ふたりは恋人 -3
少し長くなってしまいました。
申しわけありません。
小さい頃から蚤の市が好きだった。
両親や祖父母にくっついていき、ままごと用の食器や、きれいなガラスのブローチを買ったりした。
今は、カフェと家で使うちょっと昔の陶器や、飾る小物を買うことが多い。
おもちゃ箱をひっくりかえしたような雑多な感じと、とことん探してお気に入りを見つけたときの高揚感といったら、新作のパンやケーキが満足な味で完成したときと似ている。
故郷の蚤の市も大きかったけれど、さすが王都。品揃えといい、規模といい、故郷の蚤の市は比べ物にならない。
「おはよう、ベル」ジュードが店まで迎えに来て、二人で東の広場まで歩いていくことにする。
「おはよう、ジュード。ジュードは蚤の市って行ったことありますか?」
「物は買ったことないけど、警備ならしたことがあるよ」
「じゃあ、お客さんとしては初めてですか?」
「そうだね。ベルはいつも何を見ているの?」
「5~60年くらい昔の陶器が好きなんです。値段も手ごろでデザインが面白くて。カフェの食器とか、パンやケーキを並べる大皿も、その年代で揃えたんです。住居でも、使ってます。実家の祖母が好きで影響をしっかり受けてしまいました。」今日も掘り出し物があるといいな。想像するだけで楽しくなっちゃう。
「へえ・・・・ベルは最新のものより、古いものが好き?」
「最新のものも嫌いではありません。だって、便利でしょう?だけど、食器とか小物は、少し昔のものが好きです。ジュードはどうですか?」
「うちの食器は、先祖伝来のものが多くてね・・・小さい頃は割ると怒られるんで、食事時が憂鬱だったよ。だから、学校の寮で、割れない食器に出会ったときはほっとした。」
「私の実家は、食器はいずれ割れるものだから、が前提でした。割れたときは、その食器の役目が終わったときだからちゃんと片付けるように、と祖母から片付け方を教わっていました」
「その考えは、いいね。」
「ありがとうございます」
先祖伝来の食器で食事ってすごい世界。公爵の家ってそういうものなのか。
東の広場で開かれている蚤の市は、たいそうな賑わいを見せていた。
どうみてもガラクタな雑貨を堂々と売っていたり、貴金属、食べ物・・・・とにかく何でもある。
「あの、ジュード。私、じーっと見入ってしまうので退屈かもしれません。どこかで集合場所を決めて別行動にしたほうが良くないですか?」
ジュードは心外だという顔をして私を見た。
「俺はベルといて退屈だったことはないよ。そばにいるだけで楽しい。」
・・・・甘いこと言ってますよ、このひとは。
「それに、ベルがさらわれないか、心配だし」
・・・・・・誰がさらわれるんだ。私が真っ赤になるのが、そんなに楽しいのか、この人は。
「さ、はぐれないようにしないとね。」
ジュードは私の手をとって、しっかり自分の手に絡ませ市場に向かったのだった。
「ちょっと、ジュード!!手をつながなくても大丈夫ですって!」
「俺がいや」
ああ、市場ですれ違う人(主に女性)がジュードを見てうっとりしたあと、私をみて微妙な顔をしていく・・・。
このときほど、自分の容姿が地味だということを再認識したことはなかったのだった・・・。
読了ありがとうございました。
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うわあ、お一人でも見てくれる方がいれば・・・と思っていたら、こんなにたくさんの方がっ!!
ありがとうございます!!