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王家の紋所

ミルクを飲みながら窓の外を眺める。

この食堂は道側に面しているので、向かいの建物や歩く人たちが見える。


きっとここは中央通りなんだと思う、道路が石畳だし道幅がとっても広い。

せっかく広いのに今のところ馬車は全く通っていないのだけれど。


どうせ明日は街を散策する予定だ、街の規模感なんかも明日歩けばわかるだろう。

馬車が走ってないのも時間帯のせいかもしれないしね。


ミルクが半分くらいになった頃には、他のお客さん達も食堂に集まり始めた。

やっぱり多すぎでしょこれ…



「リリィさん!もういらしてたんですね、待たせてしまいましたか?」

クリスが当たり前のように私の前に座る。


他のみんなは大きいテーブルの方に固まって座っていた。

「部屋でする事も無かったので、早めに降りてきてコレを頂いてました。」

そう言いながらジョッキを持ち上げる。


「またミルクですか、よほどお好きなんですね。」

メニューがよくわからなかったからとは言うまい、色々成長するためにはミルクが良いんだよ。


「えぇ、まだまだ成長するので。」

そう言って、スンとしならがミルクを飲む。

クリスは笑いながらメニューの木板を開いた。


さっき男の子が私に構ってくれたのは、お客さんが少なかったからなのかな。

クリス達は勝手に席に着いたし、メニューも勝手に見ている。


そういえば、いつの間にか姿が見えなくなっていた。

今は女性のスタッフさん?が注文を聞いて回っている。


人が少ない時だけの練習みたいな感じなのかな。

コップひとつでフラフラしてたし、食事時はちゃんとしたスタッフさんが対応するんだろう。


お姉さんが来たのでクリスが何か頼んでいる。

どうせお金はクリスが出してくれるんだと思うけど、何が良いのか分からない。


「リリィさんは何にしますか?」

今ちょうど困っていたところだよ。

こういう時は丸投げしよう。


「お店のおすすめとか、クリスさんのおすすめは何かありますか?」

お姉さんとクリスが顔を見合わせる。

その後何やら話始めた、これで何かしらのお料理が出てくるはずだ。


「何のお料理を頼めばいいかわからなかったので助かりました。」

「こちらこそ、初めから2人分頼めばよかったですね。」

料理が分からなかったから丸投げしただけなのに、なんかごめんね。



私の部屋はこんな感じだったとか、男性陣の部屋はどうなのとか。

他愛ない話をして時間をつぶす。

やっぱり私の部屋はお風呂が付いていて良い部屋みたいだ。


2階の部屋は、ベッドしかない部屋らしい。個室なだけ偉い。

3階の部屋は、机や椅子はあるけどお風呂どころかトイレもないんだって。下宿かな?

クリスこそ良い部屋に泊まれよとも思うが、その辺は徹底してるのかもしれない。

なんせお忍びだしね。


物腰や言葉遣いで色々バレちゃう気がするけど、身分を秘密にしてる以外は自然体な感じだ。

新聞みたいなものが出回っているのに、よく王子バレしないなと思う。


しかも、私がお風呂に入っている間にみんなでどこかに出かけていたらしい。

どうせならそういうのにも私を連れてってほしかった。

まぁ、どうせ明日散策するつもりだからいいですけどねー。



続々と料理が出てくるので、出てくる端からパクパク食べる。

食レポ的なのはしないけど、全部ちゃんと美味しい。


料理がそろったあたりで、クリスが話しかけてきた。

「本当ならもう1日この街で過ごす予定だったのですが、そうもいかなくなりました。」

ほぉ、なんか状況が変わったらしい。


「明日はリリィさんとデートをしようと思っていたのですが、残念です。」

そんな予定は聞いていなかったので、逆に驚く。


もともと1人でも街を散策するつもりだったけど、クリスと一緒なら全部おごってもらえたのかもしれない。

そう考えると確かに残念な気もする…


「急いで帰らないといけないんですか?」

「えぇ、リリィさんと一緒に少し遠回りしたかったのですが…」

てっきりこの街までだと思っていたけど、クリス的には私を連れて行きたい場所があったのか。

それがきっと私を連れてきた理由なのだろう。


「我々は明日ここを発ちます、そこでリリィさんにお願いを聞いてもらえないでしょうか。」

これが本題か、色々良くしてもらったし簡単そうなら聞いてあげるのもやぶさかじゃない。


「はい、どんなお願いでしょう。」

「実はここから西にあるタビーレムという街に、魔女が住んで居るという噂があるんです。」

魔女!?一緒に魔女に会いに行くつもりだったって事!?


「もともと帰りにタビーレムを経由する予定だったのですが、モーリーの村でリリィさんに出会えたのは幸運でした。」

やっぱりそうか、クリスも瞳の色位なら見分けがつく。

それでもやっぱり私みたいに色々わかるわけじゃないから、私に確認させたかったんだ。


私がそのタビーレムって街の魔女とは思わないのかな。

たまたま遊びに来てた可能性って、あるよね?


「私がそのタビーレムの魔女とは思わないんですか?」

「タビーレムの魔女は赤い髪に黄色い瞳の、そのなんというか…妖艶な女性と聞いています。」

妖艶ね、なるほどなるほど…

私と違ってきっとセクシーなお姉さんなのだろう。


「リリィさんもとても魅力的ですよ。」

顔に出ていたかな、まぁジト目で見ている事を隠すつもりもない。

でもそういう安易なフォローは、余計に人を傷付けるんだよ。


「クリスさんは行けなくなったけど、私にタビーレムに行ってほしいって事ですね?」

「そういう事になります。」

まぁ大体わかった、でも私が一人で行ってどうするの?

そもそも魔女に何の用があるんだ、お母さんの手がかりとかなのかな?




「その人物はタビーレムで探検者として活動しているそうです。リリィさんにはその人物が本物の魔女か確認していただきたい。」

確認するだけ?私が確認したってどうしようもない気がする。


「急ぎじゃなければ、行ってもいいですけど…」

「それではこれを。」

そういって何かを手渡してくる。


【コイン( )】


コインらしい。

え、金銀銅の硬貨は【$】表示だったのにこれは何だ?

そもそも、コインってのは硬貨って意味だからあれらもコインなんじゃ…?

それより(かっこ)って何だよ!そんな名前のアイテムあり!?


「それは王家の紋章を描いたメダルになります。この先リリィさんが身分などを問われた時にそれを見せれば、国内であれば大体何とかなるでしょう。それを使う時はどうぞ私の名前を騙ってください。」

なん、だと…

やっぱりこういうの持ってたんじゃないか、村に居るときにこれ使っておけよ!!


てか今メダルって言ったよね、これアイテム名コインなんだけど?

何でこんなややこしいんだ、フォルムは金貨っぽいし貨幣価値的にも金貨相当っぽいのに。

まぁ本物の金貨もパメラさんにちょこっと見せてもらっただけだから、どんな絵だったかあんまり覚えてないけど…


改めて見るとこのメダルに描かれている意匠が凄そうなのはわかる、他の貨幣に比べて色々と細かい。

王家の紋章とか言ってるし、描かれてる絵もきっと違うのだろう。

これがお金としては使えないって事はわかった。


じゃあ、名前が【コイン】なのは私が金貨っぽいと思ったからって事?

名前がコインなのは納得できたとしても、結局この(かっこ)って何なんだって話である。


そんな事を考えていたらコインの名前が変わる。


【コイン(王家のメダル)】


結局コインのままだけど(かっこ)の中身が王家のメダルになっている。

何これ、アイテムの名前が変わったのは初めてだ。

どうして名前が変わったんだろう?


「あの、このメダルって正式名称は何て言うんですか?」

手の平に乗っている王家のメダルを眺めながらクリスに聞いてみる。

「正式名称ですか?質問の意図が良く分かりませんが、王家の紋章が描かれたメダル…ですかね。」


そういう事か。

きっとこのアイテムは名前が無いんだ。

王家の紋章が描かれていようが無かろうが、これはただの【コイン】ってアイテムなのだろう。


でも似たような【コイン】ってアイテムと区別するために私が勝手に名前を付けたんだ。

まぁコインなんてアイテムを見たのはこれがはじめてだけど、この先他のコインを手に入れる可能性もある。

間違えないように名前を付けられるなら便利でいいじゃないか。


それじゃあこのアイテムの名前はこうでしょ!


【コイン(王家の紋所)】


ピンチになったらこれを見せて、控え居ろうとか言ってみようかな。



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