なんですが』
「なんだ」
「最近倉科側の動きが派手なんです。我が社の顧客率20%が既に倉科コンサルタントへ流れています。
何か早めに策を打たないと…」
「そうか、分かった。報告ご苦労」
ピッと終了ボタンを押した時には叶多は既に部下との通話を終えていた。そして、隣の隆に意味ありげな笑を送る。
隆も負けじと笑い返す。
「やるじゃないか、倉科。君の客30%を奪ったのは半年前だったが、既に半数以上を奪い返されるとは…」
「これで分かったでしょ、女を怒らすと怖いって事がね。それより…」
「ん?」
「ダーメーでしょー。家では仕事の話はしない、勿論お互いをライバル視しないって結婚する時約束したじゃない」
ほっぺを膨らませ駄々を捏ねる子供の様な表情は、先程のキャリアウーマン顔から比べたら全く別人だ。
それは隆も同じだった。
「ごーめーん、叶多♡つい忘れちゃったよ。
お詫びに」
叶多のほっそりとした頬に優しくチュッとキスをする。チークを塗ったわけではないのに、叶多の頬はほんのり丁度よく赤に染まった。
「りゅーたん」
「かな」
2つの唇が重なり合う瞬間、セットしたオフタイマーで部屋の灯りはパッと消え2人の姿は見えなくなった。