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タクシーは簡単に乗れた。

「ちゃんとまっすぐ走ってくださいよ」

オネダリ光線をバリバリ飛ばすと、タクシーの運転手はイチコロだった。

「分かったよ。じゃあ、しっかりとつかまっとけよ」

そう言われた瞬間、意識ははるかかなたに飛んで行った。


「ほら、いつまで眠ってるつもりだい。起きなって…」

ペチペチとほほをたたく感覚。それで私は目が覚めた。

「ん…あれ、もう着いたの…?」

目の前には、二人の顔があった。

タクシーはすでに姿がなく、私は博物館の前のベンチで横たわっていた。

「荷物も全部おろしておいたよ。もちろん、これも」

直斗が見せたのは、あのフロッピーだった。

他の人たちには渡されなかったのに、なぜ、私に相続させたのかは、この中にその秘密があると思っている。


荷物が何も取られていないのを簡単に確認すると、私たちは静まり返った博物館の中に入った。

総保管数が宇宙1を誇る、超巨大総合博物館は、古今東西の良くわからない代物が数多く眠っているというもっぱらの噂で、古くは前暦紀元前1500年のものもあるという話である。

実際は、館員の人しか知らない。


自動ドアが開くと、涼しい風が顔をなでる。

受付はその目の前にあった。

「すいません。電話した糸魚川苗場(いといがわなえば)です」

受付の人に私の名前を言った瞬間、顔が変わった。

「分かりました。しばらくお待ちください」

生身の女性が応対している。

どこかに電話をかけているすぐ横で、私たちは聞きたいことをまとめていた。

まとめるといっても、すぐに終わるので、単なる雑談にすぎない。

「どんなのが中に入ってるんだろうね」

「さあ、分からないけど、かなり昔から伝えられてきたらしいから…」

「フロッピーは20世紀のものだからね。その頃の読み取り装置があればいいけど……」

そんな話をしていると、コツコツとつえをつきながら歩いてくる音がした。

「糸魚川さんですね」

女性だった。

「シルクホース・コールバル博士ですね」

私は博士に軽く会釈をしてから握手をしようと手を伸ばした。

「はじめまして。糸魚川苗場です」

「こちらこそ」

博士も笑みを浮かべながら私と握手を交わした。

「そちらの人たちは?」

「友人の…」

「井神直斗です」「哉慨匡です」

ほとんど同時に言った。

だが、博士にはしっかり聞きとれていたらしい。

「井神さん、哉慨さん。ようこそいらっしゃいました。私がこの博物館の近代コンピューター担当をしているシルクホース・コールバル博士です。どうぞよろしくお願いします」

「あ、いえ。こちらこそよろしくお願いします」

深々と互いにお辞儀をしあってから、すぐに本題に入った。

「では、私の研究室に行きながらお話を聞かせていただきます」

博士は職員専用と書かれたエレベーターに乗り込んだ。

私たちはその博士についていった。


エレベーターの中に入ると、さっそく私はフロッピーを見せた。

「これが、電話でお話ししたフロッピーディスクです」

「お借りしていいですか」

「どうぞ」

私が渡すと、いつの間にかしていた白い手袋で博士は受け取った。

「あなたから電話をいただいた直後に探してみたんです。フロッピーディスクを読み込む機会を、フロッピーディスクドライブというのですが、1970年代の最初期のものが残っていたんです。動くかどうかは分かりませんが最善を尽くしてみます」

「お願いします」

それから、私が受け取った時の話をした。

「……遺言で」

「そうです。なぜ私に渡したかは、誰にもわからないとのことです」

博士は何かを考えているようだったが、教えてくれることはなかった。

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