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ちょっと変な感じになりつつも、2人で1階まで下りてきた。


するとそこで見知った顔が目にとまる、トーマスさんとパメラさんだ。

私が着いたのが昨日なのに、2人は今日のこんな早い時間に着いたのか。


もしかしたら私たちが出発した日に商会の馬車が到着したのかな?

その次の日だったとすると、ルートが違ったり馬車が早かったりするのかも?


「トーマスさん、パメラさん。こんにちは。」

「おぉ、もう来てたのか早いな。」

「あ、リリィ!やっほー!」


ココアさんが私の後ろに隠れる。

私よりちょっと背が高いしリュックも大きい、正直全然隠れられてない。


報告があるとかでトーマスさんは2階へ上がって行ってしまった。

パメラさんは2階に上がらず、1階に残るようだ。



「あれ?リリィ、その子は?」

パメラさんの発言で、ココアさんの耳がピクピクと動いた。


ここで適当に答えたら、またココアさんが落ち込んじゃうのかな…


さっきまではそんなつもり全然なかった。

でも今は、ココアさんと一緒に旅を続けるのもアリかなと思い始めている。


ココアさんはきっと一人が寂しいんだ。

最初こそ強がっていたみたいだけど、今ではこんなにおとなしい。

私だって一人は寂しいって思う。


いきなり身体が動かなくなったり、嘘つきパーティに騙されて置いて行かれたりしたんだ。

治してくれた私に縋る気持ちもわからなくない。


多分こんな感じだから、アイツらに騙されてしまったんだろう。

1人で何とかしろって言っても、また誰かに騙されるんじゃないだろうか。

それにさっきの姿を見るとほっとくのは危険だ、いろんな意味で…



「この子はココア、私のお友達です。これから一緒に旅をすることになりました。」

ココアさんの手を取り、パメラさんに向かってそう言った。


「ココアだ、よしくな!」

ココアさんが元気を取り戻したようだ、言葉遣いが戻っている。


「えー、リリィって友達いたの!?」

いきなり失礼な事を言われた、パメラさんの素直な感想なのかもしれないけど…

泣いてもいいかな?


「この人はパメラさんだよ、モーリーの村に居た時にお友達になったんだ。」

ココアさんにパメラさんの紹介もしておく、ワザと友達と言っておくのも忘れない。


「そっか、もう私が友達だったね。あはは…」

パメラさんは満更でもないようで、少し照れている。

試しに言ってみただけなのに、そういう反応をされるとこちらも嬉しい。


ココアさんを見ると、何故か警戒を強めているようだ。

友達って言っただけでそれは過剰すぎるでしょ…


「パメラさんもお友達だけど、私の仲間はココアだけだからね…」

そうココアさんに耳打ちする。


「そ、そうだよね…うん、わかった。」

ココアさんがモジモジしながら俯いた。

いやいや、チョロ過ぎるでしょ…



そんなこんなやっていると、トーマスさんが戻って来る。

何人か他の人も連れて来ているから、まだお仕事中かな?


「パメラ、着いて来い。報告だけのつもりだったが、ギルドは準備が出来てるらしい。」

「えー、マジっすか。了解っす…」

もしかしたら、今日はこの後オフだったのかな。

昨日クリスが報告に来ちゃったから、ギルドが準備を進めちゃってたみたいだ。


「リリィ、もう商会には行ったのか?」

「いえ、これから行こうと思っていました。」

トーマスさんに話を振られて、そう答える。


「それならちょうどいい、お前も手伝ってくれ。コイツだけだと時間がかかるんだよ…」

パメラさんの事を見ながらそんな事を言う。

確かにパメラさんはちょっと要領が悪いかもしれない、頑張ってるんだけどね。


「もちろんタダでとは言わない、タグの換金の時に色を付けてやる。どうだ?」

金属札の換金で色を付けてくれるのはありがたい。

トーマスさんと取引した方が私も気が楽だし、これはお手伝いしておこう。


「分かりました、ご一緒します。」

「交渉成立だな、それじゃ行くぞ。」

「リリィも手伝ってくれるの!?助かるよー!」

パメラさんも喜んでいるし、そんなにめんどくさい仕事なのだろうか…


「リリィ…私は?」

「もちろん一緒だよ。ほら、行こう!」

私達だけで勝手に話してしまっていたけど、こんなところにココアさんを置いてはいけない。

トーマスさんを見ると頷いているので大丈夫って事だろう。

ココアさんの手を引いてトーマスさん達について行く。



外に出ると、もちろん雨が降っていた。

でも今なら大丈夫だ、なんてったって商会の馬車がある。

正面の入り口だけは屋根が付いていて、濡れずに馬車に乗れる仕組みだ。


ギルドの人達は違う馬車に乗るみたい。

商会の馬車で行ったら、帰りは雨に濡れちゃうだろうし当たり前か。

ちゃんとドアの付いた箱型の馬車だ、見たのは初めてだけどやっぱりこういう馬車もあるんだね。


後ろの方から馬車に乗ろうとしたら、箱がいっぱいで入れないようになっている。

パメラさんが前の方から手招きしていたので、そっちに向かった。

この馬車は前から乗るタイプなのかな?


御者さんに挨拶してから中に入った。


「ちょっと狭いが我慢してくれ、どうせ直ぐに着く。」

中は荷物がいっぱいだった。

何が入ってるのか分からないけど、とにかく箱がたくさんある。

アイテムとかは全部パメラさんが持ってるはずなのに、この箱は何なのかな?


邪魔にならないように、端の方でココアさんにくっ付いて座る。

パメラさんも座ったが、トーマスさんは梁に手をかけて立ったままだ。

やっぱり人数オーバーなのかも、でも今更降りられない。



走り出したと思ったら、すぐに馬車のスピードが遅くなった。

本当に直ぐだった、車輪の音が変わったから商会の敷地に入ったっぽい。

程なくして馬車が止まる。


目の前は倉庫だ、荷物が多いからこっちに移動したって事か。

ここは屋根が無かったから急いで中に入る。


トーマスさんとギルドの人は、一旦母屋に行くらしい。

お店に帰ってきた報告とかもあるだろうし、これから検品します的な挨拶もあるのかもしれない。


しかし倉庫か、ギルドで聞いた倉庫な訳ないよね?

一応地図を確認してみる。

オジサンの地図とお姉さんの地図を見比べてみたが、全然位置が違った。


「パメラさん、この街って他にもこんな感じの倉庫ってあるんですか?」

「うーん…私はちょっとわからないかな。」

パメラさんはわからないらしい。


この倉庫は汚れや破損なんかは無いように見える。

でもこのサイズの倉庫の掃除だとしたら絶対に大変だ。

雨も降ってるし、倉庫の掃除はやらなくてもいいかな…



「それじゃあ先に始めておこう、荷物はたくさんあるからね。」

「はい!あ、その前に荷物を置いてもいい場所とかありますか?」

ココアさんはリュックとか大きい荷物をずっと持っている。

今のうちに端に寄せた方がいいよね。


「んー、じゃあこの辺に置いてもいいよ。」

ココアさんのリュックや剣を置かせてもらう。


「えっと、ココアさんも手伝ってくれるのかな?」

パメラさんに言われてココアさんを見る。


「難しいのは苦手だけど、力仕事なら任せてっ!」

ココアさんは、自信ありって顔で答えている。

まぁ、実際力持ちだから力仕事なら頼りになりそう。


「おぉー、それじゃあ馬車から荷物を持って来てくれないかな?御者の人に言えばわかるよ。」

パメラさんに言われてココアさんが外の馬車へ向かう。


そっか、御者の人は私達と一緒に倉庫に入らなかった。

きっと今荷物をまとめてるんだ。

私達だけ来ちゃってよかったのかな?


「リリィはこっちに来て。今から荷物を出していくから、種類とか数を間違えないように数えてね。」

いきなり荷物を出しちゃうらしい、箱とかに移さなくてもいいのかな?

それよりも書くものだ、メモ出来ないと私も覚えられないよ。


「あの、何か書くものはありますか?」

「そっちに黒板があるから、それに書いて!」

言われた方を見ると、入り口のそばに黒板がある。

急いで黒板に向かった。



最初はパメラさんがアイテムを並べていたのだが、あまりにも遅いため途中から一緒に並べ始めた。

ココアさんも荷物を運び終えて、今はアイテム並べを手伝っている。


アイテムを並べてる間にトーマスさんが戻って来た。

量が多いからしょうがないが、全然数えられてない。


「トーマスさんすみません、まだ全然並べ終わらなくて…」

「いや、流石リリィだ。そいつはほっとくと全部ぶちまけるからな、並べて置いてあるだけで助かる。」

パメラさんの方を見ると、顔を背けてしまった。


ぶちまけられなくてよかった。

そんな事されたら余計時間がかかっちゃうよ。

トーマスさんも来たし、メモはトーマスさんに任せよう。


だんだんチームワークも良くなってきた。

パメラさんがアイテムを出して、ココアさんがある程度並べる。

それを私がきれいに並べて数を数える。


こうすることで、パメラさんは次々アイテムを出していける。

ある程度整っている事で私も数が数えやすい。


「ポークの肉84個です。」

「あいよー。」

トーマスさんが黒板にメモする。


いや、ポークって豚と違うの?

見た目はいわゆるマンガ肉だ。

こんな骨の刺さったお肉、何処の部位だよって思う。

こうして数えていると、知らないアイテムがたくさん見れてなかなか楽しいかも。



「これで全部だよー。」

パメラさんがすべて出し終えたみたいだ。


「パメラ、残りは自分で数えろ。リリィちょっと変わってくれ。」

トーマスさんが最初の方に並べたアイテムへ向かう。

数え直すのかな、ちゃんとダブルチェックして偉い。

流石トーマスさんだ。


私が離れた後のアイテムを数え間違えたらしく、パメラさんが怒られていた。

ココアさんまでしょんぼりしている、2人ともちょっと不器用なのかもしれない。


「リリィ助かったよ、そっちの子もありがとな。」

どうやらこれで、私たちの仕事はおしまいかな?


「俺はこれから目録作りと金勘定があるから先に行ってくれ。」

「あ、黒板に単価が書いてあったので計算しておきました。」

トーマスさんがアイテムを数えている間暇だったので、計算しておいたのだ。

やっておいた事を言い忘れていた。


「おぉ、本当か?助かるわ。はぁ、パメラもこれくらい出来るようになればなぁ…」

パメラさんが立派な商人になれるのはまだまだ遠いかもしれない…


「おい、パメラ。聞こえてたのか?リリィたちを連れて先に行け、俺が行くまでに説明もしておけよ!」

「りょ、了解っす…」

かなりの数だったし疲れちゃうよね、まぁお仕事だからしょうがないけど。


ココアさんの荷物を回収してから、パメラさんと一緒に母屋に向かって歩き出した。


いつも『ダンジョンと白の魔女』を読んで頂いてありがとうございます。


これからも皆さんに面白いと思ってもらえるようなお話を書けるように頑張っていきますので、応援していただけると嬉しいです。

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