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エピローグ
惑星国家連合は、Teroを拘束しようとしに来たが、博士やお父さんとお母さん、それにニノマエさんのおかげでどうにか逮捕されることはなかった。
ただ、これからは一切の武力衝突を行わないことを約させられた。
それから、幾年が過ぎた。
私は親になっていた。
人数が激減したこの惑星において、いまだに人が都市を形成している場所である私たちが住んでいるところは、この惑星国家の新首都にも選ばれていた。
「でもさ、未婚者同士が同じ家の下で暮らしているのは、あまり良くないと思うんだ」
直斗が家で言う。
「どうしてよ。そんな人たち、最近は珍しくないでしょ」
「それでもさ、どちらかの子供かっていうのがわからない時だってあるわけだし……」
ただ、そのあと何か小声でぼそぼそと言っている言葉は聞き取れなかった。
「ん、そうかもしれないけども…」
私は料理の味見をしながら、私は答える。
「その人たちが幸せであるならば、どんな住み方をしていてもいいんじゃないの」
「さあ、それとひとつ問題。Teroはどうするんだ」
今は博士の研究所にいるTeroは、世界のことに関して考えているようだ。
本人が使わない範囲で行われている研究もある。
それぞれの惑星を適正化するためのもの。
人間が増え続けた場合、一つの惑星での生存可能人数、居住可能人数など。
量子コンピューターを新しく作るというのも、その課題の一つであった。
だが、他にもいろいろと研究をしているようだ。
「私が色々な管轄をしているから、私の血を継いだ女の子たちがTeroについて全権を有することになるわ」
「俺らの子供も、か」
匡は、天井を見上げながらつぶやいた。
Teroの戦争がおわり、復興が一段落したこの家では、私の両親とともに住んでいる。
直斗と匡の両親も、同居している。
彼らの家が粉みじんに粉砕されたからだ。
「どうなるかわからないけど、これからを彼女は生きていくんだよ」
「さてさて、どうなることやら」
そう言いつつも、Teroがどうなるかは、薄々感づいていた。
惑星国家連合の庇護のもと、私のようなマスターが全権を有しているTeroは、国側から厳しい監視の下で活動を続けている。
それはこれからも変わらないだろう。
それに、彼女のもともとの活動場所であった"地球"の復活もささやかれている。
他にも彼女の量子コンピューターを余すことなく使い続けている。
そのことによる負荷は、相当のものであろう。
だが、彼女は生きている。
ロボットが生きているというのも不思議だけど、それでも動いている。生きているとしか言えない状況で動いている。
「これからなんて、誰にもわからないよ」
私は料理を仕上げて、皿に盛りながら言った。
「でも、こうやって過ごすことができることが幸せだっていうことは、分かるね」
Teroや、直斗や匡たち、お父さんとお母さん、博士も含めて、Teroを除いていずれ死ぬだろう。
長寿命者もいくらかいるが、お金がかなりかかるらしい。
だから、私たちはしないことに決めた。
一人がマスターの権限をずっと持っているのもいいけど、いずれはその手から離れるだろうし。
こうやって色々な人たちに命のリレーをしながら、権利も渡っていくのも悪くないと思っている、今日この頃だった。