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ダンジョン消滅

それからは、何事も無く過ごした。


エマちゃんに起こされ、ご飯を食べる。


ジェシカさんのお手伝いをしたり、診療所に顔を出したりした。


エマちゃんと遊ぶことも忘れない、火は危ないので水鉄砲などでキャッキャ言わせている。


トーマスさんのお店にも行った、ちょうどお昼くらいが暇らしい。

トーマスさんは昼寝をしていて、パメラさんが店番をしている。

パメラさんと話していると、後からトーマスさんがやってくるって流れだ。


トーマスさんが出てくるってことは、そろそろ探検者が帰ってくるので適当なところでお暇する。


そんな日々を送って居たらそれは起こった。




2、3日経ってゴードンさんが宿に戻って来る日だ。

お昼頃にトーマスさんのお店に向かうと、何やら各所が騒がしい。

お店に入るとこんな時間なのにお客さんがいた。


トーマスさんがカウンターに立って、探検者と話している。

パメラさんはその横でオロオロしている。

トーマスさんと目が合った。


「リリィそっちは邪魔だ、中に来てくれ。」

その声でパメラさんが私に気付き招いてくれる。

私はカウンターの中の丸椅子にちょこんと座った。



「何かあったんですか?」

トーマスさんは忙しそうなので、パメラさんに聞いてみる。


「なんかダンジョンが無くなったらしいよ。」

消滅したってことかな?きっと最後のボスが倒されたのだろう。


「消滅したんですか、良かったですね。」

「それがそうでもないんだよ。」


私も最初はそう思って居た、ダンジョンは資源の宝庫でアイテムがっぽり。

あのダンジョンは美味いぜー、みたいな事になってると思ってたのだ。


しかしこの世界の人たちは生活圏にモンスターが来ないように、積極的にダンジョン破壊を目指している。

それなのにダンジョンが消滅したことが良くないとは、どういう事だろう?



「最後のボスを誰が倒したかで揉めてるらしいんだよ…」

そんな事もあるのか、何故仲良くしないのだろう。


「倒した人ってそんなに大事なんですか?」

「リリィ何言ってるの!?ダンジョン破壊って言ったら、迷宮勲章が貰えるじゃない!」

勲章がもらえるらしい。


国に褒めてもらえるって事だよね?

でも、それだけならいらない気もする。

ダンジョンを破壊したのはジョンのパーティのはずだ。

ジョンはむしろ勲章あげる側の人だし、なんで拘ってるんだろ。



「他には何かもらえないんですか?」

「え?うーん…無い…のかな?でも勲章だよ!?」

他には無いらしい。

意外としょぼい。


「勲章ってそんなにいいものなんですか?」

「いっぱい集めたら叙爵じょしゃくされるんだよっ!」

あー、それは夢があるかもしれない。


ダンジョンのお宝が欲しいんじゃなくて、上流階級になりたくてみんな頑張ってたのか。

そりゃ自分がやったって嘘をつく人も出てくるわけだ。


「それはすごいですね。私も自分がやりましたとか言っちゃおうかな!」

「リリィが言っても誰も信じてくれないんじゃない?」

私じゃ誰も相手にしてくれないらしい。



じゃあジョンのパーティ以外にも、有力なパーティがいたって事?

それだと確かに話がややこしくなりそうだ。


「ダンジョンを破壊したって言ってるパーティは1つだけなんだけど、そのパーティがダンジョンに入っているのを見た人が居なくて怪しいって事になってるみたい。」

なるほど、それは確かに怪しい。


「なるほどー、厄介な事になりましたねー。」

「そうなんだよー。」

私はダンジョン事情に詳しくないが、今まではこういう時どうしたんだろ。


「こういう事って珍しいんですか?今までにもこんなことがあったとか、対応策があるとか。」

「私達もよくわからないんだー、だから今兄貴がそこの探検者さんと話し合ってるんだよ。」

それで忙しそうだったのか。



改めて見るとトーマスさんと話して居たのは、ダンジョンの前に突っ立ってた探検者さんだった。

「あ、ダンジョンの前に居た人だ!」

探検者さんがコチラを見る。


「おー、お嬢ちゃんじゃないか。あの日以来見ないから街に帰ったのかと思ったら、こんなところで何やってんだ?」

向こうも私のことを覚えて居たらしい。


「お前達知り合いだったのか?」

「数日前にダンジョンの前でお会いしました。」

「ほら、例の嬢ちゃんだよ…」

例のとは何のことだろう、注意されたことかな?

まぁいっか。

何故か2人は知り合いだったようだ、お店と探検者だしそんな事もあるか。



ジョンのパーティの誰かが、水戸のご老公よろしく紋章の入った何かをバーンと見せびらかせば解決するような気がするんだけどなぁ。


そんなことを考えていたせいか、お店の扉が開いた。

そこに居たのはエドワードだ。

慌ててカウンターの下に隠れる。


「すまぬ、リリィ嬢は来ていないだろうか?」

「「………」」

トーマスさんとパメラさんが私を見る。


こっち見ないで!バレちゃうでしょ!?

「お嬢ちゃんはリリィって言うのか、良い名前じゃねーか。」

空気読め、棒立ち探検者め…


「エドさん何の用ですか?」

仕方ないので顔を出す。

「おお、リリィ嬢。少し付き合っていただけないだろうか。」

面倒ごとの匂いがプンプンする、断ろう。


「申し訳ないのですが、今はちょっと忙しいので遠慮させて頂きます。」

「協力してくださるのではなかったのですか?」

お前が紋所をかざせば全部万事解決するんだよ!私を巻き込むな!


「ダンジョンは無くなったと聞きました、私にはもう関係ありません。」

「それはおかしいですね、我々の協力関係はまだ終わっていないのでは?」

ぐぬぬ…


変な奴らがダンジョンを破壊したとか言い出しちゃったから、それの収拾を手伝えって事か。

ほんとムカつくやつ。


「わかりました…」

力無く立ち上がり、カウンターの外に出る。

「では行きましょう。」

エドワードと共にお店から外に出た。




どこに行くのかと思ったら、酒場だった。

もっと他に人が集まれるところないの?


中に入ると人がたくさん居る。

この中に例のパーティも居るみたいだが、ごちゃごちゃしすぎていて良く分からない。

野次馬の探検者達が騒いでいるらしい。


「リリィさん、またお呼び出ししてしまってすみません。」

ジョンの元へ行くと、そう言われた。


「そう思うなら、呼ばないでいただきたかったです…」

私がそう言うとジョンが頬を掻く。


今日はパーティ全員で集まって居たらしい、他の人達には軽く頭を下げて挨拶を済ませた。

「何か面倒な事になってるって聞きましたけど、ダンジョンを消滅させたのはクリスさん達なんですよね?」

「えぇ、私たちが最後の部屋にたどり着いた事でダンジョンが消滅したのは間違い無いです。例の物もしっかりと持ち帰りました。」

別に疑ったわけではない、ただの確認だ。

てか例の物って何?


「例の物?」

「ご存じとは思いますが基本的に小規模ダンジョンは、最後の部屋に何かしらのアイテムが置いてあるんです。そして、そのアイテムを我々が持って帰りました。最後の部屋のアイテムを持ち出すことでダンジョンが崩壊するというのが定説になっています。」

もちろんとか言われても、ダンジョン事情なんて私がわかるわけないじゃん。

最後の部屋にあったアイテムが例の物って事?


「へぇ、それはおめでとうございます。それでは。」

そう言って私が離れようとすると、ジョンに慌てて止められる。

「いやいや、待ってください!」

どうして引き留めるの?いやいやって言いたいのは私の方だよ!


「確かに我々はダンジョンを破壊しましたが目立ちたくないんです。わざわざ時間をかけてダンジョンを攻略したのもそのためですし、なんとか目立つことなくこの問題を解決したいのです。どうか力を貸してください。」

ジョンがそう言ってキラキラした目で私を見て来る。


「ダンジョンが無くなった後こうなるかもしれないとは思わなかったんですか?クリスさんが名乗り出ないせいでこうなってるんですよ!?目立ちたくないならこのまま放っておけばいいじゃないですか。」

「返す言葉もありません、こうなる事を予期していなかった私が悪かったのも認めます。ですがダンジョンを攻略してもいないのに、ダンジョンを破壊したと触れ回る輩を許すわけにはいきません。」


えー…何この正義マン…

テーブルについている他のメンバーに目を向けたら、全員に目をそらされてしまった。

まぁそうか、この人殿下だもんねみんなも苦労してるんだね…


「はぁ…わかりました、それで例の嘘つきさん達というのは?」

「あちらです。」

ジョンが目線で教えてくれる。

明らかに場違いな装備を身に纏っている人達だ、やっぱりアレか。


ゴテゴテの装備で大きな斧を持った重戦士風の探検者

金属製の鎧を着て腰に剣を挿している剣士風の探検者

黒いローブを着て杖を持っている魔法使い風の探検者

祭服を着てメイスのような物を持っている神官風の探検者

ジョン達のように革の鎧を着た普通の探検者


何この人たち、全員探検者じゃん。


ジョン達はみんな革の鎧を着ているが、ちゃんとそれぞれ違うジョブでバランスの良いパーティ編成だ。

しかしこの人たちは見た目はそれっぽいが、全員探検者だった。

胡散臭すぎる。


そうか私は全員偽物ってわかるけど、他の人たちにはわからないんだ。

たしかに見た目的にはちゃんとしている。

こんな人たちがダンジョンを破壊したと言えば、怪しいけど可能性はあると思っちゃうのかもしれない。


「それで、私は何をすればいいんですか?」

「どうにか上手いこと解決してください。」

なんて雑な頼み方なんだ、扱いがひどい。


「頼み方が雑すぎると思うんですけど?」

「いえいえ、私とリリィさんの仲じゃないですか。」

いったいどんな仲だ。私の疑いは晴れて、それでおしまいのはずだったのに。




何故こうなったのか、それは昨日の出来事のせいだ…


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