ふたりは恋人 –7
2011年9月5日13時~16時頃、「小説家になろう」様がメンテナンスをするそうです。
ヒーローが不在のため、恋愛には程遠くなっています。
しかも、ちょっと長いです。すみません。
ジュードが演習に行って2週間。
「明日、行くから」とユアン兄から通話魔法で話がきたのは昨日のことだ。
一番上の兄、ユアンは実家の治療院を継ぐため、祖父や父と共に働いている。
治癒魔法だけじゃなくて様々な魔法に長けているため、ランス伯父から魔道士にならんか、と誘われたのだが、治療魔法が性にあってるからと実家の治療院にあっさり戻った。
彼もまた周囲の人間から「変わり者」認定されたアイルズバロウ家の人間だった。
開店前にアデルにユアン兄が来ることを伝えると
「いつ頃いらっしゃるかしらね~。私、ユアン様の顔、好きなのよ~。」
「・・・・・アデル、顔って・・・・」
「ベルには悪いけど、あの性格はどうかと思うのよ。でも見るぶんには素敵よね~」
「・・・アデル、その意見は多数派だから、気づかいはいらないよ」
「多数派って?」
「今は兄のことを理解してる素敵な恋人がいるからいいけどね。
昔はさ、週末ごとにデートしてる女性は違ってたよ。どうやらみんな、外見から入って、兄の少し策士な性格についていけなくなるらしくて。」
「うわ~、でもありえそう」
「ありえそうじゃなくて、事実だって」と二人で話していると、
「・・・・・なぜ、ベルがそういうことを知っているのかな?」後ろから私たちとは違う男性の声が聞こえた。この声は・・・・・
いつ入ってきたのか、砂色の髪に藍色の瞳を持つユアン兄が立っていた。私たちの話を聞いていたのか、整った顔が若干怖い・・・。
「あ!!ユアンお兄様!!お茶いれますね~~」私はお茶の準備をした。
ここは笑ってごまかすんだ、私!!アデルは外を掃除するために店の外に出た。逃げたな。
ユアン兄にお茶と、焼いたばかりの本日のパン「オレンジのペストリー」を出した。
「ベルにはごまかされてあげますよ。クリスにでも聞いた?」
「・・・・違うよ~。前に何度か見かけたときにいつも違う人だったから~」
「ふうん。・・・まあいいだろう。」
「そういえば、クリス兄は今、演習中で王都にいないよ?残念でしたね、お兄様っ。」
「ちょっと聞きたいことがあったので、クリスには演習先に行って会ってきたから。」
ユアン兄は私に、にっこりと笑いかけた。
「ランス伯父から、興味深い話を聞いてね。ベル、ワイラー伯爵令嬢に誘拐されたのをジュード・クラドック卿に助けられたんだってね。・・・・伯父から聞いて家族一同驚いたよ。しかも、その後ジュード卿とつきあっているそうじゃないか」
「えっ・・・なんでそれを」あ!自分で言っちゃったよ。昔からユアン兄の前ではごまかしが効かない。ユアン兄は、さらにちょっと悲しげな口調で、
「どうしてクリスは知っていて、俺には教えてくれないのかな?兄ちゃんは悲しいよ。ま、伯父から話を聞いた後、クリスにじっっっくり聞かせてもらったのでそこは勘弁してあげよう。」
「私に直接聞けばいいじゃない。・・・ちゃんと言ったのに」私は、わざと悲しそうに言ってみた。昔はこの手が効いたんだけど・・・・
まだ有効だったらしく、ユアン兄はちょっと動揺して「う・・・。そうか。それは俺が悪かったな。でも、お前に言われる前にジュード卿を見たかったんだよ」
「はい??」見たかった?まさか、そのためだけに演習先のクリス兄に会いにいったのか。
「ま、俺だけじゃなくて他の家族も、ベルが助けてもらったことのお礼を言いたい。
そこでだ、今月末のアイルズバロウ治療院で行われるバザーに、ジュード卿を誘ってみてくれないか?俺も、今度はきちんと挨拶したいからね」
優しい口調で言っていても、これは間違いなく命令だった。
次兄が言っていた長兄、登場です。
いちおう、ヒーローと似たもの同士のイメージなのですが、どうして書くと違うようになっていくんだろう・・・?
イメージどおりに書くことができる作家さんはすごいです。