タイトル未定2025/05/21 09:04
赤い記憶
第一章 地球への旅路
「着陸まで、あと12分だ」
艦長レイナの声がコックピットに響いた。静まり返る艦内に緊張が走る。
「重力バランサー作動中。大気成分、地球型に近いですが……塵の量が多いですね」
副操縦士のイルマがコンソールを見つめながら報告する。
「問題ない。生存圏調査チーム、すぐに準備を」
数世紀にわたる火星文明の終焉が目前に迫っていた。ポールシフトに伴う地殻変動と水位上昇により、多くの都市が水没し、資源は尽きかけていた。
「地球は、我々の“神話”の星だった。それが、現実になるなんてね」レイナは苦笑する。
第二章:地表との邂逅
船は大気圏を突破し、荒廃した大地に着陸した。草木はなく、錆びたような大地が広がっている。
「酸素はある。外部スーツで活動可能だ。行くぞ」
調査隊は地上に降り立った。風が吹き抜ける音のほかに、生命の気配はなかった。
「こっちに何かある!」
隊員のリスが叫ぶ。
そこには、風化した建物の残骸と共に、骨が無数に転がっていた。人間の骨だ。
「これは……人類の遺骨か? まさか……」
ハロルドが震える手でDNAサンプラーを取り出す。
「数体からサンプル採取します」
数時間後、船内ラボで解析が始まった。
「……信じられない。これを見て」
イルマがデータを表示した。遺骨のDNA配列が、火星人とほぼ一致していたのだ。
「一致率98.7%。これは、我々と同じ祖先を持つか、もしくは……」
「もしくは、我々自身だというのか?」
第三章:赤い記憶の目覚め
艦内は静まり返った。
「火星の古代記録に、“青き母星より渡りし者”という記述があった……」
ハロルドが目を細める。
「まさか、その神話が事実だったと?」
「理論上、火星に移住したのが我々の祖先だとすれば……何らかの理由で地球を去った。それが循環しているのかもしれない」
「つまり、我々は地球に生まれ、火星で文明を築き、そしてまた地球へ戻った……?」
レイナは唇を噛んだ。
「だとしたら、この地にあるこの骨たちは……前回の“地球人”たちということになるわね」
「彼らはなぜ滅んだ?」
「答えはここにあるかもしれない」
第四章:断片の真実
地下施設の探索で、彼らは古代のデータ保管装置を発見する。風化していたが、解析可能な部分もあった。
「地球文明、21世紀。環境破壊、核戦争……様々な要因が書かれている」
「文明の高度化が、自らを滅ぼしたのか」
「それを避けるために、火星に脱出した……?」
「だが結局、我々も同じ運命を辿った」
第五章:記憶の継承者
「繰り返すだけじゃない。今回こそ、終わらせるべきだ」レイナの声には力がこもっていた。
「この星には、再生の可能性がある。過去の教訓を無駄にしなければ」
「データをすべて持ち帰ろう。記録を継ぎ、次の世代に伝えるんだ」
調査隊は地球に基地を築き始めた。
再び、人類がこの青い星に根を下ろすために。
そして、文明はまた一つ、記憶を紡いでいく。




