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お酒考えた奴、爆発しろ!

「ん…」

目を覚ますと、また知らない天井だった。

でも、きっとあの診療所の別の部屋だろう。

さっきの部屋と内装が同じだ。


外を見ると日が落ち始めている。

昨日と一緒だな…

昨日と違うのはまだ頭が痛い事だろうか。


頭に手を当てるとたんこぶがある。

頭痛じゃなくて外傷だったらしい。

手をグーパーしてみるが体力は問題ない。

吐き気みたいのも無い。

自分に回復を使いたんこぶを治す。



耳を澄ますと隣からジェシカさんの声が聞こえた。

目を覚ました旦那さんと話しているのか、それともここの先生と話しているのか。

ゴードンさんの治療はちゃんと出来てるはずだから、それは安心だけど…


感情が高ぶると、どうも私は暴走するみたいだ。

リリィの事をバカに出来ない、自分だって初めての身体なのにゲームの知識だけで考えていた。

私も生まれたばかりの赤ちゃんなんだ。


人の名前が見えたりアイテムの名前がわかったりするからって、ここはゲームじゃない。

HPとかMPとかそんな考えはもうやめよう。


腕や脚を失うかもしれないし、急所を刺されたりしたら一発で死んでしまう。

疲れたら体が動かなくなって、精神がすり減れば頭やお腹が痛くなる。


ただ、私の知識に無い事があるってだけで現実なんだ。

私のためにもリリィのためにも、遊び感覚じゃなくてちゃんと生きるんだ。



さて、目も覚めたことだし起きた事を伝えに行くことにする。

ベッドから起きて扉へ向かうと、勝手に扉が開いた。


「リリィさん、目が覚めたんだね!」

ジェシカさんだ、まださん付けで呼んでいる。


「はい、先ほど目が覚めました。それと、さん付けはくすぐったいのでただのリリィでおねがいします。」

「そ、そうかい?じゃあそうさせてもらうよ。それでさっきは急に倒れたみたいだけど、まだ寝ていた方がいいんじゃないかい?」


昨日のように、またジェシカさんが運んでくれたのかな?

身体はもう平気だ、たんこぶがあったからきっと倒れた時ぶつけて気を失ったんだろう。


「はい、もう大丈夫です。お祈りの後立ち上がろうとした時に転んでしまって、頭を打ったせいで気を失っちゃったみたいです。」

「それならよかった。それと本当にありがとう、アイツが元気になったのはリリィのおかげだよ。」

ちゃんと元気になれたようだ、頑張った甲斐がある。


「お役に立てたみたいで良かったです。」

「もう日が暮れちまいそうだし、さっさと戻って飯にしよう。」

旦那さんは良いのだろうか?


「ああ、アイツはもうしばらくここで様子を見るとさ。」

たしかに〔衰弱〕アイコンを消せたとはいえ、ちゃんと治ったかどうかは私にはよくわからない。

ここにはお医者さんが居るだろうし、後は先生に任せよう。

ジェシカさんと2人宿屋へと戻る。




裏庭に行くと、洗濯物もエマちゃんも居なくなっていた。

片付けてくれたのかな?


母屋に入ってエマちゃんを探すと、私の部屋のベッドで寝ている。

布団を片付けるときに寝ちゃったのかもしれない。


「エマちゃん、起きて。」

「…ん、リリィ?」

このまま寝かせておいてあげたいところだが、ご飯を食べてからあらためて寝た方がいいだろう。


「うん、リリィだよ。ご飯の準備しようね。」

「はい…です。」

少し寝ぼけたままのエマちゃんと共に一階へ降りて、夕食の準備をお手伝いをする。

今日はジェシカさんに手伝うなって言われなかった、私に心を開いてくれたのだろうか?

ちょっと嬉しい。



昨日の様にお祈りポーズをすると、今日はエマちゃんも真似していた。

相変わらず可愛い。


「今日もご飯をご馳走になってしまってすみません。」

「何を言ってんだい、こっちの方こそ助けてもらっちまったよ。」

食後のお話タイムだ。


まずはエマちゃんの件を話さないとね。

「さっき今日はエマちゃんと一緒に寝ようって話をしたのですが、一緒に寝ても大丈夫でしょうか?」

「一緒!」

「リリィが構わないなら私から言うことはないよ。」

簡単に了承を得られた。

私の信用度は中々高そうだ。


「エマちゃん、やったね!」

「うん!」

2人でハイタッチする。


「昨日は誤解しちまって、本当に悪かったね…」

なんか謝罪されてしまった。

態度が少し悪かったって意味かな?

見ず知らずの人を泊めてくれたり、食事を用意するだけでも相当良い人なのに…


「どうして天使様がこんなところに居るのか分からないけど、ウチにいる間は好きにしておくれ。たいしたものは出せないが、居る間の食事はこっちで用意させてもらうよ。」

部屋だけじゃなく食事の用意までしてくれることになったらしい。


家出娘の誤解は解けたが、今度は天使ってのと誤解されてしまっている。

まぁ、これは実は見当がついている。

ステータスに助祭というジョブが増えていたからだ。


キリスト教は無いだろうけど、この世界にも何かしらの神を信じる宗教があるのかもしれない。

神を信じて回復などを使える人を天使と呼ぶんだろう。

神の使いってことなんだと思う。


強くなれば、司祭や司教になるのだろうか。

そもそも私は何教なのか、誰かに聞かれたらサルビア教とでも名乗っておこう。

お前の信じるお前を信じろ!ってね。



明日改めて掃除や洗濯をする事、ゴードンさんに会いに行く事などを話し会話は終了した。

聞いたところによると旦那さんが倒れたことで、宿をお休みしてただけだったらしい。

回復の兆しが見えたので、再開準備も兼ねて私の部屋だけじゃなく全てやってしまおうという事になったのだ。


そういえば、助祭のジョブは【助祭】にしておくことにした。

この先誰かに身分を聞かれた時、助祭と名乗ればいいと気づいたからだ。


【かっこ】を2つ作る事は出来なかったけど、魔女見習いと他のジョブを入れ替える事は出来たのだ。

誰かに私の職業を見られたとしても、こうしておけば安心だろう。


これで、この先他のジョブのふりをすることも出来る。

自由に変える事が出来るなら状況に応じていろんなスキルを使える。

魔女を隠すことも出来るし、一石三鳥だ。


自分は確かに他の人とは違うところが多いかもしれないけど、特別な存在じゃない。

私のように人の名前や職業が見えたり、職業を変える事の出来るスキルが存在するかもしれない。

多少イメージ力で変なところは多いけど、私の出来る事はこの世界で出来る事のはずなのだから。



今日はエマちゃんを部屋へお招きしている。

何も無い部屋だし特にする事もない、服を脱いで2人でベッドに潜る。


「お布団運んでくれてありがとね。」

「リリィも…お父さん…ありがと。」

昨日より少しふんわりした布団は気持ちが良い。


「どうして一緒に寝たいって思ったの?」

顔を見ながら尋ねると、エマちゃんは少しモジモジしている。


最初はお父さんの治療の為に、天使様を逃さない意図があるのかと思っていた。

でもそれが理由だとしたらもう必要ないはずだ、それでも一緒に寝たいのはなんでだろ?

催促せずにエマちゃんが口を開くのを待つ。

「お友達…なります。」


お友達になる?あぁ、友達になりたいってことか。

一緒に寝たらお友達になれると思っているのかな?


お友達ならパジャマパーティとかするかもしれないが、順番が逆だ。

もしかしてエマちゃんは友達がいないのかも。


確かにこの村ではあまり子供を見かけていない。

思い出してみたが女の子はエマちゃんしか見ていない。

そうか女の子の友達が欲しかったのか。

きっと誰かが友達の家に泊まった話でも聞いたのだろう。


「それじゃあ今から私たちはお友達だよ。」

「うん!」

良い笑顔だ、つい抱きしめてしまった。


嫌がらずにスリスリしてくる。

汗臭かったりしないかな?

着替えもしてないしシャワーも浴びていないが、エマちゃんよりは今の私の方がまだ清潔だと思う…多分。


しばらく抱きしめたまま話をしていると、いつの間にかエマちゃんが静かになった。

「すぅ…」

静かに寝息を立てている、寝てしまったようだ。


エマちゃんの体温が心地よく私もこのまま眠ってしまいそうになるが、眠気を堪えて行動を開始する。

エマちゃんが起きないように腕を引き抜き、ベッドから抜け出す。


月明かりで着替えを済ませこっそりと宿を出た。


エドワードに会いに行かないといけない。




ジョンの仲間の探検者に、今夜会いに来いと脅されたので仕方なく向かっている。

場所を指定されなかったって事は、指定する必要がなかったって事だ。

暗い夜道を村の裏口側へ歩いて行く。


ほとんどの建物の灯りが消えている中、ひとつだけ明るい建物がある。

酒場だ。

昼間から変だとは思っていた。

他の建物はテントに毛が生えたような建物だったのに、この酒場は屋根も壁もしっかりした作られていた。


トーマスさんのお店もしっかりと作られていた。

彼らは行政からのお仕事らしいし、もしかしたら建物も街で用意した可能性もある。

じゃあこの酒場は何なんだ?


ダンジョンが出来たからって、わざわざ村で酒場を開こうと思う人が居るだろうか?

そうなるとこれも街で用意したものなのだろう。

私には理解できないけれど、探検者の娯楽施設的な意味合いがあるのかもしれない。



酒場の中に入り目的の人物を見つけるべく、店内を見回してみる。

1人の男性と目が合った、ジョンだ。

隣には探検者も居る。

そのテーブルに向かおうと歩き出したところで、近くの席にいた酔っ払いに絡まれた。


「おぅ、ねーちゃん。俺らと一緒に飲まねーか?」

「用事があるので、遠慮します。」

酔っ払いに関わりたく無いし、私はお酒が好きじゃない。

それに今は本当に用事がある。


「おいおい、つれねーなー。」

更に酔っ払いが話しかけてくる。

無視して横を通ろうとしたら腕を掴まれた。


「ちょっとくらい良いじゃねーか。」

これだから酔っ払いは嫌いだ、イライラする。

酔っ払いの目の前に種火の魔法を最大火力で放つ。

驚いたようで、私から手を離した。


「何しやがる!」

しかし今度は怒ってしまったようだ。


自分から手を出してきたくせに、自分がやられると怒るなんて酒飲みはバカばかりだ。

続けて水鉄砲を顔に数発お見舞いする。


「頭は冷えましたか?」

断ったのに勝手に私の手を掴んだのはお前だ、怒っているのは私の方だ。

「調子に乗ってんじゃねーぞっ!」

酔っ払いが立ち上がり武器を構えた。


その時、後ろから腕が伸びてきて酔っ払いを羽交締めにする。

「落ち着け、お前少し飲みすぎなんじゃないか?」

ジョンパーティの騎士だ。


「うるせー、誰だオメェは!」

酔っ払いはギャーギャー言っているが、あれじゃ何も出来ないだろう。

騎士さんに軽く会釈してジョンのテーブルに向かう。



「お待たせしてしまいましたか?」

ジョンにではなく、探検者に話しかける。

「えぇ、来てくれないのかと思っていた所です。」

否定しろよ、ムカつくな。


「夜にこんな場所に呼び出されたので、ああいう輩から助けていただけると思ったのに…助けてくれないどころか、嫌味まで仰るんですね…」

顔を手で覆い、そんなことを言ってみる。

嘘泣きだ。


「お嬢さん申し訳ない。コイツはこういうやつなんです、許していただけませんか。」

ジョンが話しかけてくる。

他人の振りはしないらしい、まぁ同じテーブルだしね。


「ジョンさん、昨日はありがとうございました。この方とお知り合いだったんですね。」

私がそう言うと探検者が驚いている。

私たちに面識があったことか、それともジョンと呼んだことか。


「まぁ色々と話さなければならないことがあるので、どうぞお座りください。」

ジョンにそう促され、席に着いた。



【リリィ・S・ホワイト】〈人族〉

【14歳】

【助Lv1】[魔女見Lv2][探Lv2][戦Lv2][拳Lv1][魔Lv2][商Lv1][アLv1]

 魔女の外套、魔女の服、魔女の靴、革の小袋


◆魔女見習い

・能力〈器用C〉〈知力C〉〈精神C〉

・スキル〈毒生成〉〈薬生成〉〈攻撃魔〉〈弱化魔〉〈回復魔〉〈強化魔〉


◆探検者

・能力〈筋力D〉〈体力D〉〈素早さD〉

・スキル〈探検地図〉〈探検移動〉〈探検脱出〉〈探検箱〉


◆戦士

・能力〈筋力E〉〈体力E〉〈素早さE〉

・スキル〈強撃〉〈耐える〉〈走る〉


◆拳闘士

・能力〈筋力D〉〈体力D〉〈素早さD〉

・スキル〈強撃〉〈耐える〉〈走る〉


◆魔法使い

・能力〈知力D〉〈知力E〉

・スキル〈攻撃魔〉〈家政魔〉


◆助祭

・能力〈精神D〉〈精神E〉

・スキル〈回復魔〉〈家政魔〉


◆商人

・能力〈筋力E〉〈体力E〉〈素早さE〉〈器用E〉〈知力E〉〈精神E〉

・スキル〈商人の箱〉


◆アイテム商人

・能力〈筋力E〉〈体力D〉〈素早さE〉〈器用E〉〈知力E〉〈精神E〉

・スキル〈商人の箱〉〈アイテム鑑定〉



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