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本音が聞こえる痣持ち令嬢と13歳の婚約者候補。

作者: ロミ
掲載日:2026/11/04

死ぬシーンがあります。苦手な人はご注意下さい。

 


「「「魔女だ、魔女の子どもだ。出せ出せ!連れ出せ!火炙りだ」」」


 雑貨屋のおじさんが、花屋のおねえさんが、隣に住んでいたおばあさんが、手に鎌やシャベルを持って、行進して行く。

 狂気じみた信念は、村を巻き込み、顔なじみの隣人達が群衆となって友達の家に迫っている。


 怖い、怖い、怖い。

 友達は震えている。


 私は友達の手を掴み、家を飛び出した。


 後ろから、大勢の足音と、「探せ!」と怒号がする。


 子供の私達は遠くまで逃げれなかった。


 民家の軒下に隠れ、私は友達の服をはぎ取った。


「大丈夫。私の血は赤い。魔女じゃないって証明できるから」

 友達は、「駄目だミギー」と言ったけど、


 私は友達の紺色の服を着て、民衆の前を駆けた。

 少しでも遠くへ、友達が逃げれるように。


「いたぞ!」

 私は、三つ編みにしていた髪を掴まれ、引き倒された。


 急いで立ち上がったら、棒で頭を殴られた。

 私の意識はそこで途絶えた。



 気が付いたら、十字架に縛られ、足元には薪がくべられていた。


「赤い血が流れているぞ、あの子は魔女じゃない」

「騙されるな、魔女の幻術だ。青い血を赤に見せているだけだ」

 民衆が言い争っている。


 目にかかる赤い血で視界がぼやけるが、私は民衆を見下ろした。

 友達は見当たらない。

「友達は逃げれたんだ。良かった」


 言い争っていたおじさんが、私が縛られてる十字架に火を放った。


「私は魔女じゃない。助けて。熱い、熱い」


 薪に付いた火は、一気に膨れ上がり、私の皮膚をジリジリ焼く。三つ編みがチリチリ溶けていく。








「助けて!」

 私は夢から覚醒した。


「また、同じ夢…。」

 額の汗を、火傷のような痣がある左手で拭いた。


 その手で、左の顔を覆う。左の顔にも生まれつき火傷のような痣がある。

 この夢を見たときは、痣がうずくような気がするのだ。


「お嬢様大丈夫ですか」

 私の部屋の扉を開け、専属侍女のマリーが駆けこんできた。


「…。大丈夫。また怖い夢を見たの」


 マリーは、近くに置いてあった水差しから、コップに水を入れ私に差し出した。

「サーシャお嬢様、落ち着いたら、湯あみをいたしましょう」


「ありがとうマリー、そうさせてもらうわ」


「はぁ~」

 私はマリーが部屋を出た後、大きくため息をついた。

 今日は婚約者候補の方と面会。憂鬱だ。




 ◇◇◇




 私は、ヤマト王国に4つしかない侯爵家の1つ、マキシマ侯爵家の一人娘。

 黄金に輝く髪に、白い肌。透き通った青い目を持つサーシャ18歳。

 だけど、左顔面と、左上腕には生まれつき火傷のような痣がある。

 そのため、社交界では『痣持ち令嬢』や『怪物令嬢』などと呼ばれ、美しさ第一主義の貴族社会では嫌煙される存在だ。


 そんな、私にお父様がまた婚約者候補を連れてきた。


 私に婿。無理、無理。

 いつもは半分仮面をつけ、手袋をはめて生活している私。

 学園で、仲良くしていた男子生徒に仮面を外した顔を見られてドン引きされたトラウマがある。

 どんなに、やさしく紳士的でも、私の顔面はアウトらしい。


 初恋だった私は、泣いて泣いて泣きまくった。

 それから悟りを開いた私は、お父様に親族から跡継ぎを決め、自分は田舎で隠居暮らしをしたいと申し出たのだ。お父様にとっては良くなかったらしい。


 お父様が連れてきた婚約者候補。

 面談も30回目になる。つまり私は30名と面談しているのだ。


 皆私に興味深々。

 侯爵家の一人娘に気に入られようと、あの手この手で自分をアピール。

 でも、私が手袋を外すと、皆一様に引きつった顔になる。


『うわ、気持ち悪い』『酷いな触りたくない』

 私の外見を批判する声。

『思っていたより酷いな。顔も同じなのか、こんな痣もちに侯爵家を継がせるのか』

『化け物じゃないか、これじゃ、女として見れないな』

 私を女性じゃないと、対象外だと拒絶する声。

『侯爵家。魅力的だ。痣だけで諦めるには惜しい。子供ができたら愛人を作るか』

 侯爵家の権力、財力につられ、私を蔑ろにする声。


 今までの婚約者候補者との面会で、結局私は愛されないし、愛せないんだと学んだ。


 私は、半径1m以内にいる生き物の声を、意識すれば聴くことができるし、お父様とは会話もできる。

 物心ついた時からの能力(読心力)。

 この世界に、魔女狩りはない。魔法もないし魔力もない。魔物もいない。ポーションもない。

 私の読心力は特殊だろう。私に能力があると知ってる人はお父様だけだ。


 お父様には、申し訳ないが、婿は諦めて欲しい。

 今回の婚約者候補との面談も時間の無駄だと思っていた。




 ◇◇◇




「始めまして、僕(・)はデスラー男爵家3男ジェラルド13歳です。よろしくお願いします」

 この世界では珍しい黒目黒髪。私と同じぐらいの身長。やせ型。まだ幼さの残る青年から、笑顔で挨拶された。


「始めまして、私はマキシマ侯爵家娘サーシャです。こちらこそお時間いただきありがとうございます。どうぞお掛け下さい」

 私は、家庭教師から褒めらるカーテンシーを披露した。

 彼が椅子に座る間に、お父様を一睨み。


 無言の会話。

(なぜ、こんな青年を連れてきたの?学園に入学したばかりですよね)

(・・・。)困り顔のお父様

(若すぎます13歳ですよ、しかも男爵)

(・・・・)眉間に皺をよせ泣きそうになっているお父様。

(もう、候補者がいないんですね)

(・・・そうなのだ)しょんぼり小さく頷いたお父様。


 はぁ~。

 私は、ジェラルド様に聞こえないように小さく息をはいた。


 さて、仕方ない。申し訳ないが心を読ませていただこう。


(なんて、綺麗な人なんだ)

 何?。私の事?。

 私は辺りを見渡した。この部屋に女性は私と、壁際に控える侍女のマリーしかいない。

 ジェラルド様は、私を見て微笑んでいる。


 そうか、左半分を仮面で覆っている私は、確かに美しいかもしれない。


 その後、ジェラルド様と当たり障りのない会話をした。

 彼の心の声と、実際に発した声に矛盾はなかった。悪い子ではない、純粋で真っ直ぐな子だとわかった。だから余計に、私のような化け物に一生を縛られるのは不憫だと感じて、今までの婚約者候補と同じように、左手の手袋をはずし痣を露わにした。


 一瞬の沈黙。


「その痣は痛みますか?」

(痛いのなら、男爵家で採れる痛み止めの塗り薬を持って来よう)


「え!?」


「え?痛みますか?」

(僕(・)の言ったこと聞こえなかった?)


「いいえ、痛みません」

 なに、この反応?心の声が不快感を示していない。私の腕は自分でも悍ましいと思うのだけど…。


「あの、この腕、気持ち悪くないですか?」


「?痛々しいですが、気持ち悪くはありません」

(令嬢としては致命的かもしれないけど、ただの痣だし、だから何?美しさは変わらないでしょ)


 うっ!

 嬉しい。でもでも、待って、期待しちゃダメ。

 この痣が顔面にもあるのよ。


「この痣と同じものが、私の左顔面にもあります。今からお見せますね」

 本当は、見せたくないけど、ジェラルド様の反応が知りたい。

 私は、意を決して仮面を外した。



 またしても一瞬の静寂。


「・・・ミギー」

 ジェラルド様は、大粒の涙を流しながら私を抱きしめた。

(ごめん、ごめん、ミギー。怖かったよね。熱かったよね、俺(・)が悪かった。会えた。やっと会えた。もう一人にしない)


「ジェラルド様!」

 私は驚いた、彼の心の中は謝罪でいっぱい。支離滅裂で混乱している。


 私に抱き着いたジェラルド様を、慌ててお父様と従者が引きはがし、床に押さえ付けた。


 ジェラルド様は、涙と鼻水でグシャグシャの顔を私に向け、

「ミギー。いやサーシャ。俺(・)と結婚してくれ。もう一人で君を行かせたりしない。俺が必ず守ると誓うよ」

(愛してる。愛してるよサーシャ。もう離さない、絶対に離れない)


 熱い、顔が熱い。耳が熱い。顔が真っ赤になっていると自分でわかる。

 ドクドクと心臓の鼓動が早い。口から今にも飛び出そうだ。

 私は動けない。

 彼の心の声が本物で。私に合えて嬉しいと。心の底から愛していると叫んでいる。


(私の人生、愛する事も、愛される事もないと諦めていたけど、こんな痣持ちの悍ましい私でも、愛していいの?愛されていいの?)

(ああ、俺の愛を受け取ってくれ、そして君さえ良ければ、俺を愛してくれると嬉しい)


 ジェラルド様から心の返事が返って来た。


 私は床に抑えつけられているジャラルド様に抱き着いた。




 ◇◇◇




 5年後、ジェラルド様の学園卒業式パーティー。

 23歳になった私は婚約者として出席している。


 5年前のあの日、ジェラルド様は私の顔の痣を見て、前世の記憶を取り戻した。


 前世で行われた魔女狩り。

 私と別れた後ジェラルド様は、母親や親族の魔女達の元に助けを求め、私を奪還しようとしたが時すでに遅し。私は焼かれて命を落としていたらしい。


 その後の魔女達の氾濫で国は滅びた。

 ジェラルド様は私を諦めなかった。


 後生で出会えるよう、何十年もかけて魔術を組みなおし、同じ時間に転生できるよう命がけで魔法を発動。

 同じ時間に転生できたが、記憶をなくし、夢の中だけミギーの姿を見ていたらしい。

 夢を見るたび、後悔と愛しさがこみあげていたそうだ。

 実際にミギーの産まれ代わりである私を見て、前世の記憶をすべて取り戻した。


 ジェラルド様と私の関係は良好だ。溺愛されていると言っても過言ではない。


 記憶を取り戻した13歳ジェラルド様は、体は子供、頭脳は大人。

 学園に通いながら侯爵家の領地管理の他に、前世の記憶を駆使してこの世界にはない魔術の術式の研究もしていた。

 そんなジェラルド様は、今では身長が伸び、青年から大人の男性へ、誰もが振り向くイケメンに成長した。




「サーシャ・マキシマ侯爵令嬢。権力でジェラルド様を縛るなんて最低です。ジェラルド様がかわいそう開放してあげてください」


 ジェラルド様が飲みものを取りに行っている間、一人になった私にピンクふわふわ髪、フリフリリボンのドレスを着た、女性が話しかけてきた。


「ん?。あなたはどなたかしら?ジェラルドの知り合い?」

 私はピンク頭の女性の心を聞いてみた。


「私、学園ではジェラルド様と、とーても親しくさせていただいているエリザベスと言います。美しいジェラルド様の横には私のような可憐な女性が似合うと思いませんか」

(この化け物、ジェラルド様から離れろ。自分の顔を鏡で見た事あるのか悍ましい。ジェラルド様には私のような可憐な女性が必要なのよ)


 まあ、久しぶりに悪意に満ちた感情を頂いたわ。

「そのようには思いません。ジェラルドは私を愛しています。あなたの入る隙間はありませんよ」


「まあ、侯爵令嬢は自意識過剰のようですね。ジェラルド様があなたの素顔を見ても、そんな事が言えるるのかしら」

(この女の仮面を外してジェラルド様に、化け物の顔を見せてあげる。ショックを受けたジェラルド様を慰めて私の虜にしてみせるわ)


 ピンク頭の女性は、勢いよく私に近づき仮面をはぎ取った。


 ざわざわざわ。


 遠目に私達を見ていた貴族達からざわめきが起きた。

「美しい」「なんて綺麗なんだ」「是非お近づきになりたい」


「うそよ、うそよ。何で痣がないの」

 ピンク頭の女性は私の顔に痣がないことに驚き、後ずさる。


 そこへ飲み物を持った、ジェラルド様が戻ってきた。

「あーあ。仮面を外してしまったんですね。美しいサーシャの素顔を知っているのは俺だけでよかったのに…。」


 ジェラルド様は、私の腰を引き寄せ。密着させた後、周りの貴族を睨みつけ牽制した。


「そこの女。私のサーシャに失礼を働いたな。覚えておけ、この国で幸せに暮らしていけると思うなよ」

(俺のサーシャに危害を加えようとしたんだ、報いは受けてもらう)


「うふふ。お手柔らかにね、ジェラルド様」

愛されるって、いいものね。







 おしまい。



ジェラルドは、溺愛するサーシャの為に、痣の消える術式を開発、サーシャの痣は跡形もなく消えました。

恋愛小説書いてみました。今度はコメディーではないはず。


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