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プロローグ2

 

 提示されたルールは逆鬼ごっことも言うべきものだった。

 じゃんけんで逃げる人を決め、残りの全員で追いかけて捕まえた人の勝ち。

 逃亡者は20分逃げ切れば勝利となる。

 一見逃亡者に辛いルールだが、全員が納得したので問題なし。

 治樹さんは決まったら教えてくれと言って自室に引っ込んでしまったのでここにいるのは4人。


『じゃーんけーんぽん!』


 俺と透と鏡花はパー。

 綾さんはグー。


「では私が逃亡者ですね、見事逃げ切って見せましょう」


「ふふふ、その自信がどこまで続くかな……?」


「鏡花、ちょっと小物くさい」


 俺達は綾さんが出発してから10秒後にスタートだ。


「では……スタート!」


「いってらっしゃーい……って速い!」


 あっという間に走り去ってしまう綾さん、想定外の速さだ。


「あー、綾さんこっそりと体鍛えてたりするからねぇ」


 鏡花がしみじみと頷く間に透が残り時間をカウントしていた。


「じゅーう、きゅーう、はち、ななろくごよんさんにいいちぜろ」


 実質4秒くらいだった。

 だが俺はそれを咎めずに走り出す。俺も出来るなら自分の好きなものが食べたい。


「よっしゃあ! 待てー!」


 先行したのは男の俺、ではなく鏡花。うちの女性陣の足の速さに男のプライドがちょっと傷ついた。


「ま、待って~」


「……」


 後ろからわたわた追いかけてくる透にちょっと和んでみたり。

 ともかく、追いかけ始めるとすぐに綾さんを捕捉することが出来た。


「ちょっと早くないですか、ちゃんと10秒数えたんでしょうね?」


「はあ~ん? 何のことやらさっぱりわかりませんなあ、要は勝てばいいのだ!」


「鏡花、それはずるしたと言ったも同然だし、なにより完全に悪役だ」


 俺の突っ込みもテンションマックス状態の鏡花には通じない。高笑いを上げながら綾さんとの距離を詰めていく。


「そういうことなら……、こっちも容赦しませんよ」


 綾さんが俺達に向かって手をかざす。

 手からほんのりと光る糸が伸びて、廊下の途中にあるドアにくっつくのが『俺には見えた』。


「まずい、鏡花避けろ!」


「へ? へぶっ!?」


 ドアの横を通り過ぎようとした瞬間、突然ドアが開き俺達の障害物となった。

 事前に察知できた俺は何とかすり抜けることが出来たが鏡花はそうもいかず、まともにぶつかって蛙の潰れたような鳴き声をもらしていた。


「やっと追いついたって、どうしたの鏡ちゃんしっかりして!」


「透、鏡花の面倒を頼む!」


 倒れている鏡花を見て驚く透が背後に『見えた』ので後を任せて俺は綾さんを追いかける。


「綾さん、それってありなんですか!?」


「あら、勝てばいいといったのはそちらでしょう?」


「俺が言ったわけじゃない!」


 綾さんは先ほどのように俺の進路を塞ごうとしてくるが、事前にどれが動くのか『見えている』ので、かわすのは難しいことではなかった。

 しかし、元々の速度差かなかなか追いつくことが出来ない。

 ……うん、もうちょっと体鍛えようとこっそり誓った。


「なかなかやりますね、しかしこれならどうでしょう?」


 そう言って彩さんは庭に繋がる大きな窓を開け、糸を伸ばした。

 何をするつもりなのかは知らないが動きを止めたのはチャンス、全力で距離をつめて捕まえようと手を伸ばす。


「はっ!」


 手が届くその刹那、綾さんは素足のまま外へ飛び出し、


「なっ!?」


 追いかけて庭に出た俺は目を見張った。

 綾さんは糸をくっつけて浮かせた石や小物などを足場にして空中を駆け上がり、軽やかに屋根に飛び乗っていた。


「無茶苦茶だ……」


「能力の有効活用と言ってください」


 むしろこの上なく無駄遣いではなかろうか。

 しかし困った、俺には綾さんのように庭から屋根まで至ることの出来る方法は持っていない。精々どこかから梯子を持ち出してくる程度。

 ほぼ自由に昇り降り出来る綾さんに追いつくことは難しい。


「追いついた! 綾さんはどこ!?」


 諦めかけた俺の前に、復活した鏡花が走ってきた。

 未だに鼻の頭が赤いのは見なかったことにする。


「あそこ」


 俺が指射す先には身を翻して走り去ってゆく綾さんの姿。


「逃がすかぁ!」


 鏡花が足に力を込める。

 鏡花のの両足がほのかに光りだすのが『俺には見えた』。


「ラ○ダージャーーーンプ!」


 今度こそ俺はあきれてものが言えなかった。

 数メートルは軽くある屋根の上まで跳躍する姿を見たら誰だってそうなると思う。


「ま~て~~~~」


 遠ざかっていく鏡花の声をただ見送ることしか出来なかった。


「はあ、はあ、あれ、鏡ちゃん達はどこ行ったの?」


 ようやくやってきた透は息を整えてから不思議そうに尋ねてきた。

 その時、俺の頭に閃くものがあった。


「透」


「なあに?」


「手を組もう」







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