私は…誰?
しばらく歩いていると、ちょっとした広場のような場所に着いた。
ベンチが置いてあり静かで落ち着いた所だ。
確認したい事もあるし、ちょっとここで休んでいこう。
「ふぅ~」
手頃なベンチに腰を下ろして一息つく。
考える事は色々とあるが、やっぱりまずはさっき見えたステータスウィンドウだろう。
他人の画面が見れたのだから、自分のも見れるはずだ。
自分のステータスも確認しておきたい。
さっきはずっと背中を見てたから見れたんじゃ無いかと予想して、自分の胸の辺りをジーッと見つめてみる。
今度はすぐにウィンドウが出た。
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【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉
【14歳】
【魔女見習いLv1】
魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、魔女の手袋、魔女の鞄、革の小袋、木の棍棒
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私は14歳なのか、ふむふむ。
てか魔女見習いってなんだろ?あとレベルも書いてある。
自分のステータスだとジョブのレベルも見れるらしい。
他のは装備かな、魔女シリーズ多いな…
外套がポンチョで、服ってのはワンピースかな、靴はまぁ靴で、手袋はミトン。
鞄はリュックで、小袋はポーチ、それと棍棒…
無骨バットは、やっぱり棍棒らしい。何だか悔しい…
膝の上の無骨バットを見ると【木の棍棒】と書いてある。
あれ?人以外も見えるの?
足を見てみると【魔女の靴】と出た。
さっき自分を見た時もすぐに見れたし、もしかしたら見る力に慣れてきたのかもしれない。
無骨バットをベンチに立て掛け、猫リュックを降ろし膝の上に置いて猫の頭を撫でる。
やはり【魔女の鞄】と書いてある、君も魔女シリーズらしいぞ。やるじゃん!
その時、ふと違和感を感じる。何だ?
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【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉
【14歳】
【魔女見習いLv1】
魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、魔女の手袋、魔女の鞄、革の小袋
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猫リュックをベンチに置き手を離すと、また違和感がある。
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【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉
【14歳】
【魔女見習いLv1】
魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、魔女の手袋、革の小袋
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そして違和感に気づいた。ステータスから魔女の鞄と木の棍棒が無くなっている。
慌てて猫リュックを掴む。ステータスに魔女の鞄が表示された。
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【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉
【14歳】
【魔女見習いLv1】
魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、魔女の手袋、魔女の鞄、革の小袋
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触れてないとダメなんだ、いや逆に触れてさえいれば良いとも取れるけど…
猫リュックを背負い直して無骨バットを膝に乗せる。
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【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉
【14歳】
【魔女見習いLv1】
魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、魔女の手袋、魔女の鞄、革の小袋、木の棍棒
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私の荷物を誰かに拾われたりした時、私のだって言ってもシラを切られたらおしまいだ。
ちゃんと持っておかなきゃ。
ちょっと焦ったけど、とりあえず他も見よう。
◆魔女見習い
・能力ボーナス〈器用小上昇〉〈知力小上昇〉〈精神小上昇〉
・スキル〈初級毒生成〉〈初級薬生成〉〈初級攻撃魔法〉〈初級弱化魔法〉〈初級回復魔法〉〈初級強化魔法〉
ボーナスとかスキルとかたくさんあって強そうだ。
能力ボーナスはきっと能力が上がっているんだと思う。
でも器用とか知力や精神なんてすぐには確かめようが無い。
体力とか素早さなら走ったりして確認できたかもしれないけど…
どの程度上がってるのかわからないけど、今はいいかな。
スキルもあんまり試せそうにない。
毒とか薬の生成はおっきな鍋とかでグツグツ煮ながら木の棒で掻き回しそうなイメージがある。
なんかすごく魔女っぽい!
無骨バットをクルクル回して掻き回す動きをする。
「ふぇっふぇっふぇ、練れば練る程ほど色が変わって…」
てーっれってれー♪
うん、きっとこんな感じだ。
ついやってしまった。
キョロキョロ周りを確認したが見られたようすはない。
他のスキルもダメそうだ。
魔法は暴発したら危なそうだから村の中じゃ試せない。
回復魔法なら大丈夫な気もするけど、怪我とかしてないし。
そもそも使い方もわからない。
「う~ん…」
すると数人の子供たちが走ってきた。
「××××××」
「×××××××」
「×××××」
キャッキャしながら走り去って行く。
「俺が一番だー」「俺だって負けねー」「待ってよー」って感じだろうか?
いや、全然聞き取れないんだけどね…
お兄さんと会話できたから安心していたけど、言語の問題がまだ解決していなかったようだ。
ゲーム側で調整してくれたわけではなかったのか。
じゃあ、お兄さんが私のわかる言葉で話したことになる。
あの人ほんとに何なんだろう?
今思えば、あの時に【盗賊】も詳細を見ておけばよかった。
レベルもわからなかったし、他の人のは見れなかったかもしれないけど。
まぁそんな事を確認する余裕はなかったか…
一度ログアウトできたら色々調べられるかもしれないけど、落ち方がわからない。
いや、よく考えるとおかしい。
最初に歩く木の枝を見た時から変だった。
ゲームなんだからモンスターが出てきて当たり前だ、無骨バットが無くてもダメージ覚悟で素手で殴り倒せばよかったじゃないか。
死んじゃってもゲームなんだからまた最初からやり直せば良い。
それがビビって木に隠れたり、武器を見つけて覚悟を決めて、緊張の中一生懸命戦う必要などなかった。
お姉さんたちに見られて恥ずかしいと感じたことも、所詮あんなのはNPCだ。
恥ずかしがる必要なんかない。
まぁリアルなゲームに没入していたと言えなくもないが…
まだまだおかしなことばかりだ。
持ち物からヒントを得ようとしたのは理解できる。
結果手がかりはなかったが、とりあえず歩き回ったりしないか?
私ならするはずだ。
それがリュックの猫に話しかけるとか頭おかしいでしょ。
本当に14歳の女の子になったわけじゃあるまいし…
女の子になった…?
そうだ、自称ジョンが現れた時も何故あんなに怯えた?
多少大柄な男性ってだけで怯える必要はない、そもそもあれだってNPCだろう。
何なら自分が縮んだから大きく見えただけだ。
あれ?縮んだのに胸囲が増した?いや、今は関係ない!
その後だって、あのNPCは何だ。
おかしな言語を話したり、感情豊かだったり、プレーヤーに嘘ついたり。
何であんな嘘をつく必要がある、ステータス見たらモロバレじゃないか。
その後の私の行動だってそうだ。
仮にアイツが悪者だったとしても、急いで逃げる必要があっただろうか?
悪者に殺されたり、捕まって慰み者になったって、ゲームオーバーになるだけだ。
それなのに、本当に恐怖を感じたような感覚。
子供が走ったところで、大人が追いかけてきたら逃げ切れるわけもないのに走って逃げてしまう短慮さ。
冷静にゲームをプレイしているつもりなだけで、全然冷静な行動が取れていない。
本当に私はリリィになってしまったのか?
ゲームを始める時の記憶もないし、元々の私は何者だったか…
「うぐっ…」
ぐぅ…頭が痛い…何で自分のことが分からないの…
ゲームが好きとか、メガネ掛けてたとか、胸囲にコンプレックスがあったとか、色々わかるのに…名前は?年齢は?どんな仕事してたっけ?どんな部屋で?どんな端末でゲームしてたの?
「うぅ…あぁ…痛い…あだまがいだぃ……」
必死に頭を押さえる。
何で…どうして…
痛みに耐えられず、私は頭を押さえた状態でその場に倒れた。
〈カランカラン…〉
あ、私の相棒が…
必死に手を伸ばす…
そこで、私は意識を手放した。
今のステータスだよ。
【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉
【14歳】
【魔女見習いLv1】
魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、魔女の手袋、魔女の鞄、革の小袋、木の棍棒
◆魔女見習い
・能力ボーナス〈器用小上昇〉〈知力小上昇〉〈精神小上昇〉
・スキル〈初級毒生成〉〈初級薬生成〉〈初級攻撃魔法〉〈初級弱化魔法〉〈初級回復魔法〉〈初級強化魔法〉