好きと言うまで -1
今回から本編です。
プロローグから3年後。
私、ベル・アイルズバロウ23歳。
21歳のときに持ち帰り専門店としてスタートした店は「ベルカフェ」として昨年カフェスペースもオープンした。
私は店の玄関脇に置くボードに、ペンで本日の限定パンと本日提供のお菓子、
ランチ限定のスープを書き込んだ。
軽く伸びをして空を見上げる。今日もいい天気になりそう・・・・。
カフェになっても、副業だった頃のお客様や持ち帰りの頃に常連になったお客様も来店してくれて、お店は客足が絶えない。ありがたいことです。
ここはテーブル2席、カウンター席4つの小さなお店だけど、私の城だ。
王宮のあるメイン通りから1本入った旧市街にお店はあり、1階が店舗で2階は私の部屋。
クリーム色の壁に焦げ茶色の窓枠。焦げ茶色の屋根。気持ちよく日差しが入るこの家。
私が理想として描いていた物件を見つけてくれた王都に住んでいる当主様(おじいさまの兄)には今でも感謝しきれない。
お店に来店する人たちには、心底リラックスしてほしいから、私は店全体に癒しの魔法をかけておくことも忘れない。持って生まれた能力を使わないのは、もったいない。
・・・・物思いにひたっていると、「おはよう。ベル~」と声がかかった。
入ってきたのは販売とカフェスペースで働いてくれているアデル。
彼女を紹介してくれたのはやっぱり王都に住んでいる父の従兄で当主様の息子であるランス伯父様。
もともと彼女は伯父の家の執事さんの娘さん。
年齢が同じで、小さい頃からの親友だ。
本当なら、伯父の家でメイドとして働く予定だったのだけど、私が店を開くことを聞いた彼女が
手伝いを申し出てくれたのだ。
給料が払えるか分からないから気持ちだけ受け取る、と言う私にアデルは「親友を手伝わないなんて考えられない。」と言い出したうえに、伯父が「じゃあ、うちのメイドとして手伝いに行くということにして給料は私が出そう」などと言ったものだから、アデルは「出向」扱いということになった。
アデルは店が一番忙しい開店から3の時までをこちらで働き、その後は特に忙しくない限り伯父の屋敷で通常時間まで働く、という条件がまとまり現在は重要な戦力として働いてくれている。
アデルは「ベルに恋人が出来た日にはランス様やベルのお兄さんたち、邪魔しまくると思う」と、よくからかう。「だけど、私やおば様たちは味方だから!!大丈夫!!」とも言う。
そんな彼女には常に恋人がいて、私は羨ましく思いつつも、
そういえば、学生時代って、よく出会いのお茶会みたいの開催されてたらしいけど
私に声はかからなかったよなぁ。
友達は出来たけど、女性ばかりだったし。
恋人かぁ・・・・出会いないし、今は別に必要ないかも・・・・などと考えていた。
私は「人生はどう転がるのか予測できない」っていうのを実感することになるとは
そのとき思ってもいなかった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
時代設定などは特にないです。
魔法がちょっと出てきますが、冒険や戦いは出てきません。
今後も日常生活中心となります。ご了承ください。