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パメラさんと一緒に母屋へ向かう。

ちゃんと渡り廊下があるから雨でも安心だ。

校舎と体育館の間にあるやつを思い出す。


「飲み物とってくるから、この辺に座っててー。」

1階のロビーみたいなところは、カフェのようになっていた。

全面ガラス張りって事はないが、正面は大きなガラスをたくさん使っていて車屋さんみたいだ。


所々に商品を飾っていて、なかなかオシャレに仕上がっている。


遠くの席にギルドの人たちも座っていた。

太客っぽいのに、特別な応接室に通したりはしないらしい。

まぁ、そんな部屋が元々ないのかもしれないけど。


しばらく待っているとパメラさんが戻って来た。

隣にはお盆を持ったお姉さんも一緒だ。

パメラさんはカタログみたいなものを小脇に抱えている。


「お待たせ、とりあえず一服しよう。」

お姉さんからコップを受け取りながら、パメラさんがそう言った。

私とココアさんもそれにならってコップを受け取る。


「ぷはーっ、疲れた体に染みるねぇ…」

手渡された飲み物はオレンジ色の液体だ、きっとオレンジジュースみたいな物だろう。

ただ、この世界にオレンジがあるかどうかは分からない。


一口飲んでみる。

酸味はあまりなくて、甘いフルーツジュースだ。

何のジュースかわからないけど、パメラさんが飲んでるしココアさんも何も言わないから一般的な飲み物なのだろう。



「兄貴は説明しろとか言ってたけど、別に説明する事とか無いんだよなぁ…」

カタログをパラパラ捲りながらパメラさんはそう言った。


カタログを見せてもらうと、おそらくおすすめ商品であろうものがいくつか書いている。

私の感覚だと大して真新しいものは無いが、この世界では画期的な商品なのだろう。


逆に驚いたのはお届け日数の方だ。

当然自社製品などではなく、商会と提携しているお店で作っている物を配達する。

物によっては国の端から端への輸送となるため、とてつもない時間がかかるみたいだ。


在庫を余らせないためにほとんどの商品が受注生産になっている。

どうしても欲しい商品でもない限り、商会を利用する旨味は無いかもしれない。

私としては日用品などが買えれば良かったのだが、そういうのはその街にあるお店で買った方がよさそうだ。


これでも商会がやっていけるのは、やはりアイテムか。

アイテムなら長期の保存も効くし、サイズが大きかろうが大量だろうがアイテムボックスに入れておけばいい。


さっきアイテムを数えていた時も、ナマモノみたいな物も腐らずそのままだった。

パメラさんの話では、アイテムってのは使うまで状態が保存されるとの事だ。

使うって何?


私が拾ったのはゴブリンの石だったから何とも思わなかったが、モンスターを倒してドロップするアイテムは床に直置きだ。

さっきのお肉とかもきっと地面にポトリと落ちるのだろう。

数える時も当たり前のように倉庫の床に置いていた。


ぶちまけられはしなかったけど、扱いが雑だなとは思っていた。

そもそも床に落ちている物だしそういうものかと思っていたけど、状態が保存されているから大丈夫って事なのかもしれない。


その効果を利用して生鮮品などをアイテム化して運ぶとかも言っていた。

当然ナマモノなどは腐って届けられないと思っていたが、ちゃんとお届けできるらしい。


アイテム化とか、使うってのは良く分からないがアイテムボックスに入る物なら確かに輸送は楽だろう。

ちなみにアイテム化するには、アイテム化出来る人が必要らしい。

何でもかんでもアイテム化すればいいのにって思ったけど、専門の人が居なきゃダメならそうもいかないのかな。


アイテム化は出来ないけど、使うってのは早いうちに試しておいた方が良いかもしれない。



カタログを見ながらパメラさんと話しているとトーマスさんがやって来た。

そのままギルドの人の所に行くと思っていたら、他の人に紙を渡して言葉を交わした後こちらの方に向かって歩いてくる。


「おう、待たせたな。」

「待ってたっす!」

「いえ、カタログを診させていただいていたのですぐでしたよ。」

「………」〈ペコッ〉

それぞれあいさつを交わす。


「ギルドの方への対応は大丈夫なんですか?」

「ああ、そっちは俺の仕事じゃない。ここの支店の人間がやる事だ。」

言われて見てみるとさっきトーマスさんと話していた人が、ギルドの人の席で話をしていた。


「そもそも俺とパメラは、ここの人間じゃ無いからな。たまたまこの街に居たから使われたってだけだ。」

それもそうか、ギルドと商会の契約ならここの支店長さん?とかがやるのが筋かもしれない。


「んで、カタログに何か欲しい物あったのか?リリィは旅の途中だから、ここで注文しても意味ない気がするんだが…まぁ別の街で受取りも出来るから、ここで注文受けてもいいぞ。」

やっぱりそうだよね、私みたいな旅の人は商会とか利用しにくいんだ。


「いえ、パメラさんが持って来てくれたので見ていただけです。今日はコレの換金をお願いしに来ました。」

そう言って金属製の札を取り出す。


「ん、メモはどうした?パメラ、説明しとけって言ったよな。」

「そうだったんすね、商品の説明だと思ったっす…」

パメラさんは、またやらかしてしまったらしい。


「まぁ今日は荷下ろしもやったしな、次からは頼むぞ?」

「はいっす…」

パメラさんに注意はするものの、トーマスさんが少し優しい気がする。


そう言うとトーマスさんはお店の奥へ向かって行く。

トーマスさんも到着してすぐに荷下ろしで疲れてるのかな?

パメラさんも急いでトーマスさんの後を追って行った。


パメラさんも、トーマスさんがちょっと疲れている事を察したのかもしれない。

いつも怒られているイメージのパメラさんだが、実はすぐに気付くし察しもいい。

多分普段は甘えているだけで、やれば出来るタイプの人なんだきっと。

トーマスさんが厳しいのもそれをわかっているからなのかな。



「かなり最近のやつが手に入った、値が下がってなければいいな。」

そう言いながらトーマスさんが帰って来た、パメラさんも一緒だ。

トーマスさんの飲み物と、ちゃっかり自分の分のお代わりを持って来ている。


「そんじゃ説明するが、ここに書いてある値段はウチでの取り扱いの値段ってわけじゃない。一番新しい数字が最近のオークションでの落札価格って事に注意してくれ。」

そういって持ってきたメモを見せながら話してくる。


値段が決まって無いってのは、毎回競売をするからって事だったみたいだ。

そのままの値段では買取ってくれないらしい。

目安は最新の落札価格だけど、次回もその値段以上で売れるとは限らないしね。


私は一回やってみたい気もするけど、そもそもどこでやるんだろう?

少なくともここよりは大きな街とか、最悪首都でしかやってないかもしれない。

暇な人なら自分で参加してもいいけど、探検者の人は魔石を拾うたびに首都になんか行ってられないよね。


参加費とか、もしかしたら他にも手数料がかかるかもしれない。

それなら少し安くても買い取ってもらって、競売の事を考えなくていい方が楽なのかも。

って事は、今からトーマスさんと値段交渉をするんだなきっと。


「これは今月の新聞を写し終えた物だ。リリィも新聞を見て最新の価格を確認出来ると思うが、俺らは価格の推移も見るためにこうやって過去のも写しておいて比較する。まぁこのメモが信用出来ないって事なら最新価格の2割引きになるが、信用するなら推移から次回の価格を予想して少し高く買い取る事も出来る。」


やっぱり商会で代わりにやってくれるってシステムみたいだ。

村に居た時に返品出来ないって言ったのは、おそらくすでに競売場に持って行っちゃってたりするからだろう。

そもそも使い道がわからないけど、魔石は首都に行かなきゃ手に入らないって事なのかな。


それはそうと、新聞にそんな事が書いてあるのか。

何処社の新聞とか言ってないから、きっとこの世界の新聞はニュースってより経済新聞みたいなものなのかも。

貴族のゴシップとかを書いた方が大衆受けするような気がするけど、まだそういう文化が無いのかもしれない。


「私はトーマスさんの事を信じているので、メモの価格から値上げ交渉をしたいと思います。」

「流石リリィだな、メモを見て価格が下がり気味でも2割以上安くする事は無い。だったら価格が上昇傾向である事を信じて、交渉した方がお得になるって事だ。そもそも新聞を見ればバレるような事を商人がする訳ねーしな。」


信じているってのは嘘じゃないが、嘘だったら後から文句を言いにくればいいだけだ。

私はホテルに戻ってから新聞を見るつもりでいるから、価格の嘘を見破れる。

こんなにちゃんと説明してくれるって事は、2割引きの時点で相当マージンは取れているのだろう。


「んで、最新だとリザードマンの魔石は2800デルだな。傾向を見ても残念ながら横這いだ。通常であれば、2000デルってところだろう。」

2割引かれても2200は無いとおかしい、どんな計算!?


「そんなに取られるのはおかしいです。手数料の内訳を教えてください!」

「ははは、そう慌てるな。通常ならっていっただろ?」

確かに通常ならって言っっていた。


「じゃあ、リリィが魔石を持ってオークションに参加するとしよう。そうすると参加にまず100デル掛かる、これは会場の入場料だ。そして出品の場合、出品物が落札されたらオークショニアにチップを渡す。これはあくまでチップだ、相場は無いが今回は出品物の1割を渡す事にしよう。ここまでで質問はあるか?」

「ありません。」


「じゃあ出品物の1割を渡した体で計算してみよう。出品物の1割で280、それと参加費の100これで380掛かる。これが手数料だって言ったら信じるか?」

そんなに掛かったら2000を割り込んでしまう。


「それだと2000デルにならないと思います。」

「そうだな、じゃあ残りの分はサービスだって言ったらどうだ?」

2割で560手数料で380だと940だ、140おまけしてくれたって事?


「まぁそれなら2000デルが妥当なのでしょうか…」

「そう、だから通常は2000デル位になると思うぞ。」

え、トーマスさんがおまけしてくれて2000なんじゃ?


「リリィが手数料の内訳を教えろって言っただろ?あの時点でリリィは騙されてんだよ。商会側は2割貰えてる時点で十分利益が出てる、輸送やオークション参加を考えても十分なほどにな。そして通常ならって話だが、それは商人個人の利益を考えてリリィに吹っ掛けた額だ。計算が出来ない奴だったら、何の疑問も持たないところだ。リリィはおかしいと気付いたが、残念だったな。手数料ですよって言えばいくらでも値段を変えれるんなら、リリィの事をカモだと思った商人ならそれくらい取ってくるだろう。」


そういう事か、やっぱり2割でマージンは十分だったんだ。

私が手数料とか言い出したから逆にもっと吹っ掛けられた、これはすごくいい話を聞いた。

この先トーマスさん以外の商人さんとも価格交渉をするかもしれない、その時に足元をすくわれないように出来る。


「なるほど…勉強になります。」

「ははは、知らない商人と取引する時は気を付けた方がいいな。ちなみにだが俺の取り分も2割の中に含まれている、2割の中の1割が俺の取り分だ。今回だと560デルだから、56デルは俺が貰えるってわけだ。色を付けてやるって言ったが、色を付けられるのは56デルまでだぞ。それ以上は俺の自腹になっちまうからな。」


トーマスさんにもお金が入るのは何でだろう?

金属札を受け取るだけでお金がもらえるなら、みんな受付したいはずだ。

ここの店舗の人じゃなくて、トーマスさんが私に対応してもいいのかな?


「受付しただけで1割も貰えるんですか?」

「いや、俺が1割貰えるのはこっちの方だ。」

そう言って預かり証を取り出した。


村に出張して頑張ったから魔石に応じてボーナスを貰えるとか、そういう事なのかな?

それならトーマスさん的にも村へ行く価値があったのかもしれない。


「2300デルでどうだ?」

「自腹になるのに良いんですか?」

2300だとトーマスさんに4$の足が出ている。


「4デルくらい誤差だよ誤差、手伝ってもらったのは普通に感謝してるからな。」

「それならありがたくいただいておきます。」

トーマスさんに金属札を渡して、新たに取り出した受取証?にサインをする。


「それじゃあ取ってくるが、硬貨の指定はあるか?」

「これから小物をいくつか買いたいので、細かい方がありがたいです。」

欲しいものがたくさんあるから細かい方がいいよね。


「おう、少しだけ待っててくれ。」

そう言ってトーマスさんが奥へと向かう。

隣のテーブルを見るとココアさんが舟を漕いで、パメラさんもテーブルに突っ伏している。


ココアさんは病み上がりだし、パメラさんも疲れてるだろうからしょうがない。

何気なく外を見ると雨が上がっていた。

これなら街を歩けるだろうか、今はもうお昼は過ぎたのかな?


トーマスさんが戻ってきたらお店の場所を聞いてみよう。

お金も手に入ったし、ココアさんにも何か買ってあげようかな。


いつも『ダンジョンと白の魔女』を読んで頂いてありがとうございます。


これからも皆さんに面白いと思ってもらえるようなお話を書けるように頑張っていきますので、応援していただけると嬉しいです。

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