心の宝石は、どこへ行ったのか
…私の心の宝石箱。
それは、昔は宝石が詰まっていた、大切な大切な、宝物。
宝石は、私を示していた。
けれども今は、無い。
自分はどうして生きているのか、何を目的としているのか。
それが、時々わからなくなる。
小さいときは、夢も希望もあっただろう。
世のなかが分からないことばかりで、様々な可能性に満ち溢れていて、ドキドキワクワクするような日々がいっぱいだった。
なりたいものもあって、目指したいものもあって、いつか叶えたいものがある…そんなキラキラした思いが、心の宝箱の中に、宝石のように詰まっていた…はずだった。
でも、今はどうだろうか。
その宝箱に入っていたはずの、大切な宝石はいつの間にか、すべて消えていないだろうか。
世の中のことを知り、一つ、また一つと見えていなかった現実によって、宝石がひび割れ、砕け散って、塵となって…いつの間にか、失われている。
気が付いた時には、あれほど美しかった光景が、いつの間にか白黒の…単調な、何もないモノトーンのような世界になっている。
いや、それならまだしも、濁ったような灰色の…何とも言えない今は、何になっているのだろうか。
テレビやニュース、SNS、ネット…様々な情報の海によって多くのモノを得た代わりに、大事な何かを失っているような気がする。
なりたかったものにはなれず、欲しかったものは得ることが出来ず…本当に、何を求めていたのか、その道すらわからない。
ああ、私は何をしたかったのだろうか。
この人生の中で、何を求めていたのだろうか。
ふと、そう思う時がある。
こんな世界が嫌だ。
私はこうではなく、目指していたものになりたかった、あれが欲しかった、求めるものを得たかった…それは、何だったのだろうか。
求めていたものが失われて、今、求めるものは何があるのだろうか?
富?名声?…そういうものではない。
自由?希望…これも、違うのかもしれない。
何を、どうして、どうやって…得たかったものすら、わからない。
ならば、そんなわからない日々なんて捨ててしまえば…いっそ楽になればいいじゃないかとささやく心の声もあるだろう。
…けれどもなぜ、捨てるということもできないのか。
生きていても意味がない様な、毎日同じことの繰り返しがあるような…悪いことばかりしか起きない、この世界に何か価値があるのだろうか。
いや、価値が無いに等しいとしても…どうして、その生を捨て去ることが出来ないのか。
友人?家族?そういったものが心を離さないのか。
違う、そうじゃない。
…何が離れないのか…生きる、欲望なのだろうか。
それも、また異なるだろう。その欲望がないはずなのに、どうして踏み出す気もないのか。
たった一歩、それど一歩、歩むことすらできない。
そのせいで、この日々から解放されないのに、何故かがんじがらめの鎖のように…鎖ではないか。
これは、たった一つの普遍的な欲望なのかもしれない。
目的も何も、わからないけれども…どうしてか、「生きる」その欲望を捨てることが出来ない。
だからこそ、いざそれを決めたとしても、ずるずると引きずって…結局は、醜くも生にしがみつき、解放されることはない。
なぜだろう、どうして離さないのだろう。
私の心の宝石箱はもう、中身どころか箱自体が失われているというのに、失われないものがある。
それが何故か、この日々を続けて…一体、何をさせたいのか。
生きている意味が分からない。
何のために生まれて、どうして生きるのかの目的が見えない。
私は何を求め、生きているのか。
わからない。いつか、回答が見えるのかもしれないけど、それまではまだ、生き続ける。
心のどこかで、心の底からこの世界から離れたいと叫んでいたとしても、まだ捨てる時ではない。
今はまだできなくとも、将来、本当に失い、消えることが出来るかもしれない。
でも…結局はその日まで、壊れたロボットのように、私は今日も失ったはずの宝石を探し求めていくのだろうか…
…昔は輝いていた世界も、今はどうして薄汚れたのか。
見えなくなってきたものを考えて、書いてしまったようなものです。
うん、別に鬱とかそうじゃないんだけど…何でだろうね。何故か、考えるんだよね…