An event to marriage-8:デルレイ視点
以前に、ちょっとだけ登場したこの方視点。
2日前から俺の上司であるランス・アイルズバロウ魔道士長の機嫌がすこぶる悪い。
原因は分かっている。彼が可愛がっている姪っ子と、上司の天敵(ちなみに上司が勝手に認定している)特級魔法騎士ジュード・クラドックの結婚が決まったからだ。
「ジュードはいい奴だし、お似合いじゃないですか」
「ふん。結婚までが早すぎるのが気に食わないし、自分がきっかけを作ってしまったのは、もっと気に入らん」
「ランス様。そ、それは拗ねてるんですね」い、いかん。思わず吹きそうになってしまう。
「デルレイ・・・・きみも妻や息子と同じことを言うか。・・・仕事、増やしてやろうか」
「申しわけありません。受け持ちの案件について処理しなくてはいけませんので。
そういえば、披露パーティには私も招待されました。一度アイルズバロウ治療院の先生方にお会いしてみたかったので、楽しみです」
「きみは奴(上司はジュードをこう呼ぶ)の親友だからな。なんなら、私たちと一緒に行くかね」
「お断りします」
「上司の誘いをあっさり断るのはきみくらいだ。デルレイ」
「人からお世辞言われたり、ゴマすられるのが嫌いなランス様に言われたくありませんね。それでは私はこちらの案件を処理しますので」と書類を持って個室に向かう。
俺は、仕事の合間に3日前の出来事を思い出していた。
ジュードが、約束もなしに魔道士団に現れたとき、俺は団員と一緒に一息入れていた。
俺がいつもふらっとあいつのところに行くのは普通なので、魔法騎士団では誰も驚かない。
しかしジュードが魔道士団にふらっと現れるのは珍しいことで、魔道士団にざわめきが起こった。
「デルレイ、いま時間は大丈夫か」
「珍しいな。ジュードがこっちにくるなんて。時間?時間は作ればいいのさ。俺の個室行くか?」
個室に行くなり、ジュードは「ぜひ来てくれないか」と1通の封書を差し出した。
なんだと思い開封すると、そこにはあいつの名前と恋人の女性の名前・・・・・・・“結婚披露パーティ招待状”の文字がある。
「おまえ、結婚すんの??この名前は、この間白状した彼女でランス様の姪だよな。」
俺は普段、何事にも動揺しないように心がけてるんだけど、このときは驚いた。
・・・・行動速いな、ジュード・・・・
「そう。パーティ場所はレナード・アイルズバロウ邸」
「この、封書ってランス様の手元には・・・・」
「ベルから行ってるんじゃないのかな」
俺は頭の中に、招待状が自宅に届く→開封した奥様が内容を見て喜ぶ→その後帰宅が早いほうから順繰りに見せる→ご子息と奥様は喜んで祝福→ランス様憮然・・・な状態が頭に浮かんだ。
「・・・・おまえ、明日ランス様がにらんできても気づかないふりしろよな」
「魔道士長は、公私混同しない人というのは分かってるからね。」涼しい顔のジュード。
さすがだ。魔道士長の性格をよく知っている。
「それもそうだな。それにしても、おめでとうジュード。よろこんで出席するよ。」
「ありがとう。」ジュードは本当に幸せそうで、今なら俺がうっかり攻撃魔法をかけても許されそうだ・・・・後々恐ろしいからしないけど。
そして、俺の上司は現在、機嫌が悪い。でも仕事はきっちりこなし、ジュードともにこやかに話す。
うーん。八つ当たりされてるのは俺だけかい。ま、拗ねてるランス様もなかなか面白いので別にいいか。
それにしても、俺と同じように「来るもの拒まず、去るもの追わず」で女性関係が華やかだったジュードがいつのまにか「特別な女性」を見つけていたというのは、不思議な感じだ。
恋人以外は目に入ってないジュードというのをこの目で見る日がくるとはね。
俺も、そろそろ考えたほうがいいのかな。親友の結婚で感化されてるだけかねえ・・・・。
読了ありがとうございました。
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デルレイ視点、いかがでしたか。